受験シーズン真っ盛りである。受験生のお子さんをお持ちのご家庭では大変なご苦労をされていると思うが、合格後もまだまだ親の負担は重いようである。
<大学入学までにかかる費用>
大学生協連調べによると、受験生が大学入学までにかかる費用は、東京の私立大学自宅外生の平均で約258万円となっている(図表1)。その後も授業料のほかに月約9万5千円の仕送りが必要となっており(図表2)、地方から東京の大学に通わせるには、「ひと財産」かかることになる。
また、自宅から国公立大学に通わせたとしても、入学までにかかる費用130万円と月約2万円の小遣いが必要となっている(自宅生の場合はほかに生活費の負担もあろう)。給料が下がることが珍しくなく、リストラの嵐に必死に耐えている親御さん方には大変な負担であると思う。
<大学に入ってしまえば安心?>
それでは、大学を卒業した後はどうだろうか。
図表3は、大学卒業生の進路状況であるが、1991年以降就職率は低下してきており、1991年の81.3%が2000年には55.8%まで急減した。2001年には若干上昇して57.3%となっているが、卒業生の半分強しか就職していない状況になっている。
大学院への進学者の増加ということもあるが、主な原因は「一時的な仕事についた者」「左記(進学者、就職者等)以外のもの」の増加にある。両者の合計が卒業者数に占める割合は1991年の6.0%から2001年の25.3%へ4倍以上となっている。いわゆる「フリーター」の増加であり、大学卒業者の定職につく割合が半数強に過ぎなくなっているのは驚くべき数字ではなかろうか。苦労して大学を出しても定職につかない(つけない)のでは、せっかくの親御さん方の苦労も報われないといわざるを得ない。
<競争に勝てる能力を身につける>
日本経済は、今後短くない間ゼロ成長あるいはマイナス成長を予想しなくてはならない状況にある。富は増えないわけだ。従って、その分配は「ゼロサムゲーム」にならざるを得ない。競争に勝ったものは経済的により豊かになれるが、負けたものは今よりも貧しくならざるを得ない社会である。
大学卒業者の「フリーター化」は、その競争の犠牲者なのか、より多様な生き方を望んだものなのかは意見が分かれよう。しかし、少なくとも教育の「経済」効果としては、この競争に勝つための能力を身につけるものであってもらいたいものだ。そうでなければ教育にかけた大きなコストが割にあわなくなってしまう。
これまで豊かさがあたりまえであった世代に厳しい競争が待っているのは間違いない。それに備えて大学での4年間をぜひとも意味のあるものにしてもらいたいものである。(提供:第一生命経済研究所)
研究開発部 荒川匡史