(本記事は、坂本彰氏の著書『給料は当然もらって、株で10万を1年で月収20万に!』ぱる出版、2018年12月11日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
都心部で成功する会社を一瞬で見抜く方法
上場企業の本社は東京に集中しておりますが、もちろん全国に名をとどろかす地方企業もたくさんあります。
家具販売のニトリ(9843)は北海道。家庭用ゲーム機を販売している任天堂(7974)やコンデンサーなどの電子部品大手の京セラ(6971)、小型モーターからスタートし、近年は自動車、産業用などの中~大型モーターへと展開を広げている日本電産(6594)など、オリジナル製品を扱う製造業は京都企業が多い印象があります。
小売外食業というくくりで上場企業をチェックしてみると、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に人口が集中しているため本社や創業地が東京という企業が多くなります。
投資先として選ばれやすい傾向がありますが、地方でもユニークな商品開発やサービスを提供しながら全国制覇を狙う企業もあります。
ここでは、都心部で躍進している企業について見ていきましょう。
小売外食業の出店戦略は様々あるのですが、大まかにわけると、東京や大阪など、人口が密集する大都市圏へ積極的に進出する企業。さらにその中でも、より人の集まる駅前や駅直結など集客力が高くなる一方、テナントの賃料が高い人気の一等地を狙うタイプがあります。
もう一つは大都市や駅前をあえて狙わず、国道のロードサイドや地方都市へ。立地についても駅前などの一等地を狙わず、賃料や土地代の安い1.5等地や2等地を出店場所に選ぶタイプです。
どの戦略も一長一短ありますが、いくつかの企業や同業他社を見比べていくと、大都市圏や駅前に出店した企業が大きく成長する傾向が多いようです。
●人口流入は商圏拡大のチャンス!
都市部への出店強化で成功している事例の一つがビックカメラ(3048)です。同社は家電量販店大手ですが、近年新規出店する店舗はどれもターミナル駅徒歩圏。もしくは駅直結というくらい出店地を駅前に絞り込んでいます。
東京にある有楽町店は駅の目の前にあります。池袋、渋谷、新宿店もターミナル駅前に店舗を構え、名古屋、京都店も駅からすぐです。そして、どの店舗も大型で品揃えが豊富にあります。
家電は価格競争が熾烈です。商品が同じであれば、価格が決定権の大半を占めてしまうからです。
そんな競争が続く中、ビックカメラは2012年にコジマを買収し業界2位に浮上。規模拡大による仕入れコスト削減を進めています。2013年度の純利益は24億3600万円でしたが、そこから4年後の2017年度には純利益が135億500万円まで拡大。株価も5年で4倍近くになっています。
好調なビックカメラとは逆に、地方での積極的な出店に舵を切り、上手くいっていない家電量販店がヤマダ電機(9831)になります。
業界最大手の同社ですが、特徴的なのが郊外での出店戦略です。1990年代後半から増資で調達した資金を元手に売り場面積3000平方メートル級の超大型店を積極出店。短期間で急成長を遂げ、2004年度に専門小売店として初の年商1兆円を突破しました。
大成功企業としてニュースでも頻繁に登場していた同社なのですが、近年ぱったり目にしません。
実は2014年以降、売上高が4期連続で減少を続けています。2018年度は売上高が前年比で増加に転じましたが、利益は逆に減益となっています。
筆者の家の近くにも、ヤマダ電機が2店舗オープンしました。一つは最寄り駅から車で5分ほど。もう一店舗は国道沿いの目立つ場所に建てましたが、どちらもうまくいってないようです。
最寄り駅のお店は地元の人でもあまり利用しない。オープンしたことすら気づかないような場所に出店していて驚きました。案の定、すぐにアウトレットを併設するようにリニューアルされていました。定期的に観察していますが、混雑しているのを見たことがありません。
もう一つの店舗はオープンから一年もたたずに閉店。気が付くとペンギンマークがおなじみのドンキホーテ(7532)が、新たなテナントとして入り、オープンしていました…。自分の実体験からも、上手くいっているようには感じません。
●「ちょい飲み需要」が大当たりの中華料理店
もう一つの事例が、中華料理店です。都心部出店で大成功している会社が中華食堂日高屋を経営するハイデイ日高(7611)です。同社も駅近、あるいは駅前の繁華街中心に新店舗を展開強化させています。
出店地域は埼玉、東京、千葉、神奈川がメイン。首都圏で最大600店(現在は400店ほど)の出店目標を立てておりますが、この戦略が大当たりします。
仕事帰りのサラリーマンのちょい飲み需要や、低価格ラーメンを軸にした単品料理やサイドメニューの充実により、大きく業績を伸ばしています。2012年度の純利益は16億2400万円でしたが、ここから6期連続で増収増益が続いています。株価は500円前後でしたが、2017年には3000円を超えるまで大化けしています。
同じ中華料理店でもハイデイ日高と真逆の結果となっているのが幸楽苑ホールディングス(7554)です。同社は車でしか行けないような郊外店舗かフードコート内での出店を中心とした経営をしていますが、業績は低迷を続け、2018年度は32億円以上もの大赤字となってしまいました。
50店近くの不採算店舗を閉鎖したことなどによる特別損失の発生が、赤字転落の要因です。幸楽苑はいきなりステーキを運営するペッパーフードサービスとフランチャイズ契約を結ぶという発表をしましたが、その翌日の株価は急騰。既存株主にとっては非常に悔しい出来事だったと思われます。
これほど厳しい事業の転換を迫られた要因の一つが、出店戦略のミスがあるでしょう。中華料理店の場合、アルコールを一緒に注文する人が多いはずですが、郊外店舗かフードコートのみのため、大半は車でしかいけません。
必然的に一定数の方が幸楽苑を選択肢から外すようになり、客離れが加速していきました。
以上、2つの事例を採り上げましたが、都心部へ舵をとった企業が成功し、地方を積極化した企業が衰退していく背景には、人口動態の変化があります。
総務省が7月11日に発表した住民基本台帳に基づく2018年1月1日時点での人口動態調査によると、日本の総人口は1億2520万9603人で、9年連続で減少となりました。人口増加となった場所は主に東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)と愛知県、沖縄県の計6都県のみでした。
この中でも東京圏は全人口の3割が集中しており、三大都市圏である東京(東京、神奈川、埼玉、千葉)、名古屋(愛知、三重、岐阜)、関西(大阪、京都、兵庫、奈良)の人口は6453万4346人。全人口の半分以上が11都府県、つまり全都道府県の約4分の1に集まっていることがわかります。
日本は人口減少社会に突入しておりますが、大きな趨勢に逆らったニーズに合わない戦略をとると厳しい結果が待ち受けているのです。