2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、東京を中心とした各地で、急速にインフラ整備や施設の建設が進んでいます。1964年の東京大会同様、今回も日本の経済成長の起爆剤となるのでしょうか。2012年大会の開催地となったロンドンの今の姿は、2020年の東京大会開催をゴールではなく、スタートとして、魅力的な都市づくりへとつなげていくという見方ができることを教えてくれています。

イーストロンドン かつて放置され続けた貧困エリアが世界のイノベーションハブへ

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(写真=J.Score Style編集部)

2012年に向け、競技施設が次々と建設されたイーストロンドンは、かつては移民や失業者の多く住む貧しいエリアでした。2012年ロンドン大会ではこの長年放置され続けた、都市の負の一面を再開発して生まれ変わらせることが最重要課題であり、誘致におけるアピールポイントでもありました。

大規模なインフラ整備と施設建設により近代的な街並みへと姿を変え、オリンピックを無事終えたイーストロンドンは、今、街全体がイノベーションハブとしてさらなる進化を遂げています。メイン会場が建設されたオリンピックパークは、「Queen Elizabeth Olympic Park」として生まれ変わりました。

ロンドン大会開催中は、国際報道センターや国際プレスセンターなどのメディア基地として使用された建物は、「Here East」という、デジタル・ビジネスの拠点として再生されました。欧州で最高水準のデータ・センターと通信インフラを備えたというこの新たなビジネス拠点には、多種多様なイノベーターやクリエイターたちが続々と押し寄せています。

2017年にオープンした「Plexal」には、フィンテック、サイバーセキュリティ、AIなどのスタートアップが入居し、約600人が新たなイノベーションを起こすべく、働いています。

また、このイーストロンドンに若手スタートアップを中心とした起業家たちが集まり始めたことにより、ロンドン東南部に位置する、世界屈指の金融街であるシティへの利便性も増し、東から東南部にかけてのエリアも、フィンテック企業が次々とオフィスを構える動きが生まれています。

「暮らし・遊び、そして、働く」これからのライフスタイルのあり方

オリンピック後の再開発により、一大テック・シティへと成長し続ける、イーストロンドン。そこでは、仕事と私生活、オンとオフの境界がなくなった、新しいライフスタイルのかたちが見えてきます。

Queen Elizabeth Olympic Parkには、最先端の設備を備えたビジネス拠点だけでなく、住居や娯楽、教育施設も併設されています。オリンピック選手村として使用された宿泊施設は、「East Village」という住宅施設になりました。家賃は低価格に抑えられ、資金の少ない若手企業家でも、家族とともに暮らし、働ける環境を整備したのです。その他パーク内には、幼・小・中一環の公立校や、大学の研究センターも併設され、飲食店や服飾雑貨の店舗もオープンしており、今後も、美術館・博物館、劇場などが入った複合文化施設や、医療機関などが整備されていく予定です。

元々、オールドストリートやエンジェルを含むロンドン東部のハックニーエリアは、若手アーティストやクリエイターたちがアトリエやスタジオを構え、ロンドンでいちばんトレンドなエリアとされていました。そこへ、2012年のロンドン大会開催を機に、新たにテック産業が参入する間口が開いたことで、イノベーションとクリエーションの融合がより活発化しているのです。

また、再開発のテーマのひとつでもある「自然との共生」も、より豊かな住環境を演出しています。総面積2.5平方キロメートルのパーク内のうち約40%が緑地帯となっており、周辺を流れるリー川沿いにはイギリス産の樹木が植樹されています。自然の生態系に配慮し、多様な生物の生息地となるよう設計されているのです。

多様な人や芸術・思想と出会いの中で刺激が生まれ、自然と触れ合い、家族や友人たちと満たされた時間を過ごすことが、仕事における高いパフォーマンスや革新的な発想へとつながっていくのでしょう。

そして、ひらめいたアイディアを最先端のテクノロジーを備えたオフィスに持ち込み、形にするというこれまでの仕事とプライベートを切り離した考え方は徐々に消え、双方が互いに満たし合うライフスタイルがより広がっていくはずです。働き方、暮らし方の多様性を受け入れ、共生していく環境を作り上げたイーストロンドンの再開発は、能動的でクリエイティブなこれからのライフスタイルを体現した成功事例だと言えるのです。

ネクスト・イーストロンドンとして注目を集める東京

労働人口減少の深刻化を受け、外国人労働者の受け入れを増加するなど、これからの日本の経済発展には、海外の優秀なブレーンを積極的に誘致する体制が必要不可欠です。また、国内のイノベーターを育てる取り組みも積極的に行われている今、クリエイティブなアイディアが育つ、魅力的な環境整備を行うイーストロンドンの計画は、海外勢の誘致と国内企業の活性化の双方にとって、有効なロールモデルとなるでしょう。

今、旧ソニー村と言われた五反田エリアには、IT関連のスタートアップのオフィスが増加しています。湾岸エリアを中心に進む開発が、これらの流れをより活性化する結束地点となれば、2020年以降、東京が刺激的なイノベーションハブとなる可能性もあります。働き方の自由度が高まる中、それぞれの人生を楽しみ、豊かにしていくことこそ、日本らしいクリエイティブで突出した発想を生み出す起爆剤となっていくのです。(提供:J.Score Style

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