前日の海外時間では、コックス英法務長官とバルニエ欧州委員会首席交渉官の会談において、事態打開は見込まれないとの報道により、ポンド売りが強まる場面がありました。6日に再開される見通しですが、5日の会談では結局合意には至りませんでした。また、英労働党のジョン・マクドネル議員が「メイ英首相のEU離脱案を支持する労働党議員は多くない」と述べたことも、よりポンド売りを強めた要因だと考えらえます。カーニー・英中銀総裁が「市場の金利見通しは十分に上昇していない」と発言したことでポンドのショートカバーが入ったものの、進捗のないEU離脱案については、マーケットも徐々に苛立ちを覚えている可能性があります。

ドル円については、主要経済指標前には前日安値である111.726円まで値を下げたものの、米・2月ISM非製造業景況指数が市場予想57.4に対して59.7、事前に米・12月新築住宅販売件数が市場予想60.0万件に対して62.1万件であったこと加味され、ドル円は一時112.134円を示現し、昨年12月20日以来の水準まで上値を拡大しました。ただ、112円台では依然として戻り売り基調が強いこともあり、その後はクローズに向けじりじりと下落する動きとなりました。引き続き112円台では戻り売り基調が強まるようであれば、同水準は戻り売りポイントとして意識されそうです。

米中通商協議に関しては、米国側と中国側から進展しているとの言及が報じられており、27日頃に予定されている米中首脳会談で最終合意に到達するとの期待感が高まっているものの、ポンペオ米国務長官は、米中通商合意が満足のいく内容にならなければ、トランプ大統領に受け入れる意向はないと述べていることが分かり、トランプ大統領の「合意内容が適切でなければ協議を決裂させる」という内容が多少現実味を帯びてきています。基本はリスク選好イベントではありますが、従来のようにリスク選好一辺倒という流れではなくなったと考えていいのかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日の東京時間に発表された豪・第4四半期GDP(前期比/前年比)については、市場予想+0.3%/+2.6%に対して+0.2%/+2.3%と大幅な悪化となり、豪ドル売りが強まりました。本日早朝にロウ・RBA総裁が「今年利上げを行うシナリオは考えにくい」と発言した時は影響は限定的ではありましたが、豪州の大幅な経済指標の悪化を受け、改めてロウ・RBA総裁の発言が意識されたものと考えられます。

ユーロについては、フランス・ドイツ、そしてユーロ圏の2月サービス部門PMI改定値が予想・速報値を上回ったことで一時1.13385ドルまで上昇したものの、もう一段高となる材料がないため、断続的なユーロ買いには繋がりませんでした。ただ、独DAXが軟調に推移したことや、ECBが7日の理事会で利上げ先送りを示唆することや、長期資金供給オペ(TLTRO)を近く発表するのではないかとの思惑もあり、上値は限定的になりました。この動きは、ECB理事会までは継続するものと思われます。

中国の全国人民代表大会が開幕し、さっそく李克強首相は政府活動報告の中で2019年の経済成長目標を今年の「6.5%前後」から「6.0~6.5%」にすると述べ、前年から成長目標を引き下げました。中国の景気刺激策が注目されていましたが、早速出鼻をくじかれた状況になっているため、全国人民代表大会からのリスク選好という流れについては、あまり期待しない方がいいかもしれません。

引き続き、ECB理事会までは我慢

ポンドにとってプラスマイナスどちらの材料も出てきていますが、ユーロポンドについては0.8590ポンド付近中心の推移になっています。上値の重さは確認できるものの、下値の底堅さも確認できる状況です。今週のECB理事会がユーロ売りのイベントとして考えているため、ユーロポンドについては、ここは我慢です。0.8590ポンドでのショート、利食いについては変わらず、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。

海外時間からの流れ

ポンドの動きにおいて、やや変化が出てきたものと考えられます。直近の動きとしては、「合意なき離脱」が回避できる『可能性』を示唆すればシンプルにポンド買いになっていましたが、ある程度材料出尽くし感と進捗状況がさほど変わらないことへの懸念もあり、従来通りの報道ではポンド買いになりづらくなっています。既に、マーケットが「合意なき離脱」は回避濃厚、そして交渉延長を織り込みつつあるため、EU離脱案に具体的な進捗がないとポンドを積極的に買い進める動きは限定的になるのではないでしょうか。 また、豪ドルについては、米金融大手JPモルガンが、7月と8月の豪中銀による利下げ予想を示したため、引き続き豪ドルの上値は重くなると考えられます。

今日の予定

本日は、トルコ中銀(TCMB)政策金利発表、米・2月ADP民間雇用者数、米・12月貿易収支、米・ベージュブック(地区連銀経済報告)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、カンリフ・英中銀(BOE)副総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁、サンダーズ・MPC委員の講演が注目されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。