相続税対策と聞くと、「富裕層のためにあるもので、とくに自分には関係ない」と考えている人も多いのではないでしょうか。そもそも相続税とは、現金や不動産、証券などの資産を一定額以上保有している人が、支払わなければならない税金です。そうした税金を、できるだけ納めなくて済むように、資産状況を工夫することが相続税対策となります。

その点、「そもそも資産がなければ相続税対策をする必要はない」と考えるのも無理はありません。ただ、富裕層でなくても、相続税対策をしていなかったばかりに、あとで相続税の支払いに苦しむこととなっている人は後を絶ちません。なぜでしょうか。その理由は、「資産を保有している」と判断される基準に、多くの人が該当する可能性があるためです。

なぜ、多額の財産がなくても相続税対策するべきなのか?

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(画像=ideldesign / Shutterstock.com)

資産を保有しているとは、具体的に何を意味しているのでしょうか。実際の数字で確認してみましょう。重要なのは、「相続税の基礎控除」「二次相続への対応」そして「相続税の納税時期やその方法について」です。それぞれの内容を具体的に見ていきましょう。

・相続税の基礎控除
そもそも相続税には「基礎控除分」が設定されています。基礎控除とは、あらかじめ遺産総額から差し引くことができる控除分のことです。基礎控除の計算は簡単で、「3,000万+600万×相続人の数」で求めることができます。つまり、最低でも3,600万円は基礎控除として控除されるため、3,600万円以下の遺産しかない場合には、相続税がかからないこととなります。

・基礎控除と二次相続
3,600万円と聞くと「うちにはそんな資産はないから大丈夫」と思う人もいるかもしれません。しかし、果たして本当にそうでしょうか。たとえば、実家をはじめとする不動産。もし、所有者である父親が亡くなった場合、不動産を相続することになれば、3,600万円を超える資産を相続するかもしれません。そうなると、相続税がかかることとなります。

また、父親が亡くなった後、母親も亡くなった場合(二次相続)はどうでしょうか。相続税における配偶者控除は非常に大きく、一次相続ではそれほど相続税がかからなかったとしても、二次相続になると配偶者控除を受けることはできません。つまり、父親と母親、両方の資産を合わせた額を相続することとなるのです。その結果、高額な相続税が課せられるケースも少なくありません。

・相続税は10ヵ月以内・現金が基本
さらに、相続税の納税は10ヵ月以内に現金で行うのが基本です。相続した資産が不動産であった場合、すぐに売却できればまだしも、短時間で売れないことも想定されます。そのような状況で相続税を支払えない場合には、相続した不動産を安値で売却しなければならないこととなり、結果的に大きな損失につながり兼ねません。

このように、相続税に関する何らかの対応をしていなかったために、あとで困るケースは少なくありません。できることなら、どのような資産があるのかをあらかじめ明確にしておき、できる対策を進めていくことが求められます。少なくとも、資産の状況を明らかにして「見える化」しておくことは、どの家庭でも最低限やっておくべきことではないでしょうか。

相続税対策はできるところから始めよう

資産がないからと油断していた家庭においても、不動産や証券など、あとからそれと気づく場合も少なくありません。そのようなときに、後悔しても後の祭りです。相続税は多額の資産がある富裕層だけのものと考えず、誰にでも可能性があると認識し、できるだけ早期に対策を進めておきましょう。

その際には、財産目録を作成するなど、相続時に対応しやすい体制を整えておくのがおすすめです。相続時にはやるべきことがたくさんあります。混乱しないよう、何をやるべきなのかについて、事前にまとめてみてはいかがでしょうか。(提供:相続MEMO


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