「地籍調査」という言葉をご存じでしょうか。一人ひとりに「戸籍」があるように、土地に関しても「地籍」があり、それまでの所有者の名前や売買の履歴など、現在までのいきさつや経緯のほかに土地そのものの「大きさ」が登記簿謄本に記載されています。今回はこの地籍の調査についてお伝えをします。

地籍調査の概要と目的

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(写真=Wolfilser/Shutterstock.com)

まずは、あらためて「地籍」とは何かを一緒に見ていきましょう。それぞれの土地(1筆)ごとに下記のような項目があります。

・地番
・地目(宅地・田・畑・山林など、土地の用途により分類)
・地積(その土地の面積)
・所有者
・これまでの所有者の変更履歴
・分筆などの履歴

これらが法務局に登記簿謄本として保存されています。土地に関する「戸籍」にあたるもので、誰でも入手・閲覧が可能でその土地の「地籍」を調べることが可能です。
つぎに、なぜ「地籍調査」を行うのかを解説します。法務局に全国の土地の情報が登記簿と一緒に図面や地図として保存されていることをご存じの方は多いのではないでしょうか。図面や地図については測量士や土地家屋調査士が確定測量を行ったものや公図なども保存されています。しかし、明治時代に行われた地租改正のときに作成されたものがそのまま残っているものも多い傾向です。そのため、境界や地積・地形などが現状とは異なっている場合が少なくありません。このような古い情報を修正し、現状の状態にそって登記をし直すために地籍調査が行われるのです。

あなたの土地にも地籍調査がやってくる?

調査は主に市区町村などの地方自治体が主体となって行われます。費用負担は国が半分、残りの半分を都道府県と地方自治体が負担するのですが、特別交付税の対象となり、実際に地方自治体が負担をするのは費用の約5%です。地籍調査にかかる費用を土地の所有者に負担を求めることはなく、費用がかからずに土地の境界確定を行えるメリットもあります。

地籍調査を行うことによって境界や地形が確定し、土地取引などがよりスムーズに行うことができるほか、相続財産としての評価額も明確になることは大きなメリットです。また、区画整理や再開発などのまちづくり事業も進めやすくなるほか、災害時の復旧作業も迅速に行えるようになります。ただ、この地籍調査は日本全体では約52%が終了しているのですが、都道府県によって進捗率がバラバラです。(2017年3月末時点)

東北・九州地方は進捗率が高いのですが、関東から近畿圏では低くなっており、また都市部や山間部の調査が進んでいません。逆に考えると都市部の調査はこれから行われることになり、お住いの場所によってはあなたの土地にも調査が入る可能性は十分にあるということです。それぞれの地域についてどのくらい地籍調査が進んでいるのかは、下記のサイトでも確認ができます。

国土交通省 地籍調査Webサイト 「地籍調査状況マップ」

土地の相続に影響する場合も

では、地籍調査を行うことで土地所有者にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。まずは、「縄伸び・縄縮み」が判明する可能性があるということです。「縄伸び」とは、登記簿謄本に記載された土地の面積より実際の面積のほうが大きいことを指します。「縄縮み」は、登記簿謄本の面積より実測の面積が小さいことです。

このようなことが起こる原因としては、記載されている面積が明治時代に行われた測量の内容のままになっている場合が多いからです。技術的な問題があったほか、意図的に登記簿上の面積を大きくして売却時の代金の増加を図ったり、逆に登記簿上の面積を小さくして税負担の軽減を図ったりしたということも考えられています。

縄伸びや縄縮みが明らかになった場合には、登記し直されることになり、これによって固定資産税の評価額のほか、相続財産としての評価額にも影響が出てくるのです。その評価額により税負担も増減することになります。もう一つは隣地との境界確定についてです。境界杭やブロック塀がある場合には双方の所有者と自治体の担当者などが一緒に確認をし、了承を得ながら境界を確定していきます。

しかし、杭がない場合や隣地との境界がはっきりしない場合、「ブロック塀の内側・外側のどちらが境界線か」など境界を確定するにあたり隣地の所有者と意見が分かれることもあるでしょう。境界線が確定できない土地は「筆界未定」として調査が終了しますが、その後に境界を確定する場合には所有者に調査費用の負担がかかるほか、不動産としての価値も下がります。

相続が発生した場合にも、その状態で次世代が引き継ぐことになりますので、できるだけ隣地との境界は確定させておいたほうがのちのトラブルも回避が期待できるでしょう。地籍調査を機に、所有している土地の地積や形状を確定させることができますが、前述のとおり、進捗率は2017年3月時点で約52%です。そのため、一度ご自身の土地について、境界はどのようになっているのかを確認されてみても良いかもしれません。(提供:相続MEMO

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