2018年に入ってシニア向けの投資信託が次々と新規設定されています。主なシニア向け投資信託の純資産は、野村ターゲットインカムファンド(野村アセットマネジメント)が555億円、ライフ・ジャーニー(三井住友アセットマネジメント)は202億円です。さらに、私の未来設計(三菱UFJ国際投信)は83億円(2018年秋時点)となっている。シニア向け投資信託は、他の投資信託と何が違うのでしょうか。シニア向け投資信託がここまで支持される理由を考えてみましょう。

分配金の回数の多さがシニア向け投資信託の特徴

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(写真=PIXTA)

一般の投資信託と、シニア向け投資信託の決定的な違いは「分配金の回数」です。一般的な投資信託の分配金の回数は年1回などが多い傾向ですが、シニア向け投資信託はそれよりも多い分配金の設定が可能です。一例を挙げると、次のようなものがあります。

・野村ターゲットインカムファンド(運用会社:野村アセットマネジメント)
・ライフ・ジャーニー(運用会社:三井住友アセットマネジメント)
・SBI世界高配当株プレミアムファンド(運用会社:SBIアセットマネジメント)

上記の分配回数(決算)を見ていくと、野村ターゲットインカムファンドは奇数月、ライフ・ジャーニーは、年2回または隔月を選択できる設定です。また、SBI世界高配当株プレミアムファンドは年2回または毎月分配型を選択できます。このほかにも、例えば一定額を運用すると、「24時間対応で電話健康相談が受けられる」といったサービスを提供しているシニア向け投資信託もあります。

しかし、このカテゴリの投資信託の購入モチベーションはやはり「分配金の回数が多いこと」に尽きるでしょう。

現役世代とまったく異なる中高年のニーズ

なぜ、「分配金の回数が多い」と中高年のニーズに応える投資信託になるのでしょうか。これは、リアルな年金生活をイメージすると分かりやすいです。例えば、2月、4月、6月……の偶数月には年金が支払われます。年金の支払いがない奇数月にシニア向け投資信託の分配金があれば、毎月通帳にお金が振り込まれて心理的に安心です。

現役世代からすると「毎月お金が振り込まれることがそんなに重要か」という意見もあるかもしれません。しかし、余力のあるなしに関わらず、2ヵ月に1回しか入金がないというのは心細いものです。仮に1ヵ月当たり35万円で生活している世帯であれば、2ヵ月の間に70万円近くが減ってしまいます。

金融資産の取り崩しを分配金でカバーする

シニア向け投資信託には、中高年のニーズに応える魅力がもうひとつあります。最近だと退職金を銀行に預けても金利はわずかです。千万単位のまとまった金額を預けたとしても、年金生活を豊かにすることはできません。シニア向け投資信託は、銀行預金をはるかに上回る利回りが期待できるため、年金生活へのプラス効果が期待できます。

例えば、「野村ターゲットインカムファンド」では、コスト控除後の利回りを年3%前後に設定しています。この3%前後という利回りには意味があります。野村アセットマネジメントと野村資本市場研究所の調査によると、シニア世代は金融資産の約3%を取り崩しながら生活を送っていることが分かりました。シニア向け投資信託で一定額を年3%で運用できれば、金融資産を取り崩す分の穴埋めが期待できるというわけです。

年金生活の現実と理想の間にあるシニア向け投資信託

2018年度前半、シニア向け投資信託の純資産額が順調に増えたことを考えると、このカテゴリが中高年の支持を受けていることがうかがえます。一方で、投資や金融商品に詳しい方々からは賛否両論の声も。否定意見として多いのは「利益が出た場合でも再投資を行わず、配当金に回す性格が強いことから長期投資に向かないのではないか?」という意見です。

本来、投資信託は、利益を再投資して雪だるま式に資産を増やしていく「複利効果」が魅力です。配当金を重視しすぎると投資効率が落ちるため、安定的な運用ができない可能性があると懸念されています。しかし、中高年世代の方は数十年先のリターンよりも、来月の老後生活を支えてくれることを金融商品に期待している方が多いのも事実でしょう。この現実と理想のどちらをとるかでシニア向け投資信託の評価は大きく変わってきそうです。(提供:Wealth Lounge


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