「投資したいが、どの銘柄に投資すればいいか決められない」「少ない額で分散投資をしたい」という個人投資家が検討したいのが「上場投資信託(ETF)」だ。個人投資家になじみの深い国内の株式指標にTOPIXがあるが、これに連動した上場投資信託とはどのようなものなのだろうか。
目次
上場投資信託とは?
上場投資信託は上場された投資信託のことで、一般的にETFと呼ばれている。上場投資信託を意味する「Exchange Traded Fund」の頭文字を取ったものだ。
投資対象としてまず思い浮かぶのは「株」だろうが、株は東証一部だけでも2,112社、二部が501社、マザーズ、JASDAQなども合わせると3,639社もある(2018年10月末時点)。これだけの数の会社から投資先を選ぶのは容易ではない 。
これだけある銘柄を見定める手間を省くため、銘柄の選定をプロに任せて投資できる商品が投資信託だ。少額でも分散投資ができるのがメリットだろう。
上場投資信託は、少額でも分散投資ができるという投資信託の良さを持ちつつ、リアルタイムで価格が変動しているため株と同じように売買できる。
特に指数連動型上場投資信託は、日経平均株価やTOPIXの動きに近い値動きとなるよう設計されているので、ニュースなどで情報が容易に得ることができ、取り組みやすい。株と同様に「信用取引」も可能なので、下げ相場でも利益を獲得することができる。信用取引のでは、「売り」から取引をスタートできる。価格が高い時点で売って、価格が下がったら買い戻せばその差額が利益になるのだ。
TOPIX連動型上場投資信託の概要
日本の主な株式指標には、「TOPIX」と「日経平均」がある。TOPIXとは、東証株価指数「Tokyo Stock Price Index」の略称で、東京証券取引所の第一部に上場するすべての日本企業を対象とする。TOPIXは、浮動株ベースの時価総額加重型で算出される指標だ。
時価総額加重型とは、構成銘柄の時価総額(株価×株式数)が一定時点の時価総額と比べたときの増減をみるものだ。TOPIXの場合、一定時点とは1968年1月4日を指す。この時の時価総額(8兆6,020億5,695万1,154円)を100とした場合に、現在の時価総額がどの程度かを表している 。
だた、時価総額加重型をベースにすると時価総額の大きい会社の影響を受けやすく、親会社あるいは創業家などの大株主が保有する流動性が低い株式も含まれる。そこで、売買を想定していない固定的株主の株式数を除いた、浮動株をベースにしている。
また算出対象銘柄の増減や増資など、市況変動によらない時価総額の増減が発生する場合は、連続性を維持するため基準時価総額を修正している 。TOPIX連動型上場投資信託は、このTOPIXの動きに近い値動きになるよう設計された上場投資信託である。
10月31日時点のTOPIXのポイントは「1646.12」なので、1968年から約16倍以上になっていることが分かる 。なお、具体的な構成銘柄や構成比は、日本取引所グループのホームページで公表されており、構成比では1位がトヨタ(3.4%)、2位が三菱UFJ(1.86%)、3位がソフトバンクグループ(1.85%)、4位がソニー(1.72%)、5位がNTT(1.41%)となっている(9月末現在) 。
TOPIXと日経平均の違い
TOPIXと同様に代表的な指標である日経平均株価は、日本経済新聞社が東証一部上場銘柄から225銘柄を選定し、5秒ごとに算出し公表するものだ 。日経平均株価は、ニュースなどで毎日公表されているため知名度が高い。
日経平均株価の組み入れ銘柄が225社であるのに対し、TOPIXは約2,000社もあり客観性が高いため、運用成績の評価尺度としてはTOPIXのほうがよく使われている。TOPIXと同様、日経平均株価の値に近くなるよう設計された、日経225連動型上場投資信託もある。
配当は受け取れる?
株式の場合、キャピタルゲイン以外に配当が受け取れるが、上場投資信託の場合はどうなるのだろうか。配当金は、権利確定日の時点で株式を所有している者に対して、当該会社から支払われる。上場投資信託の場合、投資している株式自体は運用会社が所有するもので、配当金も運用会社に支払われる。
ただし、その配当金は権利が確定した日に上場投資信託を保有している人に「分配金」として支払われる。したがって間接的にではあるが、上場投資信託を保有している人も配当金を得られるのだ。
実際にどのくらい分配金が支払われているのだろうか。野村アセットマネジメントの「TOPIX連動型上場投資信託」を例に挙げると、100口当たりの分配金の推移は次の通りである 。
決算日……分配金実績(税引前)
18年7月10日……3,050円
17年7月10日……2,600円
16年7月10日……2,730円
15年7月10日……2,300円
14年7月10日……2,060円
ちなみに、2017年10月30日時点の基準価格(100口)は166,243円だった。仮に来年度も同額の分配金が支払われるとすると、利回りは(3,050円÷166,243円)×100=1.83%になる。
TOPIX連動型上場投資信託の銘柄と購入方法
TOPIXに連動する上場投資信託は、ブル・ベア型を除くと、①「ダイワ上場投信-トピックス」、②「TOPIX連動型上場投資信託」、③上場インデックスファンドTOPIX」、④「MAXISトピックス上場投信」、⑤One ETF トピックス」、⑥「iシェアーズ TOPIX ETF」の6本がある 。
どれにするか迷った場合には、最低必要金額と信託報酬で決めるとよい。5万円投資したい場合に、最低必要金額が10万円のものは購入できない。最低必要金額をクリアできるものの中で、信託報酬ができるだけ安いものを選ぶようにするとよい。
「投資信託」は取り扱いのある証券会社等でしか購入できないが、東証に上場している上場投資信託は、ほとんどの証券会社で購入できる。
上場投資信託を購入、売却する場合には株式と同様に手数料がかかる。手数料の面では、対面型の証券会社よりもネット証券が優れている。10万円の売買をした場合の手数料を比較すると、SBI証券 と楽天証券 が97円、マネックス証券が108円 だ。
TOPIX連動型以外の指数連動型上場投資信託
TOPIX連動型以外の株式指数連動型上場投資信託としては、先ほど紹介したように日経平均株価に連動するものもある。国外の株価指数を対象としたものとしては、アメリカの「ダウ工業株30種平均(通称:NYダウ)」や「S&P500」、米国のベンチャー企業を対象にした「NASDAQ(National Association of Securities Dealers Automated Quotations)」などのETFがある。
ヨーロッパであれば、「ユーロ・ストック50指数」や「FTSE100」のETFもある。これら外国株の指標を対象としたETFは、海外の株式口座を開設する必要はなく、国内の口座で取引ができ、簡単かつ低い手数料で国際分散投資できる。
株式指標を対象にした上場投資信託には、指数の2倍価格が変動する「ブル型(レバレッジ型)ETF」もある。分散投資ではリスクは減少するものの、大きく値が動くわけではないことから、このような商品があるのだ。ブル型の商品であれば短期売買で利益を狙えるようになる。
逆に、対象となる指数と逆の動きをするETFもある。これを、「ベア型(インバース型)ETF」という。信用取引を行わなくても指標が下がれば下がるほど利益が出るのだ。さらに、指標に対して2倍価格が変動する「ダブルインバース型ETF」もある。
指数連動型以外にも様々なETFがある。例えば、不動産を対象にした「不動産投信信託(REIT)」、金、銀、プラチナ、原油、穀物などの現物資産の先物を対象とした「コモディティETF」などだ。金などは、他の相場が下落した場合に上昇する傾向がある。株式指標のETFに加えて金のETFを購入しておけば、リスクヘッジをすることができる。
上場投資信託の注意点
これまで、上場投資信託の良い点について説明してきたが、注意点もある。それは、「上場廃止」になるリスクだ。
会社の場合は倒産すると上場廃止になるように、上場投資信託もあまり売買されない場合、維持するのが困難になって上場廃止になることがある。上場廃止が決定すると「整理銘柄」に指定され、1ヵ月間は整理売買を行うことができる。この期間にほとんどは売られるので、価格が下がるリスクがある。
ただし、株の場合は倒産すると株は価値がなくなるが、上場投資信託の場合は投資先の会社は上場廃止後も存続しており、整理銘柄となってからも価格が大きく下がりにくい。また上場廃止となった後に払い戻しをしてもらえる。
とはいえ、上場廃止にならないに越したことはないだろう。投資する際は、Yahoo!ファイナンスなどで、上場投資信託の「預かり資産(純資産)」が十分あるか確認しよう。また、資産があっても流動性が低いとすぐに売却できないので、出来高などもチェックしておきたい。(ZUU online 編集部)
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