「老後のお金が心配なので少しずつ貯蓄している」という人は多いでしょう。しかし、今のご時世、貯蓄だけで十分なのでしょうか。物価のインフレが進むと、お金の価値は目減りしてしまいます。
ここではインフレと、それに対処するための資産形成の「2つの工夫」について紹介していきましょう。
「たくさんの貯金」。でも老後が安心できないたった一つの理由
インフレが起きると現金の価値が目減りするため、貯蓄だけでは安心できないでしょう。仮に、現在100円で買えていたものが150円になったとします。モノの価値が上がったように感じるかもしれませんが、逆に考えればお金(円)の価値が下がったともいえます。つまり、インフレになると、お金の価値は下がることになるのです。
実際に日本では、緩やかなインフレを起こすべく金融・財政政策を進めており、日銀は2013年から、消費者物価を前年比上昇率2%とする目標を掲げています。毎年2%の物価上昇が続くと仮定すると、20年で現金の価値は30%以上目減りしてしまう計算になります。
これは5,000万円貯蓄をしても、価値が目減りすることにより実質的には3,500万円と同じ価値になってしまうことを表します。
カギはインフレをカバーする資産形成
個人がインフレ政策に抵抗するためには、2つの手段が考えられます。
一つは、給料や事業収入を物価上昇率以上に増やすことです。しかしながら、この方法はなかなか難しいといえるでしょう。会社勤めの人が、毎年のように給料を2%以上上昇させるのは困難です。もちろん、自営業や個人事業主、経営者も同様のことがいえます。
もう一つの方法は、資産運用です。投資信託や株式、債券、不動産などに投資することで、資産形成をします。仮に1,000万円を投資したとき、利回りが5%であれば50万円の利益となります。もちろん資産運用でも毎年、安定的に利益を得るのが難しいこともあります。イラク戦争が開戦した2000年代初頭やリーマンショックが起こった2000年代後半のように、日経平均株価が60%以上の下げ幅を見せた時代もあるからです。
つまり、これらのことを総合的に考えると、2つの手段をミックスするほうが良い方法といえるでしょう。一定の給与収入や事業収入を得つつ、資産運用を続けることが堅実で行いやすい「個人のインフレ対策」になります。資産運用を続けるにあたっては、高い利回りを狙うだけではなくリスクを減らす考え方も必要といえるでしょう。
「2種類の分散」でリスクを下げる
資産運用においてリスクを下げるためには、投資対象と投資タイミングを分散させることが一般的です。まず、投資対象の分散についてですが、1社に限定して全財産を投じるよりも、たとえば100社に資産を分散させる方がリスクは当然、低くなります。
ただし、自分で100社に分散投資するのは大変なことです。そこでおすすめなのが、投資信託(ETF含む)となります。一つの投資信託の中に、株式や債券など数多くの銘柄に投資をしているので、手間をかけることなく分散投資を実現できるというわけです。
次に、投資タイミングの分散です。株価が上昇しているときにまとめて株式を購入するのは、得策ではありません。かといって、株価が割安なタイミングを自分で見計らって投資することも容易ではないでしょう。そこで、何度かに分けて投資を行うわけです。これを「ドル・コスト平均法」と呼び、株価が激しく変動しても、毎月、一定の金額で購入していけば、長期的に見れば購入価格が平準化され、平均購入単価を低く抑えることができます。
また、投資タイミングを分散させるには積立投資が最適です。投資銘柄と金額、タイミングを指定しておけば、あとは自動的に一定金額の投資を継続できます。インフレ自体を回避するのは難しいことですが、資産運用によってそのダメージを減らすことは個人レベルでも可能といえるでしょう。資産形成で老後の安心を得るためにも、貯蓄だけではなく資産運用を行うことが重要な時代になったといえます。
(提供:フィデリティ投信)