前週末の海外時間では、市場の期待を裏切ったばかりのポンドが、さらなる政局不安の情勢を露呈し、ポンド売りを加速させました。北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)が、ブレグジット交渉を巡り英国を分断する合意を支持しないと表明しました。加えて、ボリス・ジョンソン英前外相の弟で運輸副大臣を務めたジョー・ジョンソン氏はメイ英首相の離脱最終案に反対し、国民投票の再実施を求め辞任との報道がポンド売りを強めました。もともとブレグジット交渉については、一部メディアから楽観論が出ていたこともあり、現在の状況はまさにネガティブサプライズと言えるのではないでしょうか。週末には、本日予定されていた英保守党内閣のブレグジットに関する閣僚会合をメイ英首相がキャンセルをしたという報道が伝わっていることも、早朝からのポンド売りに繋がっていると考えられます。

ユーロについては、引き続き欧州連合(EU)とイタリアとの温度差が激しく、特に今週13日には財政規律ルールに反しているとして修正を求めたイタリアの2019年予算案の再提出期限であることから、自然と上値が重くなってきそうです。トリア伊経済・財務相は予算案について「主な柱は変更しない」と述べており、明日13日についてはユーロへのネガティブヘッドラインがマーケットの中心になりそうです。FOMCにてドルの利上げ路線継続が確認されたこともあり、ユーロについてはユーロ円よりもユーロドルの動意の方に注目が集まりそうです。

ドル円については、114円をどうこなすかによって113.00-114.00円のレンジから114.00-115.00円のレンジに移行する可能性があります。前週金曜についても、114.06円まで上値を拡大するも、114円台ではあえなく失速、終値ベースで8日に114円台で引けたものの、9日の高値がほぼ始値であったことを踏まえると、2日連続で終値ベースで114円台を維持すればドル円の買い基調に弾みがつくのではないでしょうか。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、Veterans Day(復員軍人の日)の振替に当たり、米国が祝日となります。ただ、この日は祝日ではあるものの、金融市場を含めて通常営業となる珍しい日です。ボラティリティの落ち込みはあまり見られない公算ですが、海外時間に13日のイタリア予算案の再提出待ちの動きが強まるようであれば、NY時間についてはもみ合いの動きになるかもしれません。

明日13日を待たず、ユーロが大きく売られるとすればユーロドルが1.13ドルを下抜ける状況ではないでしょうか。心理的節目であることは当然ですが、1.13ドル割れの水準は年初来安値の水準でもあります。当然ストップロスが溜まりやすい水準でもあるため、一気にユーロ売りに傾く可能性がありそうです。

ブレグジット交渉については、「合意間近」「合意なき離脱」の情報がが交互に出てきていることにより、かなり錯綜しています。ただ、一喜一憂のマーケットではありますが、実は公式な声明はここには一つもないことが特徴です。本来であれば、本日12日にEU離脱交渉の合意文書を閣議検証、13日に公表、同日にはラーブEU離脱担当相とEUのバルニエ首席交渉官との会談を経て、14日にメイ英首相の声明後に臨時EU首脳会議に臨む算段でした。ただ、いきなり予定が崩れていることもあり、どこまで実現するかは不明ですが、このシナリオを市場は織り込んできた経緯があるため、一つでもつまずけばポンド売りになることはごく自然なことだと考えられます。

次なる手はユーロドル年初来安値更新を目指すトレード

ユーロドルのショート戦略、1.1440でのエントリー、利食いの目標である1.1320ドルに無事達し、利食いにてこのトレードは手仕舞です。年初来安値間近ということもあり、本来であれば軽いロングが定番のトレードですが、今のユーロを買い支える材料はどこにもありません。多少の戻りがあったところでは、再度ショート戦略です。1.1400ドル上抜けを撤退目途に、1.1350ドル付近での売り戦略。利食いについては、1.1300ドル下抜けを想定し、1.1220ドルを目安にしたいと思います。

海外時間からの流れ

「合意間近」→「合意なき離脱」とあくまでメディア情報主導ではありますが、ポンドの立ち位置が大逆転しています。ポンドドルの1.2950ドルは、楽観論からのポンド買い戻しが入った水準でもあり、否定され戻ってきた水準でもあります。この1.2950という水準は、今後のポンドの状況を判断する上で、重要な水準になるかもしれません。

今日の予定

本日は、米国が復員軍人の日で祝日となります。経済指標としては、トルコ・9月経常収支が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。