前日の海外時間では、トランプ大統領が米朝首脳会談について「今回の会談は昨年の会談と同等かそれ以上のものだった」「明日記者会見を行う」などと発言したことにより、朝鮮半島非核化に向けた協議の進展などへの期待からリスクオンの動きとなりました。ドル円は再び111円を上抜ける水準である111.071円まで反発し、存在感の薄いイベントとも呼ばれていましたが、トランプ大統領としてはきっちり成果を残せた形となりました。また、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が「中国による追加購入だけでは通商交渉合意には不十分」と述べたことにより、ドル円は110.70円付近まで下落する場面があったものの、影響は限定的となりました。

本来であれば注目されなければならなかったパウエルFRB議長の下院での半期議会証言では、「我々は忍耐強く経済の進展を注視」「バランスシート計画について合意近い」などと発言したが、上院の時同様に今までの内容を繰り返したにすぎず、マーケットへ与えるインパクトはほぼ皆無でした。

『合意なき離脱』の可能性が一気に低下したポンドですが、昨日も引き続きポンド買いが主導し、ポンドドルでは2018年7月9日以来の1.3350ドルを示現し、ポンド円でも148円台を回復しており、2018年11月14日以来の高値を示現しました。既に織り込まれていた内容ではありますが、英議会では3月12日までに英国・EUの合意内容が議会で承認されなかった場合、「合意なき離脱」や「短期間の離脱延期」の賛否を議会に問う方針を賛成多数で可決したと本日早朝に発表されています。賞味期限が短いポンド買い材料ではありますが、短期的に大きく変われる材料になり得るため、現状はポンドロングが機能しそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英与党・保守党においてEU離脱派の代表格とも言えるリースモッグ議員が、アイルランド国境問題に関するバックストップに期限が設定されれば、英政府のEU離脱案を支持することも可能と発言しており、メイ英首相が離脱延期の可能性を示唆してから一気に流れがポンド買いに向かいつつあります。格付け会社のムーディーズは、報告書の中で合意なき離脱になり、不良債権が増加、利益が圧迫されたとしても、英国の銀行は持ちこたえられるとの見方を示しました。こちらは、EU離脱関連からは少し旗色が違いますが、英国経済の強さを示唆するものであり、引き続き目先はポンド買いが主導するのではないでしょうか。

トランプ大統領の元顧問弁護士であったマイケル・コーエン氏が、下院監視・政府改革委員会の公聴会で証言し、2016年の米大統領選中にウィキリークスがクリントン民主党候補に打撃を与える電子メールを暴露する計画について、トランプ大統領が把握していたことを明らかにしました。「トランプ氏は米国を率いていく願望も意思もなく、自分を売り込み、富と権力を膨らませることを欲しているだけだ」とも証言しており、影響は一時的であったものの、今後のドル売り材料として意識されるかもしれません。

ドイツ連銀のバイトマン総裁は、2018年の連銀年次報告書を公表した際に、今年のドイツ経済は引き続き低迷しており、成長率は潜在成長率の1.5%を大きく下回るだろうと発言しています。また、ECBは想定している利上げを延期する必要はないとの認識を示したものの、対ポンドでは大きく売られており、ポンド買いユーロ売りの動きは目先強まりそうです。

ユーロ売り、ポンド買いがより鮮明になってきた

0.8600-0.8620ポンドでの売り戦略が理想的ではありましたが、0.8600ポンドで上値が意識されたこともあり、0.8590ポンドでのショートです。利食いについては変わらず、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。

海外時間からの流れ

前日のタイトルが「145.80-146.20円でのポンド円ロング推奨」でしたが、何とか押し目買いと考えていたポイントには達しました。ポンド関連については、上昇基調が強まっていることはすぐにわかるのですが、難しいのが押し目買いの水準でしょうか。短期的にはポンド急騰が始める始点が押し目買いの目安になっていることが多いため、直近安値付近まで達した場合は押し目買いのポイントとして考えてもいいかもしれません。

今日の予定

本日は、米・第4四半期GDP(速報値)、米・新規失業保険申請件数、米・2月シカゴ購買部協会景気指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クラリダ・FRB副議長、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が注目されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。