SDGsやESG投資など、企業の評価軸が利益主体のものから、社会的インパクト主体へと変わってきている今、アメリカを中心に広がっている企業価値を表す認証制度があります。それが、「Bコープ」。グッドカンパニーの証として認知が進むBコープとは、どのような認証制度なのでしょうか?そして、なぜ今、各国の企業がこの認証を支持し、取得しているのでしょうか?

「相互依存」こそ良い企業のあり方

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(提供=J.ScoreStyle)

Bコープとは、アメリカ・ペンシルベニア州に拠点を置く、非営利団体B Labが運営している認証制度です。Bコープは、ビジネスにおける「成功」を再定義することを目的とし、「相互依存」というキーワードで良い会社のあり方を定義しています。

Bコープ認証取得の際に、Declaration of interdependence(相互依存宣言)が発せられます。この宣言書では、目的主導型で、株主だけでなくすべてのステークホルダーに利益をもたらす新しい企業のかたち=Bコープこそ、社会貢献を実現する力として企業の力を活用する、グローバル経済での企業のあり方としています。

株主の利益だけを追い求めるのではなく、従業員やその他のコミュニティ、環境や社会に対しても、等しく利益をもたらす事業活動を行っている企業を「成功している」企業であるとしています。そのため、一方的に労働力や資源を搾取して利益を生むのではなく、従業員の満足度を上げ、環境保全に取り組み、企業を長期的な成長へと導くという、互いにwin-winな関係を構築した相互依存型の企業、ソーシャル・グッド・カンパニーが、これからの経済をけん引していく主役となっていくことを目指しています。

そして、このビジョンに賛同し、事業活動を通じて、社会の課題を解決したい、貢献したいと望む企業が増加していることが、近年のBコープ認証の広がりへとつながっているのです。

アメリカから世界へ、スタートアップから大手企業へ。広がるBコープの波

2018年11月時点でBコープ認証をした企業や団体は、世界60ヵ国、2,600社以上に及びます。Bコープの取得数では、アメリカが群を抜いています。そこから中・南米、カナダ、オーストラリアと続き、フランス、イタリア、オランダなどのヨーロッパでも取得数を伸ばしています。

取得している企業や団体は、スタートアップやNPOが多く中小規模の企業が中心ですが、イギリスの出版社The Big Issue Groupや、オーストラリアのコンサルタント企業O’Connells OBM、カナダの老舗レストランSave On Meatsなど、業種の多様性が見られます。

はじめは小さく広まっていったBコープも、今では、グローバルに事業展開をする大手企業の取得も目立ってきています。環境保全や人権保護活動など、社会貢献活動に長年精力的に取り組んでいるアウトドア・アパレルブランドのパタゴニアや、アイスクリームのベン&ジェリーズ、ヨーグルトで有名なダノン、また、2018年にはアパレル大手のGAPもBコープを取得しました。

イギリスの航空会社ヴァージン・アトランティックの創設者で、現在は積極的なスタートアップへの投資家としても活動するRichard Bransonも、Bコープのビジョンに共感し、自身の運営する非営利団体The Team Bにおいても支持していくと表明するなど、新しいビジネスモデルのひとつとしても、Bコープの存在は大きくなってきています。

世界中のミレニアル世代が支持するBコープ

スタンフォード大学出身の2人の若者が、より企業が社会責任に重きを置ける経営、株主の利益ではなく公益を優先する企業を増やしたいという願いから辿り着いた、Bコープのアイディア。2人が掲げたビジョンは、20代半ば~30代後半に入ったミレニアル世代たちに大きく響いています。新規事業を立ち上げた若手起業家たちの多くが、Bコープを取得しています。

ミレニアル世代に共通する、自身の行動が社会に及ぼすインパクトへの敏感さは、自身が立ち上げた事業に対しても反映されています。社会や環境とのより良い形での共存を追及することも事業計画の一部となっているミレニアル起業家たちが増加したことも、Bコープの急速な世界規模での広がりを大きく後押ししているのです。そして自らの生活においても、社会や環境に対し良い影響を及ぼすことを大切にするため、Bコープ認証企業の商品やサービスを選びたいというニーズも高まっています。

すでにアメリカでは、証券会社や金融機関、各種ライフライン企業の認証取得も増えており、生活全体においてBコープを選択することが可能となっています。ミレニアル的企業経営と消費の両目線からのBコープへの支持と広がりはまだまだ続いていくでしょう。

Bコープは「良い会社」の世界共通認識に

現在、国内で認証を取得している企業は、神奈川県の石井造園株式会社や、群馬県のシルクウェーブ産業などを含む6社です。欧米の企業で広がりを続けるBコープ認証は、近い将来、世界共通認識の「良い企業」の証となるでしょう。

日本発のスタートアップは、社会貢献事業が事業計画に入っていないと海外からのスムーズな資金調達が難しくなるかもしれません。国内企業も、より有益で透明性の高い企業の社会的責任であるCSR活動を定期的に開示していかなければ、海外の機関投資家から厳しい言葉を受ける日が来る可能性もゼロではありません。

日本企業が世界レベルの檀上で生き残っていくためには、Bコープ認証にとどまらず、「企業の社会的責任」を考える必要があるでしょう。そして、消費者にとっても、購入する商品やサービスを提供している企業がどのような企業なのかを知り、社会的に良いインパクトを与える、賢い消費を選択する必要性もさらに増していくことになるはずです。(提供:J.Score Style

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