FinTechスタートアップによるピッチコンテストが行われる「FIBC2019(Financial Innovation Business Conference2019)」が3月7日東京・丸の内で開催され、海外企業のグランプリにオンライン保険プラットフォームの「CoverGo」(CoverGo Limited)が、国内グランプリには分散型台帳技術の「Scalar DLT」(株式会社Scalar)が選ばれた。

コンテストにエントリーした25社のうち、主催者分類で「ブロックチェーン」(分散型台帳技術)が9社と最も多いなど、この分野への注目の高まりをうかがわせた。(取材・濱田 優 ZUU online編集長)

CoverGoとScalarはどんな会社?

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(左から)プレゼンターの増島雅和氏とCoverGo LimitedのTomas Holub CEO(写真=ZUU online編集部)

海外グランプリを受賞した「CoverGo」(CoverGo Limited、Tomas Holub CEO & Founder)は2016年設立、中国を主な拠点とするスタートアップ。伝統的な保険会社やブローカー、銀行などの金融機関向けに、後者は顧客情報管理のプラットフォームなどを提供している。また一般消費者向けにも保険相談などができるサービスを展開している。

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国内グランプリには「Scalar DLT」が選ばれた(写真=ZUU online編集部)

国内グランプリの「Scalar DLT」(株式会社Scalar、深津航CEO/COO、山田浩之CEO/CTO)は2017年設立、LINEや三井住友海上火災保険なども出資しているスタートアップ。Scalar DLTは分散データベースソフトウェア「Scalar DB」と分散型台帳ソフト「Scalar DL」から構成されている。ブロックチェーンでは課題とされているスケーラビリティなどの問題の解消を実現するという。

セブンバンクや三菱地所などがスポンサー賞を提供

コンテストの表彰は海外と国内それぞれに分けて行われた。海外部門のグランプリ以外の受賞企業は、セブンバンク賞が「EduCredit.ph」(EduCredit.ph)、三菱地所FINOLAB賞が「BANKEX STO Framework」(BANKEX)、ISID賞が「ELLIPTIC」(Elliptic LTD)、審査員特別賞が「asvin」(asvin GmbH)、オーディエンス賞が「Blockchain mobile application」(Uulala, Inc.)だった。

国内では、ソニーフィナンシャルホールディングス賞に「omamoly」(MoneySart Inc.)、農林中金賞に「SynchroLife」(GINKAN,Inc.)、審査員特別賞に「academist」が選ばれた。また「TRUSTDOCK」(株式会社TRUSTDOCK)がQUICK賞とオーディエンス賞をダブル受賞した。

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登壇者と審査員ら(写真=ZUU online編集部)

ピッチコンテストにエントリーした「サービス」(企業名)は次の通り。

●海外 16社

「CoverGo」(CoverGo Limited)……APIを通じてオンライン保険を提供するプラットフォーム。
「Elliptic AML / Elliptic Forensics」(Elliptic LTD)……暗号通貨取引所や金融機関にコンプライアンスのソリューション。
「asvin」(asvin GmbH)……M2MコマースやIoTのためのセキュリティソリューション。
「Trade Reporting」(TRAction Fintech)……店頭デリバティブ取引における日常業務の解決策を提供する。
「Smart Investment Manager」(BlueVisor)……韓国の資産運用管理AI。

「Know Your Customer」(Know Your Customer Limited)……企業をマネーロンダリングから保護するためのデジタルソリューション。
「Blockchain payment」(DLT Labs)……ブロックチェーンを使った法定通貨の決済サービス。
「Beacon」(Beacon Platform K.K.)……クラウド内エンタープライズイノベーションプラットフォーム。
「Blockchain mobile application」(Uulala, Inc.)……ブロックチェーンを活用したファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)のためのモバイルアプリ。
「Allganize NLU API」(Allganize, Inc.)……金融サービス向けドメイン対応の自然言語理解(NLU)APIとAIチャットボット。

「Unlikeys Biometric Hardware Wallets」(Unikeys)……ブロックチェーン決済ソリューションプロバイダ。
「EduCredit.ph」(EduCredit.ph)……高等教育のための保護者や生徒への融資。
「CreditAI」(CreditAI.INC)……農業事業者向け、AIを活用した信用格付け。
「VideoID」(Electronic Identification)……eKYC(電子顧客確認)を目的とした、ビデオとAIを組み合わせて提供するAPI。
「Moneythor」(Moneythor Pte.Ltd.)……銀行がワンツーワンサービスを提供するための支援サービス。
「BANKEX STO Framework」(BANKEX)……セキュリティトークンの発行を合理化・標準化するためのフレームワーク。

●国内 9社

「Scalar DLT」(株式会社Scalar)……XTech向け次世代データベース。
「SynchroLife」(株式会社GINKAN)……トークンエコノミー型グルメSNS。
「Moge Check」(株式会社MFS)……オンライン住宅ローン借り換えサービス。
「MoneyReco」(スマートアイデア株式会社)……共働き世帯向け家計簿サービス。
「academist」(アカデミスト株式会社)……研究者発掘プラットフォーム。
「omamoly」(MoneySmart株式会社)……子供の居場所とお金の見守りサービス。
「TRUSTDOCK」(株式会社TRUSTDOCK)……eKYC/本人確認APIサービス。
「SEIMEI」(SEIMEI株式会社)……音声認識による生命保険業務情報検索ソフト。
「Art Blockchain Network」(スタートバーン株式会社)……アート関係機関をつなぐブロックチェーン網。

8回目となる今年のFIBCには国内外の24社が参加、累計で延べ111社。主催は電通の子会社である電通国際情報サービスで、金融革新同友会FINOVATORSが共催。審査員は、増島雅和氏(森・濱田松本弁護士事務所パートナー弁護士)、柴田誠氏(Japan Degital Designエグゼクティブフェロー)、高岡美緒氏(メディカルノート取締役CFO)、小川久範氏(みずほ証券戦略調査部ディレクター)、大平貴久氏(デロイトトーマツベンチャーサポート プラットフォーム事業部長)が務めた。

当日はゲストスピーカーとして、田坂広志・多摩大学大学院教授、柴田氏のほか、松本大・マネックスグループ代表執行役社長CEOが登壇。松本氏はマネックス創業前からこれまでの金融業界とテクノロジーの歴史を振り返ったうえで、「ブロックチェーンは金融サービス、金融ビジネスを変える存在」などと述べた。