資産運用では利益を出すことも大切ですが、大きな損失を出さないことも大切な要素のひとつです。市況によっては痛みを被るタイミングが必ずありますが、どれだけ損失を抑えられるかが投資や資産運用における最大のポイントとなります。そこで、行動経済学の4つの概念を基に、冷静に判断するための手がかりをお伝えします。

資産運用では行動経済学の知識があると有利?

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(提供=J.ScoreStyle)

資産運用に限らず、日常生活において何かを判断しようとするとき、十分な情報に基づいて合理的に物事を判断しているしょうか。行動経済学は、自分の判断基準がしばしば非合理的であることを教えてくれる希有な学問です。

近代経済学では、人間が経済合理性に基づいて行動すると仮定して、さまざまな経済事象を解き明かしてきました。例えば、同じ商品が店舗Aと店舗Bで売られており、Aでは100円、Bでは150円だったとします。この場合、「Aで購入する」というのが一般的な経済学の考え方です。

しかし、実際にはAではなくBで購入する人もいるでしょう。「その店の店主と長年の付き合いがあるから」「知り合いは皆Bで購入するから」など、さまざまな理由が考えられます。これは経済合理性だけでは説明がつきません。

こうした経済学の課題を埋めるように登場したのが、心理学や社会学の概念を取り込んだ行動経済学です。経済学が見落としがちな人間の「経済非合理性」を説明するべく、いくつもの概念や考え方を提示しています。

判断軸がいい加減? 参照点依存性とヒューリスティックス

人間は不正確あるいは不十分な根拠に基づいて物事を判断することがあります。これは参照点依存性とヒューリスティックスによるものです。

・参照点依存性

参照点(比較基準)に引きずられて物事を評価・判断する傾向があることをいいます。例えば、企業Aの株価が500円だったとします。これが一度400円に下がってから450円まで上がったとしても、「値上がりした!」「今が売りのチャンス!」と感じる人は少ないでしょう。これは、500円を評価基準としているために、450円では値上がりしたという感覚を持てないことによります。

・ヒューリスティックス

人間が判断するときに自然と用いている根拠や法則のことを指します。人間の脳で記憶できることは限られていますが、経験則や認知資源に基づき直観的に判断することができます。
例えば、投資判断をする際に経営者の見た目の良し悪しやメディアへの露出量、さらには勘など、客観的に考えれば企業の経営状態とはあまり関係のない部分のみを根拠とすることがあります。財務データや決算データ、業界動向などをすべて分析するのは困難なことから、手に入りやすくわかりやすい根拠に頼ってしまうというわけです。

群集心理?根拠のない自信?ハーディング現象と自信過剰バイアス

人は人と同じであることに安心感を覚えたり、または自分の考えに執着してしまうことがあります。これは、ハーディング現象と自信過剰バイアスによるものです。

・ハーディング現象

周りの人間と同じ行動をとることに安心感を抱き他人の行動に同調してしまうことをハーディング現象といいます。

例えば、大勢の人がある企業の株式に殺到しており、メディアでも企業を絶賛しているという状態を想定してください。この企業の株式にたいした価値がなかったとしても、合理的な行動を貫くのは難しいでしょう。それよりも、周囲の人に追随して買いに走った方が安心できるのではないでしょうか。これはハーディング現象にあたり、しばしばバブルを生み出す要因になると考えられています。

・自信過剰バイアス

また、自分の知識・経験・能力などにより意見に偏りが生じることがあります。この偏りが自信過剰バイアスです。自信過剰バイアスは、投資や資産運用の領域では大きな損失を招く原因にもなります。例えば、「自分には投資のセンスがある」「ここはリスクを取って勝負に出よう」「もう1回だけ買ってみよう」など、自分自身の判断に執着しすぎることで大失敗してしまうことがあります。

自分の頭で考えずに他人に従うことも、他人の意見を聞かずに自分だけで判断することも、どちらも同じように非合理的です。これらのことを覚えておくと、つい加熱しがちな資産運用や投資においても、冷静さを維持しやすくなるでしょう。

行動経済学は失敗のリスクを引き下げる

資産運用では情報収集が必要不可欠です。しかし、他人の意見に踊らされることなく、自分の頭で考えて納得してから行動に移す必要があります。その一方で、自分の考えに執着することなく、他人の意見に対して開かれている柔軟さも求められます。

現実的には、偏見や分析不足、群集心理などにより、資産運用で手痛い失敗を被る人もいます。行動経済学は、そうした人間の問題点に関する知識を提供してくれる学問です。行動経済学の仕組みを理解し、資産運用に役立てましょう。(提供:J.Score Style

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