前日の海外時間では、米朝首脳会談の合意見送りを受けて、一時ドル円は110.666円まで下落しました。ただ、米・第4四半期GDP(速報値)が市場予想+2.2%に対し+2.6%、米・第4四半期GDP価格指数(速報値)が市場予想+1.7%に対して+1.8%、米・第4四半期コアPCE(速報値)が市場予想+1.6%に対して+1.7%と総じて強い結果となり、ドル円は上値を拡大しました。一時111.490円まで上昇し、本日の東京時間においても底堅い動きを継続しています。また、シカゴ購買部協会景気指数が64.7と予想の57.5を上回ったことも相場の支援材料になったと考えられます。

米朝首脳会談の非核化が合意できなかったこと、トランプ大統領の顧問だったコーエン元弁護士の証言などがドル売り材料として意識されているものの、それ以上に米中通商協議の期待感が強いことでドル買いが強まっています。昨年末からFRBでは利上げサイクルの鈍化が示唆されてきましたが、鈍化されるかどうかは同時に経済指標次第という側面も持ち合わせています。昨日のGDPのように再び利上げ期待が強まるような材料については、素直にドル買いで反応することが確認できたと考えています。ただ、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が本日付の日経新聞にて「日米通商交渉で為替条項も対象に加えたい意向」と報道されており、ドル円の上値を抑える材料として意識されるかもしれません。中韓も米国との交渉で為替条項を入れていることを考えると、日本も同様の条件が課される可能性は高そうです。

ポンドについては、引き続き「合意なき離脱」回避の可能性が高まったことが好感されているものの、ユースティス・英農業・食糧・海洋環境担当相がメイ英首相のEU離脱延期を容認する姿勢に反対し辞任するなど、分かっていたことではありますが、方針転換による離党者が出てきています。離党報道により、ポンドドルでは1.3310ドル付近から1.3260ドル付近まで下落する動きがあったものの、直近高値圏からの下落であることを考えると、利食い主導である可能性が高く、今後の影響についても、限定的であると考えた方がよさそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

米中通商協議については、3月半ばにトランプ大統領と習近平国家主席が会談する可能性がある事や、最終的な合意案をまとめているといった報道が相次いでおり、満額回答とまではいかないまでも、市場の事前期待には十分応えられる内容だったと考えられます。ただ、開催前から存在感が薄かった米朝首脳会談では、進展らしい進展は見られませんでしたが、米中通商協議のプラスと米朝首脳会談のマイナスが一緒になっても、総体的にはプラスの材料が強まった形でしょうか。こうなってくると、日米通商協議が一層注目度を集めるイベントになりそうです。

日米両政府がTAG(物品貿易協定)締結に向けた初会合を、4月に行う方向で調整していると報じられています。本来の趣旨としては、米国による自動車への追加関税の発動を避けられるかどうかという点でしたが、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が「日米通商交渉で為替条項も対象に加えたい意向」との見解を持っていることにより、米中通商協議とは違い、現段階はリスクイベントとして捉えられそうです。米国が日本から輸入する自動車・同部品への高関税賦課の問題では、昨年の日米首脳会談では、日米の交渉中には米国が安全保障を理由に追加関税を課さないことなどで合意しました。ただ、これは「交渉中は」という条件付きで、交渉の結果、高関税を賦課することまでを否定されておりません。メキシコとカナダとの間で提携された新NAFTAや新しい米韓協定で、輸出数量規制の文言が入ったこともあり、米中通商協議が近づくにつれリスクオンになっていった展開とは真逆の動きが強まるかもしれません。

マイナス材料がでても、ポンドの基調は目先衰えない想定

ユースティス・英農業・食糧・海洋環境担当相の辞任の影響で、ユーロ買いポンド売りの動きが強まりましたが、レジスタンスラインである0.8600ポンド手前ではしっかりと上値を抑えられていることから、テクニカル的には機能していると考えられます。ほぼ持ち値付近まで戻ってしまいましたが、0.8590ポンドでのショート、利食いについては変わらず、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。

海外時間からの流れ

短期的にはポンド急騰が始める始点が押し目買いの目安になっていることが多いため、ポンド円の押し目買いのポイントとしては、147.20円付近だと考えています。ボラティリティが上がっているため、押し目買いのポイントが一段と難しくなっていますが、成行以外の取引であれば147.20円付近が重要な水準となりそうです。

今日の予定

本日は、独・雇用統計、英・2月製造業PMI、ユーロ圏・2月消費者物価指数(速報値)、米・12月PCEコア・デフレータ、米・1月ミシガン大学消費者信頼感指数、米・2月ISM製造業景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が注目されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。