足元の米国の利上げがもたらすもの
足元の状況を見ると、米国経済のみが好調であり、政策金利を引き上げる、「利上げ」を何度も行っています。これが意味することは、「米国は不況が来たときの耐性が他国と比べ、大変強い」ということです。経済成長率の水準が高いうえに、政策金利を何度も引き上げてきたため、不況が来たときに引き下げる「金融緩和」の余地が大きいからです。
一方、米国以外のほとんどの国は、景気に減速感が出ています。しかし、これまで政策金利を上げることができていないため、金利の引き下げ余地が乏しく、「金融緩和」政策が使えません。また、国債の発行し過ぎですでに借金まみれのため、国のお金を使う財政出動も困難です。つまり多くの国は、世界的に不況が来たとしても、なす術がないということです。
1月4日のパウエルFRB議長の発言を受け、利上げの小休止もあり得るとの観測が出ておりますが、FRBはまだ米国経済は堅調であるとしており、利上げを止めるとは言っていません。しかし、景気を冷やし過ぎない程度に利上げをするというのは、簡単ではありません。過去ほとんどの場合、利上げをし過ぎて、最終的に景気が失速し、不況入りするのが通常パターンでした。筆者は今回も例外ではないと考えています。
このまま行けば、どこかの時点で世界的な不況入りは避けられず、そのとき、米国はダメージを被るものの、相対的には傷が浅く、その他の国は大打撃を受けて、結果的に米国経済の優位は強まると見ています。よく中国経済の規模が米国を上回るのは確実との見方が報じられていますが、筆者個人は、そう簡単に米中の逆転は起こらないと考えています。
長期投資は、景気のサイクルをいくつも超えるものであり、目先の動きに一喜一憂する必要はありませんが、どこの国が世界経済の中心として、覇権国として君臨するかは、長期的に重要です。その点で、これから1~2年の市場及び実体経済の動きに要注目です。
大澤 健吾(おおさわ けんご)
楽天証券 投資運用室 室長 チーフ・ストラテジスト
関西学院大学経済学部卒業。大和証券投資信託委託、日興コーディアル・アドバイザーズ(現・日興グローバルラップ)、横浜銀行などで、ファンドや銀行自己資金の運用に従事した後、現職。国際分散投資が専門で、ロボアドバイザー「楽ラップ」の運用責任者を務める。
(提供=トウシル)
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