前日については、急遽、メイ首相がEU首脳との協議のために仏ストラスブールを訪れるとの報道により、EUとの修正案で何かしらの進展があるのではないかとの思惑が強まり、ポンドが全面高となりました。EUと修正案で合意しても、12日の議会採決では否決の可能性が高いと考えられていたものの、「合意なき離脱」の回避、EU離脱延期については、より楽観論が強まったことがポンド買いをサポートする形となりました。

そんな中、本日早朝にメイ英首相の側近が「英政府は離脱協定で法的拘束力のある修正を確保した」との報道でポンドは急騰しました。ポンド円は146.40円付近から147.70円付近まで、ポンドドルでも1.3140ドル付近から1.3280ドル付近までポンド買いが強まりました。その後に行われたメイ英首相とユンケル欧州委員長の共同記者会見では、「法的に拘束力のある手段で合意に達した」「今回の合意案かEU離脱が実現しないかのどちらかだ」との声明があり、メイ英首相の側近の発言が正しかったことが証明されました。

本日12日に英議会にてEU離脱修正案の再採決が行われ、否決された場合は「合意なき離脱」の可否について採決、それも否決された場合は14日に離脱協定の延期の採決が行われる予定です。引き続き先行き不透明感は否めないですが、マーケットは本日の共同会見を受け、「合意なき離脱」の可能性が一気に低下したと判断したものと考えられます。

EU離脱案の前に11日の注目材料であった米・小売売上高については、市場予想±0.0%に対して+0.2%となり、市場予想を上回りました。ただ、前回12月の数字が-1.2%から-1.6%に下方修正されたことを受け、強弱まちまちの内容となり、動きづらい地合いとなりました。対ドルではドル売りが強まっているものの、ドル円が堅調に推移していることを鑑みると、マーケットがリスク選好に傾いているのが良く分かります。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

上述したように、12日に英議会で欧州連合(EU)離脱協定案の2度目の議会採決が行われます。否決された場合は、13日に「合意なき離脱」の可否について採決され、それも否決された場合は14日に離脱協定の延期の採決が行われる予定です。12日の採決は大敗するのとの見方が一般的でしたが、メイ英政権が離脱協定を強化・改善する法的拘束力のある修正を確保したとの報道により、議会がどのように反応するのかが焦点でしょうか。コービン英労働党首が「メイ英首相の交渉は失敗であり、議会は拒絶すべきである」と発言しているように、一筋縄ではいかないでしょうが、議会での合意の可能性は高まったと考えられます。法的拘束力を伴う修正案では、5/23まで離脱を延期することを明らかになっています。そうなった場合は、ポンドはもう一段高に向かう動きになりそうです。

トランプ米大統領は、2020会計年度の予算案に86億ドルのメキシコ国境壁の建造費用を盛り込みましたが、ペロシ米下院議長が弾劾訴追も視野に入れて、国家非常事態宣言の無効やロシアゲート疑惑の追及など、対決姿勢を強めており、米議会運営が再び停滞する可能性が出てきています。ポンドが主役の一週間ですが、一旦落ち着きを見せると、トランプ政権への注目度が高まりそうです。

法的拘束力を伴う修正案は想定外

法的拘束力を伴う修正案は想定外であり、本日の議会採決の大敗を予測してのポンドショートでしたが、1.3020ドルのポンドドルショートは1.3050ドルであっという間に損切りで手仕舞です。こうなってくると、議会可決の可能性もでてくるため、ポンドについては押し目買い方針に切り替えた方がいいかもしれません。本来であればポンドドルは1.3140ドル付近が押し目のポイントでしょうが、議会採決前にポンドの動きが膠着するようだと1.3200ドル付近でのロングでもいいかもしれません。

海外時間からの流れ

ポンド全面高の動きでしたが、本日早朝の法的拘束力を伴う修正案はかなりのインパクトを残したと考えられます。議会承認が得られれば、「合意なき離脱」の可能性はほぼなくなるでしょう。それだけに、否決された場合は急速にポンド売りが強まる可能性があるため、連日続く予定の英議会採決が一層注目されそうです。

今日の予定

本日は、英・1月鉱工業生産/英・1月貿易収支/英・統計局1月度GDP月次推計発表、米・2月消費者物価指数が予定されています。また、英議会にてEU離脱修正案の再採決が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。