「富裕層」とはよく使われる言葉ですが、実際にいくら以上の資産があれば富裕層と言えるのでしょうか。実は「富裕層」についての厳密な定義は意外と知られていません。
いくら以上の資産があれば富裕層なのか
富裕層の定義や富裕層の多くが行っていることについて、シンクタンクとして有名な野村総合研究所が富裕層に関する調査報告を公表しています。このデータを基に、今回は様々な情報を紹介していきます。
野村総合研究所では、世帯の純金融資産保有額に応じて富裕層などの定義を次のようにと定めています。超富裕層は世帯の純金融資産保有額5億円以上、富裕層は同1億円以上5億円未満、準富裕層は同5,000万円以上1億円未満、アッパーマス層は同3,000万円以上5,000万円未満、マス層は同3,000万円未満。
同研究所の定義によると富裕層は世帯の金融資産が1億円以上5億円未満となっていることから、1億円以上の金融資産を保有しているかどうかが富裕層かどうかの分かれ目となります。
一般的にも富裕層を表すものとして「億万長者」という言葉があるように、1億円以上の資産を保有しているかどうかが世間一般のイメージとしても、富裕層の言葉の定義においても基準になっているようです。
富裕層・超富裕層は全体の約2.3%
1億円以上の純金融資産を保有していると富裕層、5億円以上は超富裕層であるということですが、実際にはどれほどの割合が富裕層、超富裕層なのでしょうか。
先ほどと同じく野村総合研究所の公表している2015年時点でのデータによると超富裕層は7.3万世帯、富裕層は114.4万世帯、準富裕層は314.9万世帯、アッパーマス層は680.8万世帯、マス層は4,173万世帯となっています。
構成割合はマス層が大部分を占め、全体の約78.9%、次いでアッパーマス層が約12.9%、準富裕層は約6%、富裕層は約2.2%、超富裕層は約0.1%となっています。
つまり、日本の富裕層、超富裕層の割合は全体の約2.3%ということになります。
富裕層は近年増加傾向に
2013年に同研究所が実施した調査結果と今回の結果を比較すると、富裕層は20.0%、超富裕層は35.2%増加し、両者を合わせると20.9%の増加となりました。2013年の調査時点で準富裕層であった世帯の一部が株価の上昇により資産を増やして富裕層に移行し、富裕層の一部も同様に超富裕層に移行したと考えられます。
富裕層・超富裕層の資産総額においても増加傾向が見られます。2013年から2015年にかけて富裕層および超富裕層の純金融資産総額は、それぞれ17.3%、2.7%増加し、合わせて12.9%増加、富裕層・超富裕層の資産総額は272兆円となりました。
富裕層は生前贈与に積極的
増加傾向にある富裕層・超富裕層ですが、彼らの多くが行っていることとはどのようなことでしょうか。同研究所では、今回の調査において企業のオーナーにアンケートを実施し、回答の中で富裕層・準富裕層該当者の回答結果のみを集計しており、この結果を読み解くことで富裕層の多くが行っていることが分かります。
アンケートでの資産の生前贈与についての設問では、「度々行っている」が22%、「度々ではないが、生前贈与をしたことがある」が21%、という結果となりました。つまり富裕層・超富裕層では、4割以上が生前贈与の経験があるということになります。
また、「生前贈与を実施したことはないが、関心はある」は14%、同じく「やや関心がある」は19%となり、生前贈与の経験がある割合と合計すると76%に達します。このことから、富裕層・超富裕層の生前贈与への関心の高さが伺えます。
実際に過去5年間に行われた生前贈与の事例を見ると、「基礎控除(年間110万円以下)の範囲での贈与」が60%、「住宅資金贈与の特例(最大3,000万円まで非課税)を利用した贈与」が17%、「教育資金贈与の特例(1,500万円まで非課税)を利用した贈与」が10%と続きます。やはり基礎控除の範囲での生前贈与が割合としては多いですが、各種特例を利用した贈与の利用も多く見られます。ちなみに贈与金額の平均は年約600万円でした。
また、「相続税のことを考えると、できるだけ早く生前贈与を進めたい」という考え方に対して、「そう思う」もしくは「どちらかといえばそう思う」が合わせて47%となり、半数近くが相続税対策のためにできるだけ早く生前贈与を行いたいと考えていることが分かります。
富裕層・超富裕層では既に多くが生前贈与を行なっており、生前贈与への関心もとても高いことが今回のアンケート結果で分かりました。多くの富裕層・超富裕層が実施している生前贈与について、一度検討してみてはいかがでしょうか。(右田創一朗、元証券マンのフリーライター / d.folio)
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