確定拠出年金(DC)の説明では、節税になる分の使い道について紹介されることが多くありますが、徐々に普及している確定拠出年金のメリットを最大化するためには、還付されたお金を投資にまわす意識が求められます。ここからは確定拠出年金の特徴を改めて説明するとともに、還付金の使い道について英国の制度にも言及しつつ紹介していきます。

確定拠出年金(DC)のメリットは拠出額の所得控除

確定拠出年金還付金
(画像=pinkomelet/Shutterstock.com)

確定拠出年金とは、「老後に向けた積立金」のことです。加入者は、積み立てたお金を定期預金や投資信託などで運用していき、60歳以降に運用してきたお金を受け取ります。そしてこれは、個人が申し込む個人型と、企業単位で申し込む企業型に分かれています。

最近「iDeCo(イデコ)」という名で定着しつつあるのは、個人型確定拠出年金のことです。企業型を含めた確定拠出年金全体を、英語の「Defined Contribution Plan」を略すかたちで「DC」と呼びます。また、この制度は英国でも同様の仕組みがあります。

DCのメリットは、拠出額が所得から全額控除される点にあります。拠出額とは、積み立てているお金の額です。たとえば、ある年に10万円拠出したのなら、その10万円が所得から控除(差し引かれる)されます。そのためDCにお金を拠出することで課税所得が少なくなり、結果的に節税となるわけです。所得税の税率が20%とすると、年間で約2万円が戻ってくる計算となります。

会社員の場合、12月の年末調整の際に「掛金払込証明書」という書類を会社の担当部署に提出します。するとDCで節税になった分が還付され、手取り金額の増加になるケースが多くなります。

税金還付の仕組みについて日英比較

日本と英国では、この還付の仕組みが異なっています。手取り金額、すなわち現金として金融機関の口座に戻ってくる日本に対し、英国では手取りに対する税金相当分がDC用の口座に振り込まれます。

たとえば、税率20%の人が5,000ポンドを企業年金に積み立てるケースを考えてみましょう。本来の税金は1,000ポンドで、課税後の手取りは4,000ポンドとなるはずです。しかし、実はこの人自身は4,000ポンド積み立てるだけで、DC口座は5,000ポンドになります。政府が税金相当分の1,000ポンドをDC口座に振り込んでくれるのです。

つまり、税金相当分の違いが日英で異なります。一般的な口座に還付され、その使い道は飲み代に使おうが生活費に使おうが自由である日本に対し、必ず投資にまわす仕組みになっているのが英国なのです。

還付されたお金は再投資にまわすこと

日本と英国でどちらの制度が優れているかは一概にはいえません。とはいえ、還付金のあるべき姿を考えると、英国のほうがそれに近いでしょう。DCで還付されたお金は資産運用由来のお金であり、本来的には消費・浪費ではなく再投資にまわされるべきお金です。年末調整で戻ってきたお金を「これは第二のボーナス」と喜んで忘年会や新年会に費やすようでは、意味がありません。

iDeCoでは、掛け金を払うときや運用益が出たときには税金がかからないのですが、長く運用してきたお金を給付されるときに一括で課税されます。完全に税金がなくなるのではなく、「課税の繰り延べ」という性質をDCは持っているのです。

DC、特にiDeCoのメリットを説明するときに、「節税(お金が還付される)」という点が強調されるケースが多いでしょう。確かにそれは事実ですが、その還付されたお金の使い方まで踏み込んで考えている人はあまりいないでしょう。しかし、本来はそこが最も大切です。得した分を再投資にまわし、金融資産を大きく育てる意識を持っている人こそが、将来も豊かに暮らせるのではないでしょうか。

(提供:フィデリティ投信