準確定申告をすると、人によっては税金が還付されることがあります。申告をした相続人が戸惑うのは「この還付された税金をどう取り扱ったらいいのか」です。還付された税金は、相続税の課税対象になるのでしょうか。
準確定申告をすると税金が還付されることがある
準確定申告とは、亡くなった人の確定申告のことです。亡くなった年度の1月1日から亡くなる日までに得た所得について確定申告が必要な場合があります。準確定申告をすると、所得税が還付されることがあり、おおよそ次のような場合です。
- 事業所得や不動産所得が生じる事業を営んでいた被相続人(亡くなった人)が生前予定納税を行っていた場合
- 給与所得や雑所得などで被相続人が所得税を源泉徴収されていた場合
つまり、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの間に発生した所得について、天引きあるいは納付した所得税があった場合、税金が還付されるケースがあるということです。逆にいうと、天引きされていない所得税がなければ還付もありません。
還付された税金の取り扱いは種類によって異なる
ここで戸惑うのが「還付された税金は相続財産になるのか」ということです。「被相続人における生前の所得税の確定申告で生じたものだから相続財産では?」「被相続人が亡くなった後に発生したものだから相続税の課税対象にはならないのでは?」など、疑問が沸き起こってきます。ここで考え方のカギとなるのが「その還付される税金は何なのか」という点です。
還付される税金といっても、実際には2種類あります。「還付金」と「還付加算金」です。次のように、それぞれ扱いが異なります。
還付金は相続財産
還付金は、相続財産に該当します。なぜなら、還付金自体の発生源となる所得は被相続人に帰属するからです。還付金は、納め過ぎた税金そのものを納税者に返したときのお金です。借金にたとえるなら「元本」に相当します。その元本の発生源は被相続人の生前の努力による所得です。また、還付金を受け取るには還付請求という手続きが必要になります。
このときの「請求する権利」は、あくまでも、その所得を生み出した被相続人に帰属するものであり、本来はその相続人たちに請求する権利はないのです。したがって、還付金は相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。
還付加算金は対象外
還付加算金は、還付金と異なり、相続財産に含まれません。還付加算金は、納め過ぎた税金(還付金)の納付期限日などの翌日から還付金の支払い決定までの日数に応じて加算される金額です。借金でいうならば「利息」にあたります。この還付加算金は、相続人たちによる準確定申告の提出によりはじめて発生するものであり、被相続人の生前の努力である所得から発生したものではありません。
また、還付加算金は、相続人が相続により取得したものとは認められていません。したがって、還付加算金は相続財産にならず、相続税の課税対象ともなりません。かわりに、還付金請求をした相続人の所得(雑所得)となり、所得税の課税対象となります。
還付金の受け取り方
還付金の受け取り方には2種類あります。各相続人が受け取る方法と、相続人の代表者が一括して受け取る方法です。
各相続人が受け取る方法
各相続人が還付金を受け取る場合には、準確定申告に氏名や住所、被相続人との続柄や各相続人の情報を記載した「確定申告書付表」を添付しなくてはなりません。この確定申告書付表に、相続分ごとの還付金学や還付先の金融機関名や口座情報を記入します。なお、準確定申告は原則として相続人全員が共同で行うこととなっています。そのため、この付表には相続人全員の連署が必要です。
相続人の代表者が一括して受け取る方法
上記以外に、相続人の代表者が一括して受け取る方法も認められています。ただ、この取り扱いは特例的なものであるため、他の相続人全員からの委任状を作成し、準確定申告書に添付しなくてはなりません。特に決まった様式はありませんが、記載すべき事項は次のようになります。
- 被相続人の氏名・住所
- 還付金を受け取る相続人代表者の氏名・住所・電話番号
- 委任する相続人全員の氏名・住所と押印
- 準確定申告の還付金及び還付加算金の受け取りを相続人代表者に委任する旨の文言
なお、大阪国税局から準確定申告の委任状の様式もあります。こちらを活用してもよいでしょう。
住民税は対象外
なお、準確定申告で還付金が還付されても住民税では還付がされません。なぜなら、所得税と住民税で課税の考え方が異なるからです。人が亡くなった場合、所得税は、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得に対し申告・納付の義務が発生します。一方、住民税は、亡くなった年の所得には課税しません。
住民税では、その年の1月1日から12月31日の間の所得に課税しますが、課税するかどうかの判断は「翌年1月1日にその自治体に住所があるかどうか」で行うのです。たとえば、2018年8月1日に亡くなったとします。確かに2018年1月1日から8月1日まで所得が発生しているのですが、課税判断基準となる2019年1月1日には、すでに亡くなっています。
課税判断の基準となるタイミングでは住所がないため、住民税は課されないのです。準確定申告は、相続税の申告に比べて一般的な認識が低くなりがちです。ましてや、その還付金が「相続財産になるか」などの取り扱いは多くの人が戸惑うところとなります。そのため、あらかじめ準確定申告の知識を押さえたうえで、いざというときに適切な対処ができるようにしておきましょう。 (提供:相続MEMO)
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