前週末については、これまで強い労働市場の内容を示し、今回もある程度の強い内容を期待された米・雇用統計にて、米・2月非農業部門雇用者数が市場予想18.0万人増に対して、結果2.0万人増と大幅に悪化となったため、ドル円は東京時間に下抜けた111円のラインを再び下抜け、一時110.791円まで下値を拡大しました。ただし、米・2月失業率が市場予想3.9%に対して3.8%、米・2月平均時給(前月比/前年比)が市場予想+0.3%/+3.3%に対して+0.4%/+3.4%になるなど、マイナスの内容だけでなく、プラスの内容も発表されたことで下値も限定的となり、結局111円台にてNYクローズを迎える動きになりました。2月は天候が不順であったなどの見解があったことも、ドル円の下値が限定的となった要因だと考えられます。

前週末は、ドルの動きが中心になるかと思われましたが、雇用統計の内容を受け動きづらい地合いとなり、欧州時間から強まっていたポンド売りの動きが活発化しました。バルニエ・EU首席交渉官は「ブレグジット協議は何も進展がなかった」と述べたうえで、英国側にアイルランド国境問題を巡って追加提案したことを明らかにしましたが、英国のバークレー・EU離脱担当相はこの提案について「英国が過去に拒んだ提案を改めて提示した形」と不満をあらわにしたほか、民主統一党(DUP)のドッズ副党首は「バルニエ氏の提案は一方的な申し入れで、アイルランド境界問題についての理解が欠如している」と一蹴したと報じられています。今週は、12日の再採決を皮切りに英国の議会採決が重要な週になります。これまで以上に英国のEU離脱関連のヘッドラインには、気を配る必要がありそうです。

米中通商協議は、27日頃に開催予定とされていた米中首脳会談での最終合意を目指しているものの、ここにきて4月に延期される可能性も示唆されています。楽観的な見方が強かった同イベントですが、習中国国家主席の訪米取り止め報道なども出てきており、リスク選好一辺倒の当初の想定からは、悪化するところで決着がつきそうです。茂木経済財政相も日米通商協議の4月開催を示唆しているものの、米中通商協議如何ではどうなるか分からない側面もあるので、こちらの続報にも注意する必要がありそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

上述したように、今週はまず12日に英議会で欧州連合(EU)離脱協定案の2度目の議会採決が行われます。否決された場合は、13日に「合意なき離脱」の可否について採決され、それも否決された場合は14日に離脱協定の延期の採決が行われる予定です。これまでの報道を鑑みると、12日の採決は再び大敗する可能性が高そうです。「合意なき離脱」は誰しもが望まない結果になると考えられるため、基本的には14日の延期の可否が焦点になりそうですが、短期の延期案が可決される可能性が高く、その場合は一旦はポンド買いになりそうですが、すぐさまポンド売りへと傾くのではないでしょうか。

明日12日からはポンドが主役となりそうですが、本日については米・1月小売売上高が注目されそうです。好調なクリスマス商戦と呼ばれていたものの、蓋を開けてみると12月の小売売上高は前月比-1.2%と9年3カ月ぶりのマイナスを記録し、ドル円下落の切っ掛けとなりました。さすがに12月のようなインパクトはないでしょうが、市場予想から悪化するようであれば米国経済の不調がちらつき出す可能性があるため、リスクオフでなくシンプルなドル売りとなる可能性があります。特に、米・雇用統計後のドル売りが限定的であったため、想定市場にドルロングが溜まっていることが考えらるため、STOP次第では大きくドル円が値を下げる展開になるかもしれません。

議会採決を控え、ポンドの戻り売りに転換

0.8590ポンドでのユーロポンドショートですが、0.8620ポンドにて損切りの手仕舞です。不確定要素がある場合は、最悪の想定を回避できればポンド買いに今までは繋がっていましたが、ややポンドの状況においても変化が出てきたのかもしれません。ポンドドルの戻り売りを、次の戦略とします。1.3050ドル上抜けを撤退目途に、1.3020ドル付近での売り戦略。利食いについては、1.2920ドル付近まで様子を見たいと思います。

海外時間からの流れ

ECBによるユーロ圏の成長率、インフレ率見通しの下方修正から始まり、中国の貿易収支悪化、そして米・雇用等統計での非農業部門雇用者数の大幅悪化と、リスク回避の傾く材料が立て続けに出てきています。ドル円に関しては、大きな動きに発展してはいませんが、12日以降の英議会での欧州連合(EU)離脱協定案次第では、一気にリスクオフのマーケットになる可能性があるかもしれません。恐らくEU離脱時期の延期となる公算ではありますが、今までであれば問題の棚上げがポンド買いになっていましたが、今回は一時的にはポンド買いになるかもしれませんが、ポンド売りの材料として見られるようになると考えています。

今日の予定

本日は、独・1月鉱工業生産/1月貿易収支/1月経常収支、トルコ・1月経常収支、米・1月小売売上高が予定されています。要人発言としては、ハスケル・MPC委員の講演が注目されそうです。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。