都心を中心に人気が続く不動産市場。不動産株およびREITも順調な一方で、一般消費者からは、この不動産ブームはいつまで続くのだろうと、疑問の声もちらほら聞こえてくるようにもなった。そこで今回は、現代の不動産市場を牽引する3人の不動産企業経営者に「2025年の不動産市況」について伺ってみた。

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(画像=ZUU online編集部)

【目次】
1 株式会社エフステージ 代表取締役 社長 藤島 昌義 氏
「景気に左右されない、安定した不動産の実需市場」
2 グローバルベイス株式会社 常務取締役 野田 清隆 氏
「不動産市場を支える3つの柱」
3 アパグループ 代表 元谷 外志雄 氏
「憧れの都市 東京」
4 まとめ
「2025年の不動産市況」とは

株式会社エフステージ 代表取締役 社長 藤島 昌義 氏
「景気に左右されない、安定した不動産の実需市場 」

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(画像=株式会社エフステージ 代表取締役 社長 藤島 昌義 氏)

――不動産価格が上がっている状況で、外国人観光客・移民も増えています。首都圏の東京でリノベーション事業を展開されておられる代表に、2020年のオリンピックも含め、「どのようにマーケットを見据えているか」についてお伺いできますでしょうか。

藤島氏:2020年の東京オリンピックまでは景気は良くて、その後は景気が崩れるのではないか、というような声を良く聞きます。

ですが、平成バブルが崩壊した頃からこの不動産業界に身を置く私としては、東京における中古住宅・中古マンションの実需市場はそこまでオリンピック景気に左右されないのではないかと考えております。

中古住宅業界の見通し

――不動産市場は好況のまま、安定して推移していくと考える理由はなんでしょうか。

藤島氏:例えば晴海や有明は2013年にオリンピックが東京に決定してから、グンッと不動産価格が上がりました。湾岸エリアで平成17、18年頃に分譲したマンションは価格が安く、新築で70平米位のものが4,000万円前後で買えました。今は相場が上がり、中古でも5,000〜6,000万円ほどの値段ですが、いまだに売れています。

――それはなぜでしょうか?

藤島氏:東京の賃貸相場自体が高いからと考えております。中古マンションを購入される方は、これまで賃貸の物件に住んでいた方が非常に多いです。高い家賃がもったいないから、低金利なうちに中古住宅を買うという選択のためです。この動きはオリンピックには関係がありません。オリンピック後も実需の中古住宅に関しては、そこまで変動はしないのではと考えております。

インバウンド需要の増加

――外国人の購入者も増えていると耳にします。

藤島氏:そうですね。実際弊社が販売する物件は年間500戸程度あるのですが、その2割弱、つまり15%ほどは海外の方によって購入されています。台湾の方や、中国の方が多いですね。

――彼らも実需で買われるのでしょうか?

藤島氏:実需です。アベノミクス景気の後押しもありますが、東京は現在もなお中古マンションの価格が上がり続けています。それでも海外の方からすると、アジア圏、たとえばシンガポールなどに比べると、まだまだ安いと考えているようです。セカンドハウスとして買われる方もいらっしゃるんですよ。

――購入される層に変化はありましたか?

藤島氏:2、3年前まではほとんどが中国の方でしたが、今ではタイやアメリカなど、その他の国籍の方も増えてきた印象です。また、単身の女性の方で購入されていく方も増えています。当社で売れている物件の割合として、ファミリータイプとシングルタイプが同じくらいなんですよ。

中古住宅の魅力は価格にある

――貴社のビジネスについてですが、3,000~4,000万円代の中古リノベーション物件を販売されていると伺っております。リノベーション次第でやはりその価格・提供する価格も上がっていくものでしょうか?

藤島氏:例えば500万円の費用をかけたリノベーション物件を現況相場より1,000万円高く売ろうとすると、さすがに売れません。リノベーションをしたからといって、必ずしも価格に転嫁するかというと、そのようなことはないのです。

それは中古住宅の大きな魅力は価格が安いことであるためです。ですので、ただきれいにリノベーションをすればよいというわけではなく、リノベーションのプロとして、エリアや価格帯を考え、高品質でありながら、機能性、快適性、デザイン性、そして安心・安全を追及し、今の時代やニーズにあったリノベーションを施すことが大切なのです。

満足度と安心の提供

――先ほど、女性のお客様も増えていると伺いました。今後は女性への認知を拡大していくことも検討していらっしゃるのでしょうか。

藤島氏:そうですね。女性のお客様をターゲットとした場合、よりニーズに合わせて内装やスタイルを変えていく必要があります。例えば単身向け50平米の1LDKの物件であれば、ファミリータイプとはデザインを変えたり、より女性に好まれる間取りにしたりします。

――こういった細かな機転は、確かにダイレクトには不動産価格に反映しにくい部分ですよね。そうなると、物件の目利きというものがとても大事になってきますね。

藤島氏:中古住宅を買わない方の多くは、購入後の「不安」があるからです。何か不具合があった際に保証がしっかりしてないと自分で直さなければならないのでは、と。昔は全く保証をつけていない会社もありました。ただ、今では保証を付けて販売する会社が増えてきていますが、給排水管の保証は2年程度が多いです。

ちなみに弊社ではその部分は10年間保証をつけております。それは保証面においては新築とほぼ変わらない条件で購入できるということです。中古住宅で販売する全ての物件に10年間も保証を付けているのは、業界では弊社だけのようですが。(笑)

――そうなのですね。反響はいかがでしょう。

藤島氏:購入者様の9割以上がご満足いただけていて、紹介に繋がることもあります。仲介業者様からの評価も良いです。ただ同業他社様には「よくやるね?10年なんて」と思われているかもしれません。弊社は自ら施工や検査を行っておりますので、万が一の対応にも自信があります。

また弊社の基本的な考え方として、リスクから逃げてしまうとお客様のためになりません。デザインや見栄え、収納、暮らしやすさももちろん大事ですが、弊社ではそれ以上に「安心」を重視しています。

東京で一位の販売実績

――最後に今後の戦略についてお聞かせください。

藤島氏:弊社では、シェアの拡大戦略として、中小の買取再販事業様を対象としたブランドパートナー事業をスタートさせます。弊社でこれまで培ってきたノウハウやブランドを共有し、強固なパートナーシップの構築をしていき、競争の激しい業界を勝ち抜く戦略です。

――体力の無い企業様のマーケティングを代わりに請け負うということですね。

藤島氏:これから中古住宅のリノベーション業界にはどんどん大手企業も参入してくる時代です。競争力のない会社が淘汰されていくことが予想される中で、パートナー企業様には、弊社の「ARISE」ブランドで販売するだけでなく、様々な情報交換も行いたいと思います。そして、弊社のリノベブランドである「ARISE」の認知をもっと高めていきたいと考えております。この取り組みは2019年2月スタートします。

――ありがとうございました。

藤島 昌義(ふじしま・まさよし)
株式会社エフステージ 代表取締役 社長
1968年生まれ。大学卒業後、大手不動産会社を経て、2002年株式会社エフステージを設立。2006年より東京都を中心にリノベーションマンションの販売を開始。中古マンション業界一筋28年、バブル崩壊から業界の今日までの変移を見続けてきた。

グローバルベイス株式会社 常務取締役 野田 清隆 氏
「不動産市場を支える3つの柱」

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(画像=グローバルベイス株式会社 常務取締役 野田 清隆 氏)

――東京オリンピックを前に、大きな流れとしての不動産市況についてお伺いできますでしょうか。

野田氏:都心の住宅という商品を扱ってきた中で、大きな転換点を迎えたのが2008年のリーマンショックと、2011年の東北の大地震であると感じています。このぐらいの時期を境に、住宅の指向性、求められている住宅そのものが大きく変わっているのを肌で感じました。

2010年頃までを旧型の住宅市場、それ以降を新型の住宅市場とたとえるなら、旧型の時代、ほとんどの住宅購入者は、奥様が専業主婦のファミリー層でした。当時は、住宅選びをする中で多少郊外でも手に入る住宅の広さや駐車場の有無などが重視されていました。郊外であるため、通勤時間はかかりますが、緑もあって子育てがしやすいようなところです。

これらは戦後、住宅がどんどん作られていく中で「家を買うならこういう家だよね」というようなイメージが作り上げられていたからだと思います。

――それがリーマンショックと東北大地震で変わったと

野田氏:直接的ではないにしろ、このくらいの時期が転換点にはなったのではないかと考えております。これらを境に、家を買う方の中心的な存在というのが、以前の「ご主人の稼ぎだけ」というところから一変したのが、今の住宅市場であると感じております。今の住宅市場を支えているものは大きく3つあります。

●都心を求める共働き層

野田氏:1つ目は共働き世帯です。働き方改革により出産後や子育て中も、収入・待遇を変えず奥様の社会復帰を促す企業が増えました。共働き世帯では、仮にそれぞれの年収が600万円ずつであれば、世帯年収は1,200万円になります。

そうすると自然と経済的にも余裕が出ます。休日はレジャーやショッピングをしたいですし、通勤も郊外よりは会社に近い都心を求めます。つまり、都心にファミリーで住みたいというニーズが以前と比べて高まっているのです。

●海外からの購入層

野田氏:2つ目が海外国籍の方々です。昨今日本で暮らす海外の方はどんどん増えています。昨年あたり、日本はドイツ、アメリカ、イギリスに次いで4番目の移民流入大国になったそうです。

そして、例えばIT系の企業では、永住権がなくても年収が1,000万円超え、2,000万円超えという方もたくさんいらっしゃいます。

そういった方は急増しており、一般の日本人よりも金融機関から見たら信用力が高い場合もあります。金融機関も、永住権がなくても信用力がある方には住宅ローンを積極的に貸しますという体制に変わりつつありますね。現在、私どもで物件を購入される方のうち、2、3割のお客さまが海外の方です。

――やはりアジアの方が多いですか?

野田氏:アジア、欧米の方も含めて多いですね。収入基準が日本と全く違うといいますか、年収2,000万円を超える方も非常に多いです。彼らがどんな住宅を選ぶかというと都心の住宅です。自分の勤務地までどのくらいで行けるのかに焦点を合わされているようです。

●住み替えを考える高齢者

野田氏:3つ目は旧型の住宅を買った人たちです。20年前、30年前に家を買ったが、老後を考えるともうここに住みたくないよね、あるいはもう住めないよね、というような方々が都心にどんどん向かってきています。

また、自分の子どもが都心に家を持ち始めると、やっぱり近くに住みたいな、というような思いもあるのでしょう。55歳を超えた方々が郊外から都心に住み替えるニーズには根強いものがありますね。

オリンピック後も、都心の不動産市場は安定して推移

――背景にあるのは共働きと、外国人、そして高齢者ですね。

野田氏:不動産はこれから余るのでは…と考える方は多いのではないでしょうか。これから人口や世帯数が減るにもかかわらず、戦後日本はずっと家を建て続けてきたのだから、供給過多なのではないかと。

しかし、これまで作ってきたのは「今」皆が欲しいと思う家ではありません。旧型の家です。だから旧型の家のニーズが細っていく代わりに、新しいニーズの住宅はこれから求められることになります。例えば中古マンションにおいても優良なファミリー向けマンションは非常に少ないです。

中古でも新築でも、いわゆる都心部でアクセスが良い場所というのは、オリンピックが終わって2025年、あるいは2030年といった時期を迎えたとしても、この大きな3つのマーケットが買い支える力となります。だからこそ、都心の不動産価格が下がることは考えにくいと私は考えております。一旦は調整するかもしれませんが、下げ幅はかなり低いものになるだろうと睨んでいます。

品質への徹底したこだわり

――データを見てみると、貴社の販売物件は、高価格帯に人気があるようなイメージがあります。

野田氏:私どもは中古物件を買ってリノベーションをし、それを売却するビジネスを行っております。4,500万円ぐらいの物件が人気ですが、5,000~8000万円くらいの価格帯もボリュームとしては多いです。

理由の1つには、先ほどの年収600万円ずつの共働きで、世帯年収が1,200万円あるような家庭の手が届く範囲の物件が7,000万円ぐらいになるためです。

リノベーション物件は、新築のクオリティに近い物を期待されます。新築と同等状態の物件を作るということで、高品質と好立地の双方を実現できます。そういった意味で最初は新築を探していたけれど、結局私どもの商品に落ち着くという方もたくさんいらっしゃいました。

――これらの層へどのようにアプローチされているのでしょうか。

野田氏:築20年、30年と経っている物件でも、我々のリノベーション済みマンションであれば、部屋はもう新築同然なのだということを理解してもらうことが非常に重要だと感じております。そのためには、実際の工事現場をご覧いただいたり、あるいは「ここまで徹底的にやっているんですよ」ということを写真で説明したりしています。

――見学会のようなものですか?

野田氏:はい。 ほとんどの方がびっくりされます。「こんなところまでやるの!」と。(笑) 私どもは配管や、床組み、マンションのコンクリートの内側全て替えてしまうぐらい、全ての工事を行っています。

リノベーションと情報戦略のシナジー

――「マイリノ」への登録者が急増していると伺いました。

野田氏:マイリノは物件購入から施工までのトータルサポートサービスです。不動産会社の中には、とにかくお客様から手数料を頂ける物件を優先、むしろそれしか紹介しないというところも多々あります。

我々としては、物件情報をお客様に提供する事によって儲けようという考え方をなくしました。物件を購入された後にリノベーションの工事を請け負えればよいという考えのもと、すべての物件情報を公開しています。その情報を見るためにグローバルベイスの会員登録をする方もすごく増えているように感じます。

今後の事業展開は

野田氏:昨年、リノベーションにおけるデザインの部分で、全くの異業種であるユナイテッドアローズ社様と、パーカーズby青山フラワーマーケット様との協業をスタートさせました。異業種の垣根を取っ払って出来る事は沢山あると思います。色々な場面で色々な企業様からご提案をいただくケースが非常に増えました。そういったものを無駄にする事なく、次の何かへ繋げていきたいと考えております。

――都心の不動産、リノベーションを軸に、色々他業種との協業を含めて新しいサービスを生み出してゆくのですね。ありがとうございました。

野田 清隆(のだ・きよたか)
グローバルベイス株式会社 常務取締役
1969年生まれ。東京都市大学を卒業後、大手マンションデベロッパーで営業部長をつとめ、2002年にグローバルベイスを共同で創業。当時はめずらしかった中古マンション×リノベーション事業をおこし、累計3300戸以上のリノベーション済み中古マンションを都心部中心に提供している。2017年よりオーダーメイドリノベーションサービス「マイリノ」を開始しユナイテッドアローズやパーカーズと提携。コラボレーションプランを提供している。趣味はゴルフとトレーニング。

アパグループ 代表 元谷 外志雄 氏
「憧れの都市 東京」

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(画像=アパグループ 代表 元谷 外志雄 氏)

――まずは不動産市況・マーケットについて、2020年のオリンピック前後をどういうふうに見ていらっしゃるのでしょうか?

元谷氏:オリンピックももう2年を切るところまで来ています。土地を買って開発して商品化するのには約2年ちょっとかかるため、半年で設計して発注し、建築で1年半と見ても、これから土地を買って建築したらオリンピックには間に合いません。

そのため、そろそろ東京の不動産価格は頭打ちのような状況になってきているのではないかと考えます。しかし、東京と世界の大都市を比較すると、東京の不動産価格はまだ価格が安いです。

2025年以降東京の地価は上がる

――では、オリンピック後、2025年以降の東京はどうなるでしょうか?

元谷氏:ますます東京一極化が進むと思われます。

先進国の都市化現象というのは、ずっと長い期間にわたって世界中で進行している現象です。日本においても都市化現象の進行を食い止めるほどの出来事はなかなか起きないと思います。そのため東京の中心部には今後もどんどん人が集まって、さらに街の高層化が進んでいくでしょう。

例えば40階建てや50階建ての建物が都心を中心に増えるでしょう。シンガポールや香港のようにです。それに伴い、容積率の緩和が進むということも考えられます。そうすると2025年以降も東京の地価は上がっていくでしょう。

海外からの顧客の増加がもたらす恩恵

――オリンピック後、観光客は減ると予想しますか?

元谷氏:過去のオリンピックの開催都市を全部調べた結果、1年後には全部において観光客が減っています。しかし、2年目からはまた増え始めています。

――だいたい15・16ヵ月くらいから回復してくるということでしょうか。

元谷氏:そういうことです。過去開催都市のデータではそうでした。

――インバウンドマーケットはどうでしょうか。

元谷氏:日本は近隣諸国からすれば、いわば憧れの近代都市です。さらに、日本の周辺国には人口の多い国がいくつもあり、その国々の所得水準は近年どんどん上昇しています。今後はインドネシア、インドからの観光客が増えるでしょう。

また、最近はヨーロッパやアメリカからの観光客の伸び率もかなり大きいように感じます。アパ単体においては、カナダにおけるホテルチェーンの買収事案もあり、北米おけるブランド力・知名度が向上していると感じます。

――とすれば、ホテル事業には良い影響がありそうですね。

元谷氏:はい。都市化現象により中心部には今まで以上に建物も人も集まってくるので、ホテルの価値が高まってくるのではないかと考えております。

オリンピックが終わった後の1年なり、1年半なりの期間は調整期としてあったとしても、長期的にみれば、不動産ビジネスは収益還元法ですから、都市の真ん中で収益が上がる施設を設けられれば、十分ペイしていくのではないかと考えております。

今の市場価格はそういう意味で利用価値があり、儲かるような仕組みを作ることが大切だと思います。それも金利が高ければチャレンジしにくいですが、幸いなことに日本では超低金利が続いており、金利がいきなり3%、5%になるということはしばらく考えにくいです。

いくらでも資金調達ができるこの時代はありがたいものです。だから私もチャンスと捉えて思い切って投資しています。

ターゲットはビジネスマンからインバウンド層へ

元谷氏:アパは今までビジネスマンを顧客層に想定して設計していました。1週間で一番たくさんある日は「平日」だからです。平日で最も利用してくれる顧客こそがビジネスマンです。ビジネスマンが大事にするのは、時間であり、時間を大事にする人はアクセスタイムにこだわります。だからアパは今までも地下鉄駅から3分以内の立地を中心に購入してきました。

ビジネスマンの多くはどのようにホテルを使っているかというと、部屋に荷物をおいて商談に出て、そのあとクライアントと会食へ行き、ホテルに帰って来たら、お風呂に入ってテレビを見て寝る。それに合わせてアパは、利便性の高い空間に設計しています。また、翌日はホテルで朝食を召し上がる方が多いですから、アパでは朝食には特に力を入れています。

――顧客に合わせた設計をされているのですね。

元谷氏:はい。ゆっくり休めるようにベッドを大きくし、部屋でも仕事をしやすいように照明を明るくして、コンパクトだけど多目的に使えるようにしています。

先程も述べたとおり、今後は海外からお客様を見込んで、部屋を立体的に使ってもらえる工夫もしております。例えばベッドを高くすることです。ベッドが高ければ海外からの方の大きな荷物もベッドの下に置けますからね。

これまではビジネスマンを主体にマーケティングを行ってきましたが、現在は25%がインバウンドのお客様です。それが多分今後は全国平均で50%くらいまでいくのではないかと考えております。東京では70%くらいになるかもしれません。

主たる顧客層がビジネスマンからインバウンド層に変わってくるということも想定しながら、アパでは部屋の作り方を今後もどんどん変えていくつもりです。これもすべてはお客様に満足をいただきたいからです。

実用目線が世界最高の収益を生む

――代表はビジネスマンでもなく、インバウンドのお客様でもないのに、どうしてその発想に至ったのですか?

元谷氏: 私はプラグマチスト、実用主義者ですからね。そういう感覚で事業をとらえると、ホテルが必ずしも「豪華で、スペースの広いところ」であるべき、と望まない層もいるのではという考えに至りました。こういった柔軟な発想が世界最高の収益を作り上げるには不可欠であると考えております。

――2020年までに10万室という目標を掲げていらっしゃいますね。

元谷氏: 10万室の目標には、FC並びにパートナーホテル(提携ホテル)を含む数字ですね。アパホテルネットワークとして10万室を目標にしており、現在建築・設計中を含め7万8千室まで達成しています。

今後の戦略は「ブランド力アップ」と「国際化」

元谷氏:まずは、ブランド力アップにつながるホテルを増やしたいと考えております。そのために日本最大級となる、地上35階地下2階建て、2,311室の横浜ベイタワーと、有力政治家らが事務所を構えた永田町TBRビルがあった場所には高級ホテルを建築中です。

これらのホテルはいわゆる一般都市ホテルとは異なる、グレード感がある、よりビジターが満足のいくホテルになる予定です。一回泊ったら、もう他で泊れないと思えるような満足を提供していきたいと考えております。

さらに、「You’ll be back」というキャッチコピーを掲げ、世界最大の広告会社『J Walter Thompson(JWT) 』とも提携しました。ホームページもそれに合わせて最初のアクセスが英語だと、その後も全ページが英語表記されるように変更をいたしました。

これまでホテルというのはある意味ドメスティック(国内的な)な産業でした。しかし、海外からのお客様が東京では7割、全国平均で5割を超えてくる時代はもう直前に迫っています。国際化に対応するホテル事業を展開していきたいと考えております。

――ありがとうございました。

元谷 外志雄(もとや・としお)
アパグループ 代表
1971年4月に創業し、注文住宅から戸建分譲、マンション分譲、ホテル事業、総合開発事業へと事業を拡大、発展させ、2017年11月期連結決算で売上高1,161億円、経常利益350億円を計上。ホテル事業では、国内最大級の483ホテル79,229室(2018年11月7日現在)のアパホテルネットワークを築いた。

2025年の不動産市況とは

不動産市場の先端を歩み続ける3人の経営者に話を伺った。今後の不動産市況において、まず目をつけておきたいのが日本人からインバウンド層へという、顧客層の変化だ。とくに東京など、国内の大都市圏の不動産価格は海外のそれよりもまだまだ安いという点には十分に留意しておきたい。

また、都心部においてはこれから先、ますますの人口流入が起こることも併せて考えると、不動産市況は概ね安定的なものであるという見方が三者ともに共通する見解のようだ。