前日については、米中通商協議の期待感は依然として強いものの、なかなか明確な声明が出ない中、本日5日より全国人民代表大会が開催されることで、目先の調整の意味合いもあり、株価下落の動きを受け、ドル円を筆頭としたクロス円の上値も重くなりました。また、普段であればあまり注目されない米・12月建設支出が市場予想+0.2%に対して-0.6%となったことも、ポジション調整の丁度いい切っ掛けと捉えられた可能性があります。
注目の全国人民代表大会では、中国政府は2019年のGDP成長率目標を6.0-6.5%、同CPI目標を約3%上昇に設定しました。また、19年は2兆元規模の減税・社会保障料の引き下げを計画していると発表しました。GDP成長率目標については、従来の6.0%から小幅に低下した数字となります。また、李中国首相は「中国人民元は、合理的均衡水準で基本的な安定を維持」、「財政政策、大規模な刺激策はとらない」との声明を出しており、マーケットが期待したような刺激策は出てこないかもしれません。
本日の東京時間に発表された豪・第4四半期経常収支は、92.0億豪ドルの赤字予想が72.0億豪ドルの赤字となったものの、中国・2月Caixinサービス業PMIについては市場予想53.5に対して51.1となり、1月の53.6から大幅に悪化しました。1日に発表された2月Caixin製造業PMIは49.9となり、1月の48.3からの改善となったことで一旦豪ドルの買い戻しが入りやすい地合いになっていましたが、豪ドルについては、再び売られやすい地合いになってきていると考えられそうです。
今後の見通し
全国人民代表大会において、中国がどのような景気刺激策を展開するのかが注目されますが、もう一方で英国のEU離脱案についても、そろそろマーケットが意識せざるを得ない状況になりつつあります。アイルランドのサンデー・インディペンデント紙が同国の匿名の閣僚発言とした記事によると、同国のバラッカー首相は英国のEU離脱が6月に延期される可能性が極めて高いとの見方を閣僚らに伝えたと報じられています。
メイ英首相は、EU離脱の修正案を早期に用意し、3月12日までに議会に採決を行う予定だと考えられます。ただ、議会で否決された場合においても、3月13日に予定通り3月29日に合意なき離脱を選ぶかどうかについて議会採決を行うと考えられますが、「合意なき離脱」への道を選択する可能性は極めて低いと考えらえます。「合意なき離脱」が否決された場合、メイ政権は3月14日に離脱延期の提案を出すと考えられます。離脱期限の延長はEU加盟の27ヵ国の承認が必要であり、3月21-22日に開催されるEU首脳会議で審議される可能性が高く、ポンドへの注目は一旦ここで落ち着きを取り戻すのではないでしょうか。それまでは一喜一憂する動きとなりそうですが、引き続き、「合意なき離脱」を回避=ポンド買いという動きは目先は継続するのではないでしょうか。
3月1日の米法定債務上限の適用停止期限は、ムニューシン米財務長官が、特別債務措置により一時停止の6月5日までの先送りを発表しており、目先の懸念材料ではなくなりました。ドル円が112円台を安定して維持するには、27日頃に予定されている米中首脳会談で最終合意に到達することが必須になりそうです。全人代での習中国国家主席の発言でネガティブサプライズがあるとは考えにくいですが、トランプ大統領が署名するまでは、本格的なリスクオンにはなりづらいでしょう。
ECB理事会までは我慢
ポンドにとってプラスマイナスどちらの材料も出てきていますが、ユーロポンドについては0.8590ポンド付近中心の推移になっています。上値の重さは確認できるものの、下値の底堅さも確認できる状況です。今週のECB理事会がユーロ売りのイベントとして考えているため、ユーロポンドについては、ここは我慢です。0.8590ポンドでのショート、利食いについては変わらず、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。
海外時間からの流れ
全国人民代表大会、米中通商協議が注目材料として捉えられていますが、前日の海外時間にトランプ大統領のロシア疑惑に関して、米下院の3委員会がトランプ大統領に対して、プーチン露大統領との会話内容の詳細を文章として提出する事を要請したと報じられています。為替材料になりそうでならなかった同問題、米中通商協議後には、フォーカスされる可能性は考慮しておいた方がいいかもしれません。
今日の予定
本日は、英・2月サービス業PMI、米・2月ISM非製造業景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、カーニー・英中銀総裁の議会証言、バーキン・リッチモンド連銀総裁の講演が注目されそうです。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。