前週末の海外時間では、ドル円は112円が意識される動きとなりましたが、米・12月個人所得/米・12月個人支出、米・2月ISM製造業景況指数が市場予想よりも悪化したことを受け、111.90円付近から111.60円台まで下落しました。ただ、大きくドル売りに傾ける材料がなく、且つ、月初のLDNFIXでドル買いフローがでたことをきっかけに、ドル円は112円台を示現し、昨年12/20以来の112.073円まで上値を拡大しました。

WSJ(ウォールストリートジャーナル)紙が「米中は通商合意の決着に近づいている」と報じたことを受けて、本日のオセアニア時間では豪ドル買いが主導しています。今週は明日(5日)から 中国で全国人民代表大会が開幕します。予想以上の景気対策が発表されるかもしれないとの期待感もあり、中国絡みで豪ドルは買われている可能性があります。株価が堅調に推移していることもあり、経済指標でネガティブサプライズがない以上は、一定の底堅さは維持するものと考えらえます。

ポンドについては、バルニエ英EU離脱・欧州委員会首席交渉官が「アイルランドを巡るバックストップ措置のさらなる保証を提供する用意がある」と述べたことを背景に週明けは買われる展開となっています。同氏は「一時的な措置に過ぎない」とも述べていることもあり、それほど大きな影響は与えていないものの、一時ポンド円は148.20円付近まで上値を拡大しています。現状ポンドを支えている材料としては、「合意なき離脱」が回避できそうだという一点です。英・2月製造業PMIは52.0まで落ち込み、昨年6月の国民投票以降では2番目に低い水準になっています。目先ポンドは上昇しそうですが、本来であれば売り材料の方が強いということは認識しておいた方がよさそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長との2回目の首脳会談は非核化について折り合わず、結局、会議の席を立つような結果で終了しました。金正恩委員長は経済制裁の緩和という実を得られず、トランプ大統領も会談前の明確な成果という点においては、完全に空振りという内容になりました。こうなってくると、今月にも開催される日米通商協議が注目されそうです。米通商代表部(USTR)は、議会に提出した通商政策の年次報告書で、「米政府は国内の労働者や輸出企業にさらなる機会をもたらすため、日本、欧州連合(EU)、英国との新たな貿易交渉に乗り出す」ことを表明しました。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、今週6日にマルムストローム欧州委員(通商担当)と会談し、欧米通商協議を開始しまし。トランプ大統領は、EUと貿易交渉で合意できなければ、自動車に関税を課すと警告しており、こちらの結果が日米通商協議にも影響を及ぼしそうです。日米通商協議では、「日本を含むアジア各国で『為替』の問題がある」と牽制しており、韓国、カナダ、メキシコ、中国に対して通貨安を『為替条項』で牽制したように、日本に対しても「為替条項」が導入される可能性が高まりつつある。この点が意識されてくれば、否が応でも円買いの動きが強まるものと考えられます。

今週は、ECB理事会が予定されており、注目されそうです。焦点としては、経済見通しの下方修正がどの程度されるのかどうか、貸出条件付きの流動性供給オペ(TLTRO)第3弾の導入がいつになるのか、という二点が注目されそうです。ECBは フォワードガイダンスでは2019年の『夏頃』まで政策金利を据え置くとしてきましたが、欧州経済の悪化状況を鑑みると、「2019年を通して」据え置くとの表現に変更する可能性がありそうです。ユーロの利上げ目途は遠のいたとの内容を公表するものと思われますが、不条理な利上げが必ずしも通貨高に結び付くとは限らないため、ユーロの動きは引き続き流動的になりそうです。

マイナス材料がでても、ポンドの基調は目先衰えない想定

ポンドにとってプラスマイナスどちらの材料も出てきていますが、ユーロポンドについては0.8590ポンド付近中心の推移になっています。上値の重さは確認できるるものの、下値の底堅さも確認できる、ポンド主体で考えていましたが、動意付けのきっかけは案外ユーロなのかもしれません。今週のECB理事会がユーロ売りの材料として考えられている以上は、ユーロポンドについてはショート戦略で一旦は問題なさそうです。0.8590ポンドでのショート、利食いについては変わらず、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。

海外時間からの流れ

一部では、米中両国は通商合意に近づいており、合意に至れば、中国が知的財産権の保護強化や米製品の大量購入など公約を履行した場合に限り、米国が昨年から課している対中関税の全てか大半が撤回される可能性が強いと報じられています。また、米中首脳会談が3月27日前後に開かれる可能性を示唆しており、基本的には株高に傾きやすい地合いになるのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、トルコ・2月消費者物価指数、英・2月建設業PMIなどの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。