(本記事は、植西 聰氏の著書『怒らないコツ 「ゆるせない」が消える95のことば』=自由国民社、2018年10月17日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【本書からの関連記事】
(1)自分の欠点を指摘されても怒らずに済む考え方とは?
(2)コミュニケーション不足は修復不可能な関係を生み出す
(3)聞き上手になれば人間関係で怒ることがなくなる(本記事)
(4)部下の話から学ぶことができるリーダーになる

相手を主語にして話すのではなく、「私」を主語にして話す

マネジメント,人間関係
(画像=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

「私」の事情を説明しながら、相手に要請する

人に何かを要請する時には、話し方に工夫が必要になります。下手な話し方をすれば、相手を怒らせることになるからです。その際の、上手な話し方のコツとしては、「相手を主語にするのではなく、『私』を主語にして話す」というものがあります。

たとえば、「サッサと仕事を片づけてください」ではなく、「早く仕事を片づけてもらうと、私はすごく助かるんです」という言い方です。

「そこを、どいてくれ。ジャマだ」ではなくて、「私は向こう側へ行きたいのですが、すみませんが、道を開けてもらえませんか」という言い方です。

「大声を出さないでくれ。うるさいじゃないか」ではなく、「大きな声でなくても、私には十分に聞き取れます」という言い方です。

このように「私は~」という言い方で、自分の都合を説明しながら、相手に何かを要請するという言い方をするほうが、相手にとっては抵抗感が少ないのです。その結果、すんなりと、こちらの要請を受け入れてくれるのです。もちろん相手を怒らせずに済みますし、こちらも感情を荒立てるようなことにはならないでしょう。

相手を尊重する気持ちがあれば、人間関係で怒らずに済む

相手を尊重する気持ちを、言葉遣いに表す

人とのコミュニケーションで大切なのは、「相手を尊重する気持ちを持つ」ということです。この尊重心があれば、それが自然に言葉遣いに現れます。そして、こちらの考えが相手に伝わっていきます。自分が尊重されていることがわかれば、相手もこちらに対してていねいに対応するようになります。

そのようにして、お互いに相手を尊重する気持ちを持って接すれば、人間関係でトラブルが起こることもありません。したがって、「相手を尊重する気持ちを持つ」ということも大切な「怒らないコツ」の一つになるのです。

慶応義塾大学の創設者である福沢諭吉(19~20世紀)は、誰に対しても「さん」をつけて名前を呼んでいたと言います。相手が、たとえ年下の者であったり、あるいは教え子であっても「さん」をつけて呼んでいました。

相手がどのような立場の人間であっても、決して呼び捨てにはしなかったのです。これは福沢の「相手を尊重する気持ちを持つ」の一つの現れだったと思います。

そういう気持ちがあったからこそ、福沢は、周りの人たちと円満な人間関係を結んでいました。そして、信望も得ました。その結果、誰かと大きなトラブルを起こして、お互いに怒りながら激しく言い合うということもなかったのです。

言葉づかいがうまい人は、人づき合いもうまい

良い言葉づかいは「怒らないコツ」の一つ

国文学者だった吉田精一(20世紀)が興味深いことを述べています。

「『言葉づかい』という言葉があります。『近所づき合い』という言葉もあります。しかし、どんな辞書にも『言葉づき合い』という言葉はありません。私は人生はこの『言葉づき合い』の積み重ねと思っているんです」というのです。

この吉田精一の言葉は、要約すれば、「人間関係においては、言葉づかいがとても重要な意味を持っている」ということだと思います。

言葉づかいが上手い人が、人間関係が上手い人なのです。言葉づかいが上手い人は、周りの人たちと円満な関係を結んでいくことができます。誰かと言い争いをして、怒ったり、怒られたりするということを避けられます。円満な人間関係の中で、平穏に生きていくことができるのです。

一方で、言葉づかいが下手な人は、不用意に相手を不愉快な気持ちにさせることを言ってしまいます。そのために相手を怒らせてしまうことも多いのです。そして、相手が怒って文句を言ってくれば、こちらも感情を荒立てることになってしまうのです。

言葉づかい=人づき合いなのです。
それが吉田精一の「言葉づき合い」という言葉に表れています。

では、どうすれば言葉づかいが上手になるのかと言えば、その基本は「相手を尊重する気持ちを持つ」ということなのです。その気持ちがあれば、自然に、良い言葉づかいができるようになります。

聞き上手になることで、人間関係で怒ることがなくなる

自己主張する前に相手の話を聞く

穏やかな人間関係を結んでいく上で大切なことに、「聞き上手になる」ということがあります。たとえば、自分が一方的な主張を長々と誰かに話したら、その相手は自分に不愉快な印象を感じてしまうと思います。

相手は、だんだんと、うんざりした表情になっていくでしょう。そんな相手のうんざりとした表情を見れば、「この人は、私の言うことをちゃんと聞いているのか」と腹立たしい気持ちになります。

場合によっては、怒って、「私の話をちゃんと聞け」と文句を言ってしまうことにもなりかねません。そうなれば、お互いに感情を荒立てて口ゲンカをしてしまうことになります。そういう意味では、自分の主張をベラベラとしゃべるよりも、まずは相手の話をよく聞くことを心がけるほうが良いのです。

真剣に相手の話を聞く態度を取れば、相手も誠実にこちらの話に耳を傾けてくれます。その結果、コミュニケーションが深まって、お互いに相手の考えていることをわかり合えるのです。

そのようにして意思疎通できた相手とは、誤解や、気持ちのすれ違いということも、あまり起こらないのです。ですから、お互いに怒って言い争うということをしなくて済みます。言い争いは、往々にして、相手への無理解から生じます。理解し合う関係であれば、言い争いは起こりません。そして、理解し合うために大切なのは、まずは自分が相手の話をよく聞くことなのです。

マネジメント,人間関係
(画像=『怒らないコツ』(※クリックするとAmazonに飛びます))

植西 聰(うえにし・あきら)
東京都出身。著述家。学習院大学卒業後、資生堂に勤務。独立後、人生論の研究に従事。独自の『成心学』理論を確立し、人々を明るく元気づける著述を開始。

【関連記事】
ミレニアル世代の6割が「仕事のストレスで眠れない」試してみたい7つの解消法
「65歳以上の労働率が最も高い国ランキング」1位は4割が労働
みんながやっている仕事のストレス解消方法1位は?2位は美食、3位は旅行……
職場で他人を一番イラつかせる行動トップ3
「ゴールドマン、Facebookなどから転身、成功した女性起業家6人