サウジアラビアのファリハ石油相は、原油の協調減産の決定がない限りホリデーシーズンから、来年の減産が始まるまで原油価格が落ち続けると考えていたかもしれない。しかし、ファリハ石油相は減産の決定後も落ち続けるとは予想していなかっただろう。

石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟産油国が12月7日のOPEC総会で、来年1月から6ヶ月にわたって日量120万バレルを減産することを決定した。

しかし、OPEC総会後の現在も原油価格は落ち続けている。

原油価格は2ヶ月で約40%下落

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(画像=Investing.com)

10月初旬ではWTI原油は約77ドル、 ブレント原油は約87ドルをつけ、4年ぶりの高値となっていた。

現在ではその最高値から40%以上下落しており、WTI原油は50ドルさえ割ってしまった。

過去4週間で3度目になる7%の下落が今週火曜日に起こった後、40ドル台を維持できるかが焦点になっている。40ドルを切ることになると、米シェールオイル過剰供給によって価格が低水準であった2016年の8月以来の安値となる。

米国、ロシア、サウジの供給過多

ニューヨークの50 Park Investmentsの創業者であるアダム・サーハン氏は、現在の過剰供給はシェールオイルだけではなく、記録的なサウジアラビアとロシアの生産水準にあるという。

世界経済低迷への懸念は原油市場への脅威だとサーハン氏は述べ、以下のように続けた。

「原油市場は40ドルを切る懸念により上昇が抑えられている。しかし、多くの人はシェールオイルの過剰供給による初めての危機の際、25ドル近くまで原油価格が落ちていたことを忘れているのではないか」

「続落が続くような現在の原油市場では、人々は良いニュースを無視し、下落の要因に集中するようになる。よって、私たちは30ドル台まで落ちることを想定している。しかし、そこまで落ちるには相応のファンダメンタル、テクニカル、世界経済の悪化が必要だろう」

このようなファンダメンタルの悪化は進行中である。米国の他、サウジやロシアで原油生産が増加しているのだ。

米国エネルギー情報局(EIA)の月曜日発表の月次レポートでは、米国のシェールオイルの主要7地区での生産は年末までに日量800万を超えると伝えている。米国はすでに世界一の原油生産国になっており、今年度のピークでは日量1170万バレル、2018年の平均産出量は日量1090万バレルとなっている。EIAは、原油生産量が2019年には平均日量1210万バレルになると予想している。これは今年と比べると日量120万バレルの増加であり、理論上はOPECの今後6ヶ月間減産するという計画を相殺してしまう。

ロイターは火曜日に、今月のロシアの原油生産量は日量1142万バレルにまで達したということを伝えた。また、サウジアラビアの原油輸出は、9月には日量743万3000バレルだったのに対して、10月には日量770万バレルに増えている。

リビアの国営石油会社(NOC)による日量38万5000バレルの生産停止が報道されている。また、ロシアのアレクサンドル・ノヴァクエネルギー相は、ロシアの石油企業の経営陣と水曜日に会談を予定しており、2019年第1四半期で日量22万8000バレルを減産する計画について話し合う。しかし、これらのポジティブなニュースも、米国、ロシア、サウジアラビアの原油生産によってかき消されている。

世界経済の停滞の恐れ

米国株式市場の不安定さや、中国の小売売上高の15年ぶりの低水準、不明瞭な英国のEU離脱が原油市場を左右している。

The Energy Management Institute社のDominick Chirichella氏は以下の様に語る。

「現在市場が弱気になっているだけでなく、投資家やファンドマネージャーによる世界経済が低迷し、原油需要が2019年に減少する予想が加速している」

しかし、原油にとって悪いニュースがなくても、下落は以下の2つの理由によって続く可能性がある。1. アルゴリズム取引が原油市場で再び台頭すること、2.ホリデーシーズンにより取引量が減ることである。アルゴ取引では、新たなテクニカル的な安値を模索し、出来高が少ない上で、下落の勢いを加速させる可能性がある。よって、結果的に「売りが売りを呼ぶ」状況になる。

アルゴ取引が市場を悪化させる

ノースカロライナ州のダーラムにある ICAP社のスコット・シェルトン氏は原油市場で買い手が不足しているという。

「これは大きな問題である、アルゴ取引では小さなロングによる勢いでも止めにかかり、弱気相場を形成しようとする。原油市場はこのような悪循環を続けると考えられ、2ヶ月(の下落のあとで)誰が買い手として残るかは私にとって疑問である」

ニューヨークのPSWインベストメンツのフィル・デイビス氏は、

「原油市場でトレードするのは狂気の沙汰だ。私はショートでもなくロングでもなく、ノーポジだ」

と述べており、さらに同氏はWTI原油が年末までに40ドルを試す可能性を指摘している。

「原油は次第に上昇する可能性が薄まっている。原油はファンダメンタルによって価格を安定させることに失敗している」

(提供:Investing.comより)

著者:バラーニ クリシュナン