前日については、米・2月ADP民間雇用者数は市場予想19.0万人に対して18.3万人と若干悪化したものの、労働市場の堅調さは長らく継続していることもあり、マーケットの反応は限定的になりました。ただ、米・12月貿易収支が市場予想579億ドルの赤字に対して598億ドルの赤字になったことを受け、今後の通商協議においてネガティブな側面がでてくるのではないかとの思惑でドル円は下落しました。ドル円は112円のラインが遠のき、次第に112円のラインがレジスタンスラインとして意識されてくると考えられます。
本日発表されるECB理事会にて、景気見通しを引き下げるとの観測報道がユーロの下落を招き、利上げ基調が大幅に後退した加ドルも下落しました。加ドルについては、2019年には2度の利上げが予想されていましたが、本見解を受け、恐らく1度の利上げにマーケットのコンセンサスは低下すると考えられます。ユーロについては、ECB広報担当者がドラギECB総裁が声明を出すまではどれも正式な見解ではないと発言しているものの、景気見通しの引き下げは避けては通れないと考えられます。ユーロが上昇する可能性としては、景気見通しは引き下げるものの貸出条件付きの流動性供給オペ(TLTRO)第3弾の発表がない時でしょうか。可能性としては低いものの、再びドラギマジックが発揮されれば、うまく調和が保たれるかもしれません。
コックス・英法務相はアイルランドのバックストップに関してEUと協議したものの、進展は見られず、合意には至りませんでした。バックストップを基にした措置は一時的なものであることを確実にしたかったようですが、結果は事前の予想通り合意できずとなっています。英首相報道官が「メイ英首相は12日にEU巡る議会採決実施を約束」との声明を出したように、12日待ちの情勢になっています。これまでは、不確定要素の棚上げがポンド買いになっていましたが、そろそろ不確定要素の棚上げはポンド売りへ転換するのではないでしょうか。
今後の見通し
本日行われるECB理事会にて、ECB当局者は、昨日関係者の話としてあったように、基本的には2019年のGDP見通しを下方修正すると考えられます(前回前年比+1.7%→+1.3%)。また、大幅に経済予測が下方修正される事が想定されるため、ユーロ軟調推移が基本路線になりそうです。また、貸出条件付きの流動性供給オペ(TLTRO)第3弾についても議題にでてくるものと考えられるため、上記同様にこちらもユーロ売りの材料として考えられるでしょう。また、ECBはフォワードガイダンスで2019年の「夏頃」まで政策金利を据え置くとしてきましたが、「2019年を通して」据え置くとの表現に変更する可能性もあります。こちらも、同じくユーロ売りの材料となります。
豪州については、豪・第4四半期GDPの悪化から始まり、豪州の主要銀行がRBAの本年の利下げを示唆したことから軟調推移がスタートしましたが、米系のメガバンクの一行がRBAの利下げを示唆(今年7月、8月に25bps利下げ)したことから、再び上値が重くなっています。そうした中、本日は豪・1月小売売上高が発表され、毛塚は市場コンセンサスよりも悪化する内容に落ち着きました。直近の経済指標を見る限り、RBAの利下げを裏付けるものになっていることから、当面豪ドルは軟調推移が続くのではないでしょうか。元々昨年末にはどちらかと言えば利上げという流れではありましたが、方向性が180度変わっていることもあり、積極的に豪ドルを買い進める材料はほぼないでしょう。米中通商協議の期待感で豪ドルも買われたいた経緯がありますが、この期待感が落ち着くと、次第に豪ドル売りが強まるものと考えられます。
引き続き、ECB理事会までは我慢
ポンドにとってプラスマイナスどちらの材料も出てきていますが、ユーロポンドについては0.8590ポンド付近中心の推移になっています。上値の重さは確認できるものの、下値の底堅さも確認できる状況です。今週のECB理事会がユーロ売りのイベントとして考えているため、ユーロポンドについては、ここは我慢です。0.8590ポンドでのショート、利食いについては変わらず、2017年4月安値の0.83ポンド前半を目指すものの、ポンドのボラティリティが低下するようであれば、0.85ポンド前半での利食いも検討、損切りは0.8650ポンド上抜け水準です。
海外時間からの流れ
利上げサイクルのラインを、唯一順調に突き進んでいたBOC(加中銀)が前日の政策金利発表時の声明において、「政策金利が次第に中立レンジに向けて上昇する必要」との文言を削除し、「政策金利が中立レンジを下回ることが正当化されると判断」に変更しました。さらに、「将来の利上げ時期を巡る不確実性が増した」との見解を示したこともあり、加ドルについても、徐々に上値が重くなる展開が想定されます。
今日の予定
本日は、欧州中銀(ECB)政策金利発表、米・新規失業保険申請件数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ドラギ・ECB総裁定例会見に加え、ブレイナード・FRB理事の講演が注目されそうです。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。