シンカー:グローバルに 政治的リスクの高い状態が続いているため、リスク回避の大きな動きに背を向けるのは時期尚早であろう。一方で、「大衆を救う」ために登場したポピュリスト的な政治手法が、財政・金融を通じた景気刺激策を拡大していくとみられる。米国との貿易紛争に苦しんでいる中国は、負債の膨張のリスクを抱えながらも、景気減速を示す指標はPBOCにさらに利上げ圧力をかける格好になっている。グローバルなインフレ圧力は徐々に高まる方向になるだろう。しかし、政策当局は予防的な引き締めをとることはできないようだ。そして、原油価格の下落もインフレへの警戒感を緩和する。インフレが政策当局が警戒するほど強くなる見通しの下で、引き締め政策が強化されないかぎり、そこそこの景気が継続するのがまだメインシナリオだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

最新のSGグローバル・レポートと要約

●中国経済(11/15):景気抑制圧力が続き、追加緩和が必要になる見通し

10月の中国経済指標は強弱まちまちだった。インフラ投資は特別地方債の発行急増を背景にようやく回復したが、消費支出、住宅関連ともに「消費者」の活動は弱い。中国経済の先行きに対し、引続き慎重な見方をとる理由が何点かある。土地販売収入の低調さと地方政府シャドー債務に対する取締りを背景に、2016年のようなインフラストラクチュア投資の力強い回復は考えづらい。また、米国の追加関税による(中国の)輸出へのインパクトもまだ見えていない。住宅市場の沈静化と、 低質住宅が集中した地域の再開発が来年には縮小されることから、弊社は住宅投資にも慎重な見方を維持している。

さらに、10月の信用供与が弱かったことから、銀行間流動性の緩和では民間への貸出を十分に下支えできなかったことが明らかになった(民間への貸出は、シャドーバンキング規制強化で苦戦している)。政策当局がこれを認識していることは確実で、目標を絞った策を発表している。そうした策の効果を見極めるために弊社は様子見を続けているが、10月経済指標はPBOCにさらに圧力をかける格好になっている。年内にRRR追加引下げが実施される可能性が非常に高い。その他の政策金利が引下げられる可能性も高くなっている。貿易に関する交渉が何らかの形で進展すれば、(PBOCに)利下げの機会を提供することになるだろう。

●アセットアロケーション(11/15):クレジット-大惨事というほどではないが、それでも記録的な資金流出

10月の市場急落は年初来での上昇の大部分を帳消しにした。株式ファンドの運用資産額はピークからボトムまでで1兆ドル以上減少しており(-9.3%)、株価下落の影響と比較的小幅な資金流出(僅か70億ドル)がその主因となっている。債券ファンドはより底堅さを見せたが、それでも債券資産全体で2.6%下落した。この比較的底堅いパフォーマンスの割に、債券ファンド、特にクレジットファンドは驚くほど大幅な資金流出を記録した(それぞれ-380億ドル、-210億ドル)。これは痛手ではあるが、一部で懸念されていたような大惨事というほどではなかった。

ユーロ建て投資適格(IG)クレジットは2016~17年に米国のクレジットを大きくアウトパフォームした後、2018年初来のトータルリターンは-0.8%と、2008年以降で最悪となっている。スプレッドは年初に比べて約50%拡大している。欧州のIGクレジットと欧州のハイイールド(HY)クレジットのスプレッドは同程度拡大している一方、純資金流出は前者に集中した。絶対額でみると、IGクレジットは平均から4標準偏差を超える流出超となった(下左図)。運用資産額に対する比率でみても、過去5年間で最も大規模な資金流出となった(下右図)。何が起きているのだろう?

10月の急落の後、クレジット市場は再び上昇しているが、弊社のクレジットアナリストは、弱気相場はこれで終わりではないと考えている(2018年11月8日付のMARKET WRAP-UP参照)。バリュエーションは依然魅力的とは言えず、ECBのQE終了後は流動性によるサポートが弱まるとみられる。今のところ、BREXITとイタリアの予算問題は依然として非線形リスク(NON-LINEAR RISKS)である。次の危機はどちらかと言えば2020年の話だとしても、欧州のクレジットは米国の成長減速の影響からは逃れられない。それまでの間、パフォーマンスの改善に伴いクレジットからの資金流出はやや緩和する可能性がある。

ETFを通じた市場アクセスの容易化と利回り追求(HUNT-FOR-YIELD)の結果、クレジットファンドの運用資産額は過去2~3年で大きく拡大している。本稿の15ページに米国と欧州のクレジットファンドのIGとHYへのインプライドアロケーションを掲載している。

●グローバルストラテジー(11/19):灰色のサイに気をつけろ-だが野牛が一番危険

中国の中央銀行が先週、「灰色のサイ」的なイベント(非常に明確だが無視された脅威)に関連する金融リスクが、来年には表面化する可能性があると警告を発した。先進国経済はいずれも、(はまれば脱出が困難とみられる)深い穴に落ちようとしている。2008年には穴に向かって下ろされたハシゴ(金融・財政政策を通じた救済策)は、次の経済危機では利用できないだろう。筆者もどの国が最も深く穴に落ちるのかは特定できないが、1つ確かなことがある。それは「大衆を救う」ために登場したポピュリスト達が、財政・金融を通じた景気刺激策を全く非現実的な方法で使うことだ。

●債券市場(11/19):ブレグジットの混乱

ブレグジットすなわち、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明感が、足元の債券市場を支配している。政治的リスクの高い状態が続いているため、リスク回避の大きな動きに背を向けるのは時期尚早であろう。しかし、この問題がユーロ金利に波及したことで、現在ではいくつかの投資機会が提供されている。欧州中央銀行(ECB)の資産買い入れ政策が終了した後の来年1月以降、ユーロ圏の国債市場を純供給量の増加という問題が直撃する。ロングエンドの発行が前倒しされる例年の傾向は、これから2019年初めに向けて、ユーロ圏市場の2年-30年スティープ化を想定したポジションに投資妙味が出ることを示唆している。加えて、ECBの金融政策に対する市場の織り込みがハト派寄りである結果、ユーロ金利の変動リスクに非対称性が生じており、ペイヤー・スワップションのスプレッド買いが魅力的となっている。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司