相続税対策の際に気になるのが「土地や建物の評価はどうなるのか」という点です。相続税について「土地や建物の相続対策をしておきたい」という相談も多いようですが、肝心の評価方法や実際の節税方法を知らないと対策の取りようがありません。今回は、土地や建物の評価方法、そして節税対策についてお伝えします。
土地の評価方法には何がある?
土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。なお、この2種類の評価方法は相続税での資産評価だけでなく、贈与税での資産評価にも用います。
路線価方式
路線価方式は、道路ごとに付された1㎡あたりの路線価に、土地の面積を乗じて評価額を 算出する方法です。計算式としては次のようになります。
路線価×宅地面積(㎡)=評価額
実際には、土地の形や利用しやすさ、道路との接し方により調整を行うことになります。一般的に、複数の道路に接していると評価額は上がり、土地の奥行きが極端に長いもしくは短い、または土地と道路の接する部分が短いと評価額が下がる傾向にあります。
路線価は国税庁が毎年7月に発表する路線価図で見ることができます。国税庁のホームページでも確認できます。
倍率方式
市街地以外、路線価が定められていない地域における評価方法です。その宅地の固定資産税評価額に定められた倍率を乗じて評価額を算出します。計算式は次のようになります。
固定資産税評価額×倍率=評価額
ここでいう「固定資産税評価額」とは、市区町村(東京23区は都)の固定資産課税台帳に記された価格です。毎年4月に届く固定資産税・都市計画税納付通知書、もしくは各市区町村役場で固定資産評価証明書や名寄帳を交付してもらい、確認することが出来ます。。尚、固定資産税は各市区町村で管轄する地方税であるため、複数の自治体に不動産を所有する場合は、それぞれの市区町村役場の税務課等で確認する必要があります。
実際の評価倍率は国税庁のホームページで確認することができ、一般の土地等・大規模工業用地・ゴルフ場用地等といった区分ごとに設定されています。。
災害を受けた地域においては「調整率」で補正
限定的ではありますが、震災や風水害があった年においては、被害を受けた地域に関し、さらに評価額を低めに調整する「調整率」が設けられることがあります。
現在、2016年熊本地震により被災した地域と2018年7月豪雨により被災した地域については、「調整率」が設けられています。対象となる地域やそれぞれの調整率は国税庁のホームページで確認できます。
建物の評価方法には何がある?
建物はその敷地と区分して評価します。評価の際、「固定資産税評価額」を用います。固定資産税評価額は、先述の通り、固定資産税・都市計画税の納税通知書もしくは固定資産課税台帳等で確認でき、その目安は建築費用の50~70%程度です。
建物の評価額
居住用など、賃貸に供していない建物は次の計算式で評価します。
固定資産税評価額×1.0=評価額
万一、固定資産税評価額がわからない場合には
固定資産税評価額がわからない場合もあります。地主が借地人から建物と借地権を同時に買い取った場合で、所有権の名義がいまだ借地人のままであり、借地人が行方不明になっている場合などです。建物が老朽化していて評価額が低ければ固定資産税の納税通知書も届きません。
この場合は、自分が登記上の所有者ではなくても実質的な所有者であることを建物の売買契約書などで示し、市区町村役場等で固定資産税評価額を教えてもらうことが必要となります。
評価額が下がる場合
相続税対策として気になるのが「どうしたら評価額が下がるのか」という点です。相続税は資産の評価額で決まる部分が大きいからです。次のような場合には、評価額が下がります。
借地権が設定されている場合(土地)
他人に土地を貸している場合、あるいは他人から土地を借りている場合、通常「借地権」が設定されています。借地権が設定された土地は自由に売却などができないため、自用地よりも評価が下がります。
土地が居住用や事業用に供されている場合(土地)
土地がその土地の持ち主の居住用や事業用、賃貸借などに供されている場合には、「小規模宅地等の特例」により、評価額を50~80%下げることができます。ただし、一定の要件を満たすことが前提になります。
賃貸などに供している場合の評価額(建物)
アパートやマンション、貸家など、建物を他人に貸している場合には、借りている人の借家権を配慮した上での評価となります。計算式は次のようになります。
固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)=評価額
借家権割合は全国一律で30%です。また、賃貸割合は賃貸している部分の床面積の比率で計算します。
節税を検討するならば、まず自己所有の土地や建物の評価額を知ること、そしてその土地や建物が賃貸借の対象や被災地に該当する地域に存在する不動産に該当するのではないかなど、要件を細かく調べていくことが重要です。(提供:相続MEMO)
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