みなさん、こんにちは
事業承継専門の税理士法人トゥモローズです。

今回から事業承継税制について網羅的、具体的に解説していきたいと思います。
まずは導入として基本的な部分について概略を解説します。

1. 事業承継税制とは?

事業承継税制とは、中小企業オーナーの事業承継を税制面からバックアップする制度であり、平成21年度税制改正により創設されました。
事業承継税制は、俗称であり正式名称は、
「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」、
「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除」
になります。
この正式名称からわかるように贈与税と相続税の納税を猶予又は免除する制度だと考えていただければ結構です。
どのくらいの納税が猶予されるのかざっくり確認してみましょう。

(1)贈与税の納税猶予

非上場株式に係る贈与税の全額が納税猶予

(2)相続税の納税猶予

非上場株式に係る相続税の80%が納税猶予

※ (1)及び(2)は、共に発行済株式の2/3に達するまでの部分に限ります。

上記の通り、贈与税や相続税がほぼ一時的に猶予され、一定の要件のもの最終的には免除されることとなる制度なのです。このように非常に納税者にとって有利な制度であるため厳格な要件が定められています。

2. 納税猶予の適用要件

(1) 贈与税の納税猶予

① 会社の要件
次の会社に該当すること
  □ 都道府県知事の認定を受けた中小企業者
  □ 非上場会社特定特別関係会社も同様)
  □ 従業員が1人以上(一定の外国株式等を保有している場合には5人以上)
  □ 風俗営業会社以外の会社(特定特別関係会社も同様)
  □ 資産管理会社以外の会社
  □ 特定特別関係会社中小企業者に該当する会社
  □ 売上がゼロを超える、黄金株を発行していないなどの会社

② 後継者の要件
贈与時において
  □ 代表権を有している
  □ 20歳以上
  □ 役員経験が3年以上
  □ 贈与後に後継者(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

③ 先代経営者の要件
  □ 過去に代表権を有していた
  □ 贈与時において代表権を有していない
  □ 贈与前に先代(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

④ 経済作業大臣の認定
  贈与税の申告期限までに上記①から③の要件につき経済作業大臣の認定を受けていること

⑤ 担保提供の要件
  納税猶予税額及びその利子税相当の担保を提供すること

⑥ 事業継続要件
  贈与税の申告期限から5年間は以下の要件を満たす必要があります。一つでも満たさないと納税猶予された贈与税と利子税を一括納付しなければなりません。
  □ 非上場株式を譲渡等しないこと
  □ 後継者が代表権を有していること
  □ 基準日の雇用の平均が相続時の8割を下回らないこと
  □ 資産管理会社に該当しないこと
  □ 先代が代表権を有することとならないこと

(2) 相続税の納税猶予

① 会社の要件
次の会社に該当すること
  □ 都道府県知事の認定を受けた中小企業者
  □ 非上場会社特定特別関係会社も同様)
  □ 従業員が1人以上(一定の外国株式等を保有している場合には5人以上)
  □ 風俗営業会社以外の会社(特定特別関係会社も同様)
  □ 資産管理会社以外の会社
  □ 特定特別関係会社中小企業社に該当する会社
  □ 売上がゼロを超える、黄金株を発行していないなどの会社

② 後継者の要件
  □ 死亡日の翌日から5年間、代表権を有している
  □ 相続後に後継者(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

③ 先代経営者の要件
  □ 過去に代表権を有していた
  □ 相続直前に先代(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

④ 経済作業大臣の認定
相続開始後8ヶ月以内に申請をし、経済作業大臣の認定を受けていること

⑤ 担保提供の要件
納税猶予税額及びその利子税相当の担保を提供すること

⑥ 事業継続要件
相続税の申告期限から5年間は以下の要件を満たす必要があります。一つでも満たさないと納税猶予された相続税と利子税を一括納付しなければなりません。
  □ 非上場株式を譲渡等しないこと
  □ 後継者が代表権を有していること
  □ 基準日の雇用の平均が相続時の8割を下回らないこと
  □ 資産管理会社に該当しないこと

3. 適用件数

平成20年10月の創設から平成28年3月末時点での経済作業大臣の認定件数は下記の通りです。
① 贈与税 626件
② 相続税 894件
明らかに適用件数は少ないと思いますが、適用要件の緩和等の税制改正が頻繁に行われているため今後はもう少し増えてくるのではないでしょうか。(提供:税理士法人トゥモローズ)