中国のIT企業テンセントが、ゲーム専用の信用スコア「騰訊遊戯信用」のサービスを開始しました。学歴や職歴など、個人の行動データをもとに「信用スコア化」が進む中国ですが、なぜゲームでも信用スコアのシステムを取り入れたのでしょうか?

月に1度更新されるテンセントのゲームの信用スコア

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(写真=J.Score Style編集部)

「騰訊遊戯信用」は、テンセントのゲームのアカウント情報や日々の活動、ゲーム内のアイテムやお金といった「資産」を集めてビッグデータ化したもので、月に1度更新していきます。定期的にゲームで遊ぶことでも信用が「たまる」ほか、不正を働いているプレイヤーをゲームレポートで報告したり、実名認証することでスコアは上昇します。逆に、ゲームの切断、ほかのプレイヤーへの暴言、あるいはチート(ゲームの改造や不正プログラム)を利用するなど素行が悪いと、クレジットスコアは低下していきます。

テンセントの信用スコアで高いスコアを持つユーザーには、ゲーム内で「テスター」の資格が与えられるほか、ギフトパッケージを得られるメリットもあります。「ゲームの信用スコア」を言い換えると、「ゲーム内でのプレイヤーの素行を数値化したもの」と言えるでしょう。

「ゲームの信用スコア」とは別に存在するゲーム内のレーティングシステム

ゲームに「信用スコア」を導入する意味をより正確に知るには、ゲーム内のレーティングシステムについても理解する必要があります。

多くのオンラインゲームは、信用スコアとは別に個別のレーティングシステムを持っています。弱い人が強い人と戦っても、ゲームには勝てません。そこで、対等のレベルの人たち同士が対戦できるようにレーティングシステムが設けられています。

例えば将棋や剣道、あるいは柔道などには、「級」「段」などと腕前を数値化、階層化するシステムがあります。それらに近いものとイメージすればいいでしょう。「黒帯だけど信用スコアは低い」というプレイヤーがいた場合、ある人から見れば「あの人はちょっとわがままだけど、ゲームはうまい」と捉えるかもしれません。

ゲームをプレーする人は基本的に、ゲーム内のレーティングを重視しますが、ゲーム内のレートが高いのに信用スコアが低いユーザーを「チーターや暴言を吐く粗悪なプレイヤーだ」とみなす可能性もあります。信用プログラムは、単に「チーターあるいは粗悪なプレイヤーかどうかの判断基準」に利用される可能性が高いでしょう。

「ゲームの信用スコア」は何に活用できるのか?

信用データが一定の数値に達したユーザーだけが参加できるオフラインのゲーム大会を開催するなど、イベントの参加する条件の設定などにも活用できそうですが、最も期待される部分はふたつあります。

ひとつは、ユーザー同士のコミュニケーションの円滑化です。オンラインゲームをパーティー(複数人数)でプレーする場合、見方のプレイヤーの中に暴言を吐く人が存在します。ここで信用データの出番です。暴言を吐くような信用スコアが低いプレイヤーはスコアが低いプレイヤー同士としかプレーできない、というような施策を打つことも考えられます。

もうひとつ大きな問題となっているのは「チーター」です。チーターはゲームバランスを大きく崩すもので、既存のユーザーがゲーム自体から離れる要因になります。

テンセントは2017年、ゲーム『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』の独占権を取得しました。このゲームはPCゲームをダウンロード販売するプラットフォーム「Steam」(米Valve Corporationが提供)で、2017年に最も売れたゲームです。しかし、同ゲームには現在チーターが蔓延し、大きな問題になっています。

テンセントはチーター問題を解決する方法のひとつとして信用データを利用したいと考えているのかもしれません。

ゲームの信用情報がもたらすもの

ゲームへの信用データの活用は始まったばかりですが、こうした動きは中国のみでなく、世界各国で採用されるかもしれません。また、ゲームに限らずインターネット上で起こるユーザー同士のコミュニケーションの問題を、信用システムが解決してくれる可能性もあります。テンセントの取り組みに注目していきましょう。(提供:J.Score Style

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