ブロックチェーンはビットコインを端緒に、仮想通貨の基盤技術としてまたたく間に、その名を社会に知られるようになりました。しかし企業経営者の方も含め、ブロックチェーンはIT社会のごく一部で用いられている特異な技術と思われている節もまだあるようです。
ブロックチェーンは今や、仮想通貨のみならず、医療、芸術、ビジネスシーンなどさまざまな分野で変革を成し遂げるものとして、さらなる研究開発が進められています。本稿では、ブロックチェーンの基本的な仕組みから、今後の技術革新の動向について解説します。
国内医療の市場規模に並ぶブロックチェーン市場
ブロックチェーンはビットコインに代表される仮想通貨によって一気に知名度が広まりましたが、その歴史は意外にも古く、1990年に暗号学の学会でその源流を垣間見ることができます。ビットコインが台頭する以前から、ブロックチェーンの考え方はアカデミズムやビジネスなど広い分野で流通している技術であったといえるのです。
2016年の経済産業省の調査によると、ブロックチェーン関連技術の潜在的な市場規模は67兆円と試算されています。これは国内医療・福祉業界の約68兆円に並ぶほどの大きな市場規模です。このようにブロックチェーンは政府が採用するほど信頼性が厚く、さらなる研究開発が期待されている技術なのです。
そもそもブロックチェーンとは?
ブロックチェーンは仮想通貨の一技術と思われがちですが、実際には「分散型ネットワーク」と呼ばれる通信ネットワークの基盤技術に位置します。ブロックチェーンの特徴は「非中央集権的」なシステムです。これまでのデータベースは、データのやり取りを行うにあたり、システムの中央に位置するサーバーが必要でした。しかしブロックチェーンを活用すると、すべてをコントロールする中央集権的なサーバー部分が不要となり、代わりにすべての運用を個々人のユーザーが担うことになります。
ブロックチェーンは分散されたデータを各ユーザーがそれぞれ保持します。そしてこれらのデータを「ブロック」と呼ばれる単位ごとにつなぎ合わせていくことで、一連の取引を成立させるため、ブロックチェーンと呼ばれているのです。
ブロックチェーンはデータが分散されるため、情報漏洩が極めてしにくく、高い機密保持性を持っていることが特徴です。また、中央となるサーバーが存在しないため、低いコストでスピーディな取引ができることも魅力の一つとされています。
ブロックチェーンの将来性は
上述のようにブロックチェーンは全権を掌握する管理者が存在しないため、将来的にさまざまな分野での活用が期待されています。例えば海外送金を行うにあたり、ブロックチェーンによる仮想通貨を用いれば、これまで数日を要していた法定通貨間での承認や交換作業が不要になります。
2017年、全国銀行協会(全銀協)は仮想通貨を用いた送金手段の実験のため「ブロックチェーン連携プラットフォーム」を立ち上げ、新しい金融システムの開発に向けた取り組みをはじめました。また、ブロックチェーンはさらなる研究開発が続けられており、将来的には以下のような応用が期待されています。
●医療技術およびAIとの融合
Google傘下にあるイギリスの人工知能開発企業「Deep Mind」は、AI(人工知能)による医療を促進していました。その後、患者データのプライバシー保護の観点からブロックチェーン技術を採用したのです。これにより、患者のカルテや個人データ、治療法などを暗号化し、さらにそのデータ提供をリアルタイムで追跡しつつ、必要に応じて世界の医療機関と共有することが可能となりました。
●食品の信頼性を向上
中国市場における最大手の情報技術企業である「阿里巴巴集団」(アリババ・グループ)は、オーストラリア郵便公社やブラックモアズなどと提携して、ブロックチェーンを用いた、食品を中心とする流通追跡サービスの開発を行っています。
「フードトラスト・フレームワーク」と呼ばれるこのシステムは、食品の安全性に問題がある時点で追跡を開始し、課題が生じた時点での回収が可能となるため、食品の信頼性の向上に寄与するとともに、製造・回収工程における不要なコストまでをもカットすることができる仕組みとなっています。
●商品管理プラットフォーム
オーストラリアの「AgriDigital」は、ブロックチェーンを利用することで、農業生産者から仕入れを行う購入者、契約、配送、決済、さらに消費者への信頼向上のため、商品の情報提供に至るまでをワンストップで行えるシステムを提供しています。その特徴は農業生産者がリアルタイムで現在の取引価格を把握して、購入者が提示する仕入れ価格と比較することから始まり、バリューチェーンの機能ごとに付加価値を付けられる点にあります。
さらなる発展が期待されるブロックチェーン市場
ブロックチェーンはあらゆる分野への応用が期待されています。上述のように金融、医療、食品や流通などに留まらず、保険や電気事業など、今やさまざまな業種がブロックチェーンに注目しつつあるのです。今後、さらなる技術革新が行われていくにあたり、自社が提供しているサービスにもブロックチェーンの技術を採り入れてみることは一考に値するはずです。(提供:みらい経営者 ONLINE)
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