親から経済的な支援を受ける場合、扶養義務者からの生活資金ということでなければ贈与税がかかります。この贈与税を避けつつ、親から多額の資金援助を受けることができる制度の一つとして「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」というものがあります。給料頭打ちの現代、マイホームがほしい現役世代にとってはありがたい制度と言えますが、安易に使うと後々泣くことになりかねません。

住宅取得等資金の非課税制度とは

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(写真=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)

住宅取得等資金の非課税制度とは、子どもや孫が住宅を購入するための資金を親や祖父母から取得した場合、その資金援助については700万円(認定長期優良住宅の場合は1,200万円)まで贈与税が非課税になるというものです。(※)本制度を活用することで相続税対策になります。

また、贈与者が亡くなった場合、その亡くなる前の3年以内の贈与については相続財産に加味されるという「相続開始前3年以内の生前贈与加算」ルールも適用されません。これらメリットが大きいため、本制度を活用する方は非常に多いのが現状です。

※2019年4月1日以降一定期間、住宅の新築等にかかる消費税率が10%の場合、最大2,500万円(認定長期優良住宅の場合は最大3,000万円)まで非課税になります。

活用前に注意したいデメリット3つ

ただし、安易に使うとほかの税制上のメリットを享受できなくなる可能性があります。また、要件を厳格に守る必要があるため、うっかりミスをしてしまうと制度の適用を受けられず、全額暦年課税制度の対象となるおそれがあります。では、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

●贈与税0円でも贈与税の申告は必要
第一に注意したいのが「たとえ贈与税が0円であっても贈与税の申告はしなくてはならない」という点です。一般的に税務申告には「税額が発生したら税金の申告」というイメージがあると思います。しかし、現実の税務では「申告をしないとメリットは享受できない」というものが多々あるので注意が必要です。この住宅取得等資金の贈与税の非課税制度も例外ではありません。

たとえば、本制度を使って住宅取得等資金を親から600万円を受け取ることができたとします。この金額ならば、非課税枠の範囲内なので贈与税は0円です。ただし、本制度には「贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書と添付書類を提出した場合に限り適用する」という要件がついています。

申告しない場合には、通常の贈与税が課税されるだけでなく延滞税などペナルティも課されることになるので注意しましょう。

●相続の際の「小規模宅地等の特例」が使えない
相続税法においては「小規模宅地等の特例」という制度があります。この特例制度を活用すれば、自宅の持ち主と同居している配偶者や親族が持ち主の死亡後に自宅を引き継いだ場合、宅地の評価額が8割近く低くなるのです。1億円の宅地を相続した場合、相続税法上では2,000万円として評価されることになり、かなりの節税につながります。

一方、住宅取得等資金の非課税制度を活用するということは「親と別居する」ということを意味します。つまり、本制度を使うことを選択した時点で小規模宅地等の特例は使えないことになるのです。なお、この場合の対応策として以前は検討材料となっていたいわゆる「家なき子特例」も2018年度税制改正により厳格化され、一度でも持ち家を持ったことがあるなら小規模宅地等の特例は使うことができなくなりました。

●要件が厳しい
本制度はお金を受け取って申告をすればOKなわけではありません。新築・取得・増改築の建物要件のほか、次のような要件が求められます。

・受贈者が贈与を受けた年分の所得税にかかる合計所得金額が2,000万円以下であること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて新築等を行うこと
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その住宅に居住するか、同日以後遅滞なく居住すると確実に見込まれる状態にすること

なお、この制度の趣旨にそって住宅取得等資金を活用したかどうかは添付書類で明らかになります。要件を満たした活用ができるかどうかを事前にしっかりチェックしたほうがよいでしょう。(提供:相続MEMO

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