注意点(3)株式分割による配当金の変動に注意
1株40円の配当金を出していた会社が1株を2株にする株式分割をすると同時に、配当金を1株20円に変更する……よくあるケースです。
単純に配当金の額の推移だけを見ると、40円が20円に減額されているため、投資対象としてはそぐわない、と勘違いをする恐れがあります。
でも実際は、1株で40円の配当が、2株で40円になっただけなので、トータルでもらえる配当金は変動ないのです。
もし株式分割と同時に、配当を1株当たり25円にしたのであれば、40円の配当が、25×2株=50円の配当になるわけですから、実質的には増配となります。
逆に5株を1株にする株式併合とともに、それまで1株10円だった配当金を50円にした場合は、配当金が5倍に増えたと同時に株式数も5分の1になるので実質的には何も変わりません。
過去の配当金の推移を確認するときには、配当金の額それ自体をみるだけではなく、株式分割や株式併合などによる影響も加味するようにしてください。
注意点(4)配当性向を確認する
筆者は配当金目的での株式投資はしませんが、もしするとしたら、銘柄選択の際に必ず確認するであろう指標があります。それが「配当性向」です。
配当性向は、利益のうちどのくらいの額を配当金に回しているかを表すもので、次の式により計算できます。
配当性向(%)=1株当たり配当金÷1株当たり当期純利益×100
例えば1株当たり当期純利益がいずれも100円のA社とB社があり、A社の1株当たり配当金が30円、B社の1株当たり配当金が90円とします。この場合、A社の配当性向は30%、B社の配当性向は90%です。
実は配当性向の高低で、業績の変化に対する配当金の減額リスクの大きさが分かります。同じ1株当たり当期純利益100円であるならば、そこから90円の配当金を出しているB社の方が良いのではないか、と考えがちですが、そうとも言えません。
A社は今後1株当たり利益が半分の50円になっても、これまで通り30円の配当金を出す余力があります。
一方B社は、1株当たり利益が半分の50円になると、今まで通り90円の配当金を出すためには剰余金(過去の利益の蓄積)からねん出しなければならないため、配当金が減らされるリスクが高くなります。
B社の今の株価は、90円という配当金が今後も期待できるという前提でついています。この配当金が減額となれば、株価も大きく値下がりしてしまう可能性が高いです。
配当金が高いかどうかを見るだけではなく、配当性向が高くないかを確認し、将来の利益減少に伴う配当金減額リスクを考慮するようにしてください。配当性向が高いほど、リスクが上昇すると押さえておきましょう。
なお、会社によっては配当政策を決める際、配当性向自体をある程度固定化しているものもあります。例えば「配当性向50%」という配当政策を掲げている会社の場合は、利益が半分になれば、配当金も半分になる、と思っておいた方がよいです。
それ以外にも、配当政策を明確に掲げているところは多いので、それを確認したうえで配当金の減額リスクが低そうな銘柄へ投資するようにしましょう。
足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。
(提供=トウシル)
【関連リンク トウシルより】
・【随時公開中!】みんなのふるさと納税☆活用術まとめ
・【優待名人・桐谷広人】超カンタン![桐谷式]株主優待のはじめ方と銘柄セレクト術
・【ムダな損を減らそう】投資で失敗しないために破ってはいけないルール
・【じぶん年金】iDeCo(イデコ)って何?節税メリットと注意点を総ざらい
・【なぜあなたは失敗するのか】投資で失敗しないためのルール。塩漬け株、行動心理学、お金が増えない人の共通点