起業家の中には飲食店を開きたいと思っている人も多いだろう。飲食店の経営で、目標とすべき売上や利益について考える際に役立つものとして、飲食店特有の経営指標がある。本稿では、飲食店を経営する上で知っておきたい経営指標について紹介する。
売上を上げるとは、単価か数量を上げること
まずは、飲食店に限らず、どの業界であっても基本となる売上の分析方法を確認しておこう。それは、
売上=単価×数量
という公式だ。
例えば、100円ショップのような小売業で単価100円の商品が月間1万個売れたとすると、月額の売上高は100万円(100円×1万個)ということになる。これを逆に考えると、売上を上げるためには、単価か数量のどちらかを増やすしかない。
飲食店の場合、単価は客単価、数量は来店数として考えることが多い。つまり、お客さんが1人当たりいくらお金を使い、そのお客さんが何人店を訪れるかということである。客単価3,000円の居酒屋で月間1,000人の集客ができる場合を考えてみよう。この場合、1ヵ月の売上高は300万円(3,000円×1,000人)となる。
席数と回転数から客数は見えてくる
飲食店では客数を分析するのに席数と回転数をもとにするのが一般的だ。席数とは文字どおり、店舗に置かれている座席の数であり、回転数とは、座席が1日あたり何回転するかを示すものだ。例えば、席数が20席の店舗で1.5回転が見込めるなら、1日の客数は30人(20席×1.5回転)となる。
なお、席数は店舗の面積(坪数)との兼ね合いで決まる。1坪当たり2席が適している業態であれば、15坪の店舗に30席、20坪の店舗に40席を設置できることになる。
1坪当たり2席の店舗が客単価3,000円で1.5回転する場合、月間の坪売上は27万円(3,000円×2席×1.5回転×30日)となる。ちなみに、この数値はなかなか繁盛している部類と言っていいだろう。
原価率とFL比率
原価率というのは、売上に対して材料費などの原価がどの程度かかっているのかという指標だ。これは飲食店以外でも一般的に使われる用語である。
例えば、売上高100万円に対して、原価が65万円かかっている場合、原価率は65%(65万円÷100万円)ということになる。
また、飲食店では材料費と人件費の占める割合が大きく、管理上も重要である。そのため、FL比率という指標を用いて原価管理をすることがある。FL比率とは材料費(Food)と人件費(Labor)の比率という意味だ。
売上高100万円に対して、材料費が30万円、人件費が20万円かかっている場合、FLコストは、100万円に対する30万円と20万円で、合わせて50万円となる。FL比率は50%となる。
健全なFL比率の水準は?
一口に飲食店と言っても、手頃な定食屋から高級料亭までさまざまなタイプがある。当然、業態によって材料費や人件費の割合なども異なるだろう。
健全な経営を維持していくため、一般的にはFL比率は60%以下に抑えることが望ましい。なぜなら、店舗経営はFLコスト以外にもさまざまなコストがかかるからだ。これは例えば、店舗の賃料や水道光熱費などが挙げられるだろう。
また店舗の賃料も、できれば売上費の10%程度に抑えたい。坪売上が20万円の場合に、店舗賃料の坪単価が2万円であれば利益を確保できていたのに、坪単価が3万円近くになってくると利益を圧迫するという事態も考えられるからだ。
飲食店経営のための事業計画は慎重に
飲食店の開業計画を作るにあたっては、回転数を過大に見積もったり、食品ロスを見込んでいない材料費を想定したりするなど、楽観的な数値を出してしまう人も少なくない。そうなると実際に店を運営したところ、予想よりも利益が大幅に少なく、場合によっては店舗の存続も危ぶまれてしまうおそれも出てくるだろう。
このような事態に陥らないためには、まずは飲食店における経営指標をよく理解し、その上で、各経営指標の業界平均を調査することが役に立つと言える。飲食店は、店舗の新装や什器の購入などで投資規模が多くなりがちな業種だ。その分、できるだけ慎重に事業計画を立てて店舗運営に臨むことが大切である。