前日の海外時間では、NYダウが一時650ドル超下落するなど、引き続きリスク回避の動きが強まり、ドル円は112円を下抜ける動きとなりました。また、ナイト・セッションの日経平均先物が680円下落したこともリスク回避の動きをサポートするには十分な内容になりました。本日の日経平均株価においても、既にナイト・セッションの日経平均先物以上の下落になるなど、再び株価主導でのリスク回避の動きがマーケットの中心になっています。米地区連銀経済報告(ベージュブック)においては、米国の経済指標が示すように底堅い経済成長は確認されましたが、米中の制裁関税の応酬に伴う原材料価格の上昇などによって、貿易摩擦が米国経済に悪影響を与えている状況が改めて指摘されており、このベージュブックの内容も株価下落に寄与したものと考えられます。

普段であればそれほど注目されないユーロ圏のPMIですが、イタリアの予算問題が泥沼にはまっており、急遽注目度が増したPMIですが、内容としてはユーロ圏・10月製造業PMIが市場予想53.0に対して52.1、ユーロ圏・10月サービス業PMIが市場予想54.5に対して53.3になるなど、直前に独・10月製造業PMI/サービス業PMIの内容が悪化していたことも相俟って、ユーロは再び上値の重さが意識されました。1.14ドル半ば付近での推移だったユーロドルが1.14ドル付近まで下落し、その後も1.1380ドル付近まで下値を模索しました。トリア伊財務相の「EUが伊予算案を拒否したのは驚き」、サルビーニ伊副首相の「イタリアは予算を変更しない予定」などの発言から市場がイタリア政府に対して不信感を強めたことも下落速度を速めた要因だと思われます。

利上げ予想が大多数を占めていたBOC(カナダ中銀)の政策金利は、市場予想通り25bp利上げの1.75%となりました。発表直後のカナダ円は86円付近から86.60円付近まで上昇し、その後もウィルキンスBOC副総裁が「金融政策は依然として刺激策のまま」などと発言したことから、継続的な利上げ期待もあり一時86.80円付近まで上昇しました。ただ、その後のポロズBOC総裁の声明では「カナダ経済に刺激策は必要ない」と発言したことから、カナダ円は上昇分を全て吐き出し、今度は86.80円付近から86円付近まで下落する動きとなりました。ただ、引き続きカナダ経済の状況は他国を見渡すと良好であると考えられそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日の注目材料としては、ECB理事会にトルコ中銀(TCMB)政策金利発表がクローズアップされそうです。ECB理事会については、ドラギECB総裁が「基調的なインフレに比較的強い上昇が見られる」などと強気な発言で注目度が増していましたが、イタリアの予算問題が顕在化しており、フォワードガイダンスの変更等は時期尚早であると考えられるため、今回はほぼ目立った変更はないものと考えられます。ただ、ドラギECB総裁が「broadly balanced(幅広くバランスがとれている)」と表現しているリスク認識の表現が今回は多少変更になるのではないかと一部では考えられており、ドラギECB総裁の定例会見の中で注目のワードになりそうです。「安定」に近い表現であればユーロ買い、それ以外(broadly balanced含む)だとユーロ売りに傾くのではないでしょうか。

注目のユーロの予定ですが、10月23日にEUがイタリアに予算案の再提出を要求したことで、イタリアの再提出期限は最長11月13日となります。イタリアの再提出からEUはまだ3週間以内に回答を出すので、12月3日を最終日としてEDP(過剰財政赤字手続き)が発動されるかどうかを決定します。このままEDPが発動されるかどうかの状況が継続するようであれば、11月は引き続きユーロの上値が重い状態が続くものと考えらます。

トルコ中銀の政策金利発表は、市場コンセンサスでは24.0%の据え置きになっています。9月消費者物価指数が+24.52%であることからさらなる利上げが必要であることを示していますが、前回の利上げからあまり日数が経過しておらず利上げ後の影響などを推し量るにはまだ時期尚早であると考えることができます。また、エルドアン大統領が国内の銀行に金利引き下げ要請を行ったと一部報道されていることもあり、今回は据え置きになるのではないかと考えられます。据え置きであれば、トルコリラ円は直近安値である19円のラインはサポートとして意識されそうです。

イタリアの予算案が解決するまでは、ユーロは戻り売りが機能しそうだ

なかなか戻りが鈍い中、ユーロ円については129.20円でのショートに急遽切り替えたことが功を奏しました。やはり129.50円までの戻りは贅沢だったのでしょう。128.30円で利食いましたが、今の水準を考えると、利食いが早すぎたのかもしれません。イタリアの予算案がまとまるまではまだまだユーロは売り材料に事欠きませんし、戻りがあれば再度ショート戦略推奨です。今回は128.50円までの戻りを待ちたいところですが、128.00-20円付近で足踏みするようであれば、再度成行でのショートに切り替えたいと思います。

海外時間からの流れ

基本的には、現在の為替市場はNYダウに引っ張られるかたちになっていますが、予想外だったのがベージュブックにて米中貿易摩擦による米国経済の悪化が指摘された点です。これまでにはない材料だったことから、どちらかというとバランスがとれていたドル円についても下落方向にバイアスがかかってきていると考えられます。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「米中首脳はG20首脳会議の場で会談する予定」と発言したことで、ドルへの影響は当面ないと考えていましたが、イタリアの予算問題同様に、1か月程度スパンが空くことにより、じりじりとした売り圧力がドルにおいてものしかかってくるかもしれません。

今日の予定

本日は、トルコ中銀(TCMB)政策金利発表、欧州中銀(ECB)政策金利発表/ドラギECB総裁定例会見、米・9月耐久財受注(速報値)、米・新規失業保険申請件数(前週分)などが予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。