2017年、グローバル企業の中国事業は、消費者のトレンドにどのような変化をもたらしたのだろうか。また、中国市場はどれほどの重要性をもち、これからも金城湯池であり続けるのか。

これらの疑問に答える分析記事をニュースサイト「今日頭条」が載せた。有名ブランドを、飲食、スポーツ、商業、ファッション、化粧品の5カテゴリーから、それぞれ1~3社取り上げている。その中からさらに9ブランドに絞り込んで考察してみる。(1元=0.15ドル)

飲食ブランド

中国, グローバル企業, ユニクロ
(画像=humphery/Shutterstock.com)

スターバックス(星巴克)

スターバックスの最重要市場は、北米とアジア・太平洋(亜太)地区である。そして亜太地区における中国の比重は大きい。2017年9月期(2016年10月~2017年9月)の亜太地区売上は32億ドル、前年比▲10%増だった。この伸長率は、全社平均の2倍である。利益は7億6500万ドル、▲21%だった。

2017年9月期の新規開店(直営)は285店、フランチャイジーは310店である。これにより期末店舗数は、直営1540店、フランチャイジーは1396店となった。

スターバックスは中国市場に大きな期待をかけている。2017年、統一集団(台湾系)の華東地区経営権を13億ドルで買収した。また本年5月には、今後5年間で3000店をオープンすると表明した。平均15時間に1店舗開店させる大型の計画である。

コカ・コーラ(可口可楽)

コカ・コーラにとって中国は、米国、メキシコに次ぐ第三の市場である。全社の売上に占める亜太地区のシェアは23%、そのうち中国と韓国で43%を占める。中韓の世界シェアは9.9%である。出荷カートンベースでは、前年比▲2%増加している。

北米や日本事業はマイナスだ。全世界の売上は5年連続でダウンしている。中国事業は、はっきり順調な方である。しかし2017年、ボトリング事業を外部に売却し、軽資産化を図った。その成果のためか、利益率は上昇に転じている。

スポーツブランド

ナイキ(耐克)

2018年5月期(2017年6月ー2018年5月)の中国売上は、51億3400万ドル、前年比▲21%増だった。利益は18億200万ドル、▲20%、粗利率43.8%だった。

中国の売上は、シューズ、ウエア、運動器具に3分される。シューズ34億9600万元(約5億2400万ドル、前年比▲16%増)、ウエア15億800万元(約2億2600万ドル、前年比▲23%増)、器具は1億2900万元(約1900万ドル、前年比△1.0%減)だった。しかし今年に入り、エアジョーダンの売上がダウンするなど、気がかりもある。

また中国はナイキの製造大国でもある。2017年5月期は、シューズの27%、ウエアの26%が中国製造だった。

アディダス(阿迪達斯)

アディダスもナイキに劣らず好調だった。中国のシェアは18%、欧州29%、北米21%につぐ、世界3位の市場である。

2017年の中国売上は、37億9000万ユーロ(前年比▲26%増、為替レートの影響を除く)だった。利益は21億6200万ユーロ(前年比▲25%)だった。粗利率は57%と高い。

アディダスもやはり中国製造が多い。シューズの19%、ウエアの23%、運動器具の40%を作っている。

商業ブランド

ウォルマート(沃爾瑪)

2018年1月現在、ウォルマート中国は424店舗、総売場面積684万平米を展開している。米国本土以外の総店舗数は6360、中国は、メキシコ、ブラジル、英国などに次ぐ5位である。売場面積の増加は▲0.9%の増加と頭打ち。

2018年1月期(2017年2月ー2018年1月)米国本土ではネット通販に注力し、売上115億ドル、シェアは2.3%となった。中国では京東(JD)を戦略パートナーとして、ネット通販を展開している。「京東到家」という物流システムを140店舗に導入した。指定範囲内なら1時間で宅配するサービスである。

カルフール(家楽福)

カルフール中国は苦戦している。2017年の売上は、40億5000万ユーロ、前年比△5.6%の下落だった。2018年第一四半期は、△6.6%とさらに下落幅が拡大した。2017年末の店舗数は259店で、前年より5店増だった。売場面積では、3万2000平米減少している。しかし依然として、アジア地区の半分以上を占めている。

同社は中国事業の継続を図るため、外部支援を受け入れた。IT巨頭のテンセントと、同社系のスーパー・永輝超市が出資を決めた。テンセントはIT資源を提供し、永輝は生鮮売場の運営を引き受ける。

ファッションと化粧品ブランド

ユニクロ(優衣庫)

2017年8月期(2016年9月ー2017年8月)ユニクロ中国市場の売上は、216億元(約32億ドル、前年比▲4%増)だった。利益は30億元(約4.5億ドル、前年比▲37%増)と大きく伸びた。そして2018年8月期、国際市場での売上は、初めて日本本土を上回る。柳井CEOによれば、中国市場と東南アジア市場のもつポテンシャルは、日本の10倍~20倍という。

ユニクロ中国の計画では、5年以内に売上600億元(約90億ドル)、利益120億元(約18億ドル)を目指す。2017年8月期の段階で、中国店舗は684店に達し、新疆ウイグル自治区、チベット自治区以外、すべての省に出店している。2121年8月月期には1000店舗体制とする。

H&M

2017年11月期(2016年12月ー2017年11月)H&M中国市場の売上は、81億3000万元(約1億2200万円、前年比▲1.7%増)だった。これは2016年11月の▲3%に比べ、半減している。2017年11月の中国店舗数は506店、そのうち新店は62店である。前年は91店だった。出店ペースもブレーキがかかっている。中国のシェアは4.8%にすぎないが、それでも5大市場の1つという位置付けだ。

H&Mは2018年春、アリババのB2C通販サイト天猫(T-Mall)に、旗艦店を出店した。ユニクロの天猫による売上は、すでに外国企業トップクラスである。通販対応は大きく遅れた。

ロレアル(欧菜雅)

2017年、ロレアルの亜太地区売上は、61億5200万ユーロ(前年比▲12.3%増)だった。シェアは23.6%に上る。ロレアル中国CEOによると、売上とシェアをダブルで増加させたのは、亜太地区だけである。その亜太地区躍進の原動力となったのは、中国の消費者である。

販売チャンネル別では、ネット通販が3分の1を占めている。中国だけでネット通販売上全体の25%を占めている。

勝負はイノベーション

9社中3社(コカ・コーラ、カルフール、H&M)は苦戦していた。カルフールは、中国地区だけが苦しいという特異な状況だ。そのため、中国企業に支援を求めたのは、自然な成り行きだろう。コカ・コーラとH&Mは、世界的な競争力に翳りが見える。そして中国消費者は、今や外国ブランドというだけでは踊らない。

その他6社にとっては、中国市場は相変わらず重要だ。中でもスターバックスとユニクロは“過激”とも思える計画だ。今後のカギは、新しいチャンネルにある。

カルフールは、ウォルマートに比べ、ネットスーパーで出遅れた。H&Mは、ユニクロに比べ、ネット通販で出遅れた。小さな遅れが取り返しのつかない事態を招く。

スターバックスはアリババと提携し、傘下のフードデリバリーサービス「飢了蘑」を通じてコーヒーの宅配に乗り出す。ユニクロも新業態店や、アプリの機能において、日本市場を上回るレベルの実験を行っている。すべては、イノベーションが続くかどうかにかかっている。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)