前日の海外時間では、EU離脱期限の延期を協議している中で、日本時間21時30分頃に急遽閣議決定事項を説明するとのヘッドラインが飛び出し、23時45分に上院でのパウエル・FRB議長の半期議会証言前に一気にポンドに注目が集まりました。説明事項は大きく分けて3つです。1.遅くとも3/12までに、その時点での最終離脱案を採決、2.1の離脱案が否決される場合は、遅くとも13日に議会で「合意なき離脱」の是非を採決、3.2が否決された場合は、14日に従来の離脱予定日(3/29)の延長申請の是非を採決、但し、離脱日はEU議会改選に影響が出ないよう6月末を越えることなく、延長も1回限りとする、というものです。上記内容を受け、「合意なき離脱」の可能性が一気に低下したことから、ポンドは独歩高の動きとなりました。

短期延長という方針については、一部では長期延長にするべきとの声が挙りそうですが、3/29の「合意なき離脱」回避に向け、ここは全会一致で認めることになりそうです。長期延長については、欧州憲法裁判所の判断も示されておらず、長期延長になれば再国民投票も視野に入ってくるため、現時点では長期延長の可能性は低そうです。ポンドのボラティリティが再度高まる時期は、5月以降になりそうです。

本来は主役イベントであったものの、すっかり影が薄くなってしまったパウエル議長の半期議会証言では、「米経済見通しは良好だが、ここ数カ月にわたり相反する兆候も見られる」「政府の政策を巡る不透明感が強く、金融政策の変更には忍耐強くなれる」などと声明を出したものの、これまで報道された内容を繰り返す声明に徹したこともあり、マーケットへの影響は限定的になりました。本日は下院での証言となりますが、上院での発言内容にサプライズがなかったこともあり、注目度は一気に低下したと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

トランプ大統領がメキシコ国境の壁建設費用であるおよそ57億ドルを捻出するために発令した国家非常事態宣言を食い止めるために、米下院はトランプ米大統領の非常事態宣言を阻止する法案を可決しました。ただ、既に織り込み済みの内容であったため、影響は限定的となりました。米国側からの材料で注目度の高いイベントとしては、ハノイで行われる北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談でしょう。完全な非核化は難しいとみられるが、トランプ大統領は何らかの見返りをすでに用意しているとの報道もあるため、内容によってはリスクオンになり得るイベントになるでしょう。

ドル円については、111円維持どころか110.50円台でクローズを迎え、完全に110.20-80円のレンジに押し戻されています。これで111円では戻り売りの心理が働くため、以前ほどではないにしろ、ドル円の動きは引き続き鈍化するものと思われます。ただ、昨日のメイ英首相の声明により、最も懸念されていたリスクイベントが回避されそうなため、基本的にはリスクオンの動きになりそうです。ドル円の動きが限定的である以上、戦略的にはドル円以外のクロス円のロングが面白いのではないでしょうか。

ユーロドルは1.1390ドルで利食い、次の戦略はユーロポンド

1.1320ドルのユーロドルロング、目先のレジスタンスランを見ていた1.1380ドルを上抜けたものの、1.1400ドルの心理的節目が意識され、その後は膠着状態になっています。本格的に1.1400ドルを上抜けるには時間を要しそうなため、1.1390ドルで手仕舞、利益幅は70ポイントです。次の戦略としては、ボラティリティが急騰しているポンドでしょうか。特にユーロポンドが明確な下落トレンドを形成しており、急落した影響もあり一定の戻りも期待できそうです。戦略としては、0.8600-0.8620ポンドでの売り戦略、利食いについては、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。

海外時間からの流れ

前日、ポンドの動きについては、メイ英首相の『延期』明言待ちと寄稿しましたが、すぐさま『明言』に近い内容を公表したことで、ポンドは急騰しました。「合意なき離脱」を回避できればポンド買いという非常に歪な状況ではありましたが、延期示唆により本格的にポンドが上昇しました。ただ、延期はあくまで延期であり、根本的な解決は何一つされていない状況を鑑みると、ポンド上昇トレンドは短期的なものであり、その後はすぐさま下落トレンドになるのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、加・1月消費者物価指数、米・1月中古住宅販売保留指数、米・12月耐久財受注などの経済指標が予定されています。要人発言としては、パウエル・FRB議長 半期議会証言(下院)が注目されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。