我が子の海外留学を検討している人が一番気になるのは、留学費用だろう。海外の4年制大学の留学には、どのくらい費用が必要なのだろうか。
授業料が年間500万円以上の大学もあるアメリカ
子供が海外の大学に留学する場合、まず確認しておかなければならないのが授業料。文部科学省が発表した「諸外国の教育統計2018年版」によると、アメリカの州立4年制大学における2014年の平均額は年間約86万5,000円、私立4年制大学は年間270万7,000円となっている。
州立大学は私立大学に比べ安価に思えるが、この金額は州内から進学する学生を対象としたもの。州立大学の多くは州内の学生と州外からの学生で授業料を区別しており、州外の学生の授業料はおおむね2~3倍となるようだ。
例えば、名門州立大学の一つ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の場合、州内学生の年間授業料約190万円だが、州外学生の場合約360万円となっている。同様に、ニューヨーク州立大学は約205万円、ワシントン州立大学は約287万円かかる。
なお、私立大学では、ハーバード大学が年間約550万円、マサチューセッツ工科大学が約560万円で、世界的に有名な大学は授業料も高額だ。
大都市圏では年間の寮費が200万円ほどのところも
授業料以外にも、初期費用としてパスポート・ビザの取得費などがかかる。また寮やホームステイ・食費などの生活滞在費、留学保険料、教材費なども考えなくてはいけない。
初期にかかる諸費用としては、アメリカへの航空機料金(片道)が約10〜15万円、パスポートの申請(5年間有効)で1万1,000円、学生ビザの申請費1万8,400円、学生・交流訪問者情報システム (SEVIS)料金として約2万円がかかる。合計で5万円ほどになる。
生活費用に関しては、留学を受け入れている大学の多くが寮を完備しており、相場は食費込みで年間100万~170万円、大都市にあるニューヨーク州立大学で年間約200万円だ。加えて、携帯電話などの通信費、お小遣いなど細かい経費も念頭に入れておく必要がある。万が一に備え、保険の加入も忘れてはならない。留学の場合、年間10万~20万円ほどかかる。
ヨーロッパには授業料が無償の国立・州立大学もある
アメリカ以外の状況も見てみよう。人気の高い留学先の一つであるカナダは、平均すると年間授業料は約200万円で、州によるばらつきが大きいようだ。名門トロント大学は、年間430万円となっている。
ヨーロッパでは、イギリスの国立大学の年間授業料が約130万円。ドイツやフランス、ノルウェーなどは、留学生に対しても授業料を無償または低額に抑えている国立・州立大学が多い。学籍登録料や図書館利用料、社会保障費など別途かかる場合もあるが、それでも年間10万円未満ところが大半だ。
例えば、ドイツの州立ボン大学では、2018年度夏学期の授業料は無償で、公共交通機関を利用するための学生パス代と学生福祉会経費として計4万円ほど。
生活費は、当然その国々の物価に左右される。物価が高めのフランスの場合、家賃の相場は東京に近い水準で、食費は高いものの通信費用は安いなど一概には言えない。ただ、日本の生活水準と大きな違いがない国が多いため、東京などで一人暮らしする場合を想定しておけばいいだろう。
4年間で1,500万円以上かかる?奨学金情報など事前準備を忘れずに
上記から、子供の海外大学留学にかかる総費用をシミュレーションしてみよう。往復の渡航費用など諸経費を30万円、1年間の生活費を交通費や保険料など含め200万円とした場合、4年間で830万円必要になる。これに授業料を加えた額が4年間の留学費用となる。
授業料が年間約200万円の場合、4年間の留学費用は1,630万円。ドイツやフランスのように、授業料がほぼ無償の場合は850万円程度。もちろん、大学によっては入学金が必要なところもあるので、1割くらい多めに見積もっておいたほうが安心だろう。
参考までに、日本国内の大学の費用も試算すると、国立大学の年間授業料は53万5,800円、私立大学の年間平均授業料は、約87万円。一人暮らしで。月々12万円仕送りすると仮定した場合、国立大学4年間で最低800万円ほどかかる計算だ。
日本と比べると、アメリカの大学への留学は資金面でのハードルが高いように見える。だが留学先の大学に奨学金制度が設けられている場合も多く、中には返済の必要がない奨学金もあるので、事前にしっかり確認しよう。
海外の大学への留学は、子供はもちろん親にとっても大きな決断だ。父親として、子供の将来の選択肢をできる限り多く残してやりたいと考える人も多いだろう。
現在、海外留学を促進するために、文部科学省が「トビタテ!留学JAPAN」という留学促進キャンペーンを行っている。官民協働で運営されている支援制度もある。また日本学生支援機構では海外留学支援サイトを設置し、奨学金をはじめ各種情報の提供をしている。子供の海外留学を考えているのならば、詳しく調べてみるといいだろう。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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