フリーランスなど自営業の場合、老後に受け取る公的年金は国民年金のみです。国民年金に加えて厚生年金を受け取る会社員に比べると、心もとないといえるでしょう。そこで今回は自営業の人が年金を増やすための公的制度「国民年金基金」についてご紹介します。

国民年金基金は自営業の人向けの公的な個人年金

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(画像=Watthano/Shutterstock.com)

国民年金基金は国民年金に上乗せする年金として、老後の所得保障を担う公的な年金制度です。加入できるのは、日本国内に居住する20歳以上60歳未満のフリーランスや自営業者など、国民年金第1号被保険者です。ただし、国民年金の免除を受けている場合は加入することができません。

加入する際は「地域型(47都道府県)」と「職能型(25の職種)」のどちらかを選択することになりますが、内容は同じです。例えば、職業は変わらないけれど都道府県をまたがる転居が多い場合には職能型を検討するなど、自分の都合に合わせて選ぶとよいでしょう。

国民年金に上乗せする年金としては、国民年金基金の他にiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。2つの違いとしては、まず国民年金基金は国民年金第1号被保険者だけが加入できる制度ですが、iDeCoは20歳から60歳までのすべての人が加入できる制度だということです。

大きく違う点は、掛け金の決まり方と受け取り方についてです。国民年金基金の掛け金は加入時の年齢・性別・プランによって決まり、運用は基金が行い、将来の給付額も確定しています。一方iDeCoは働き方によって掛け金の上限が決められており、その中で毎月5,000円以上から1,000円きざみで金額を設定します。運用は自分で行い、将来の給付額は運用次第になるため、事前に確定していません。

その他の違いとしては、国民年金基金は基本的に65歳から終身にわたって年金で受け取る一方で、iDeCoは60歳~70歳で受け取りを開始し、一括か年金、あるいは併用で受け取るなど任意で決めることができます。なお、年金での受取期間は5年から20年であること、iDeCoの加入期間が10年未満の場合には受給開始年齢に制限があることなども国民年金基金とは異なる点です。

国民年金基金とiDeCoのどちらも途中解約はできず、減額などの変更ルールも異なるため、加入する前に必ず確認しておきましょう。

国民年金基金の掛け金はいくら?調べる方法は

国民年金基金の掛け金は月額6万8,000円が上限となります。iDeCoに加入している場合には、国民年金基金と合わせて月額6万8,000円が上限と決められています。毎月の掛け金は前述のとおり、加入時の年齢・性別・プランにより決まるため、掛け金の限度額内でプランと加入口数を選択します。

加入プランは7プランの種類があり、終身年金「A型」「B型」と確定年金「I型」「II型」「III型」「IV型」「V型」です。1口目は必ず終身年金「A型」「B型」のどちらかを選択しなければなりません。どちらも亡くなるまで給付金を受け取ることになりますが、A型は死亡時に遺族への一時金給付があります。

加入後に1口目のプランを変更することはできませんが、2口目以降は終身年金・確定年金の全7プランから任意に選択し、途中で口数を増減することも可能です。

確定年金は「5年・10年・15年の給付期間」と「60歳・65歳の給付開始年齢」を組み合わせたI型からV型まで、5種類のプランから選択します。国民年金基金ウェブサイトで、掛け金の確認や年金額のシミュレーションを行うことができます。

40代で加入した場合はいくらもらえる?老後の受給額シミュレーション

フリーランスで年齢が40歳2ヵ月(誕生日が1979年2月1日)で、課税所得300万円の女性が加入した場合の掛け金と受給額をシミュレーションしてみましょう。終身年金B型に2口加入した場合、以下のとおりになります(2019年3月時点のシミュレーション)。

掛け金:年額23万5,680円=月額1万9,640円 × 12ヵ月

<掛け金の内訳>
1口目(Bプラン) 年額17万6,760円=月額1万4,730円 × 12ヵ月
2口目(Bプラン) 年額5万8,920円 =月額4,910円 × 12ヵ月

1口目と2口目を合わせて1万9,640円となることから、年間の掛け金は23万5,680円、60歳までの払込総額は467万4,320円となります。

受給額を国民年金基金のウェブサイトにある「年金額シミュレーション」で試算してみると、65歳からの年金給付は年額25万2,100円を終身で受け取ることになります。仮に、女性の平均寿命87歳まで受給した場合、年金の受給総額は65歳からの22年間で554万6,200円です。概算で84歳まで受給できれば元が取れるといえるでしょう。

なお、国民年金基金の掛け金は社会保険料控除として全額を所得控除できます。例えば、40歳から60歳まで課税所得300万円で上記プランに加入した場合には、所得税と住民税の合計で年間4万7,630円(概算)が軽減されます。つまり、実質の掛け金は年額23万5,680円から18万8,050円となり、概算で80歳まで受給することができれば元が取れるでしょう。

参考までに、国民年金基金の加入者の平均年齢は48.6歳、掛け金の平均額は2万5,290円、平均加入口数は4.7口です(2017年度末)。

国民年金基金で老後をより安心に

フリーランスなどで生計を立てる女性にとって、老後の年金は重要な収入の一つです。国民年金基金に加入することで、終身にわたって自分年金を作ることができます。1口目は終身年金プランを選択する必要がありますが、2口目以降は確定年金プランを選択するなど、自分のライフプランに合わせて組み合わせることができます。この機会に一度シミュレーションを行ってみましょう。

文・三原由紀(合同会社エミタメ代表・ファイナンシャルプランナー)/fuelle

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