相続は、いつ発生するのかわかりません。自分に近しい人が亡くなったとき、親族の方が亡くなったとき、さらには会っていなかった兄弟姉妹が亡くなったときなどにも、相続人となる可能性があります。そのとき、果たして正しい行動がとれるでしょうか。とくに、期限が定められている手続きを正しく行わないと、後で困ることにもなり兼ねません。
しかも、多くの人にとって相続は初めての経験となります。そのため、必要な手続きややるべきことに追われてしまうケースが大半です。そうならないよう、できることなら、実際の相続事案が発生する前に、必要な手続きを押さえておいた方が無難です。とくに、事前に押さえておきたい相続時の注意点について、代表的なものを確認していきましょう。
事前に押さえておきたい相続時の注意点
事前に押さえておきたい注意点として、今回は大きく「期限のある遺産相続の手続き」「忘れがちな遺族年金の申請」そして「葬儀費用の取り扱い」を挙げます。これらについて事前に押さえておけば、実際の相続時でも適切に対応することができます。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
・期限が設定されている遺産相続の手続きに注意
遺産相続の手続きには、それぞれ期限が設定されています。たとえば、相続の方法で、相続放棄や限定承認を選択する場合には、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日から3ヵ月以内に手続きしなければなりません。遺産の取り扱いを決定する重要な判断であるにも関わらず、もともと期限が短いため注意しておきましょう。
その他にも、遺産相続に関する所得税の手続き(準確定申告)は4ヵ月以内、相続税の申告は10ヵ月以内、さらに遺留分減殺請求は1年以内など、それぞれ期限が設けられています。やるべきことは多いものの、それぞれに期限が設定されていることを見越して、順番に対応していきましょう。やるべきことを表などにまとめておけば、抜けや漏れを防止できます。
・忘れがちな遺族年金の申請
とくに忘れがちなのが「遺族年金の申請」です。遺族年金とは、被保険者が死亡した際、残された遺族に対して支給される年金のことです。国民年金の加入者が対象の「遺族年金基金」と厚生年金の加入者が対象の「遺族厚生年金」があります。ただこの遺族年金は、きちんと請求しなければ受け取ることができません。そのため、手続きを忘れないようにしましょう。
請求先は、死亡した人の住所地を管轄する市町村役場の年金窓口が基本となります。もちろん、全国の年金事務所でも問題ありません。戸籍謄本や住民票、所得証明書、死亡届(まだ提出していない場合)などとともに、窓口に提出しましょう。ただし、遺族年金の時効は5年とされているため、請求し忘れることがないように気をつけてください。
・葬儀費用の取り扱いとは
また葬儀費用についても注意が必要です。たとえば、相続放棄をしたい場合でも、相続財産を何らかの形で消費してしまうと、単純承認したとみなされてしまいます。そのため、相続財産から葬儀費用を捻出することについて、「それをしてしまうと相続放棄できなくなる」と誤解されているケースも少なくありません。
しかし、実際には葬儀を被相続人の財産で執り行ったとしても、相続人等の間で相談して契約を締結している場合などは、相続財産の処分にはあたらないとの解釈が示されています(名古屋高裁平成24年3月29日判決)。
知っているかどうかで変わる相続の実情
このように相続には、見落とされがちなポイントがたくさんあります。その点、抜けや漏れが多くなり、後から気づくことも少なくありません。そのような事態にならないよう、相続についての全体像、とくに手続き関連のことについては、事前に情報を得ておくようにしましょう。知っているかどうかで、相続への対応は大きく変わります。(提供:相続MEMO)
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