前日については、メイ英首相とユンケル欧州委員長の共同記者会見において、「法的に拘束力のある手段で合意に達した」との報道があったため、もしかしたらメイ英首相の離脱案が可決されるのではないかとの思惑が強まったため、アジア時間序盤ではポンド円が146円半ばから147円後半まで急騰する場面がありました。ただ、欧州時間(日本時間20時前)に、コックス英法務長官が「英国にとって法的リスクは変わらない」と発言し、ユンケル欧州委員長とメイ英首相との共同会見の内容を打ち消す発言を行ったため、議会採決では否決されるだろうとの判断からポンド円は146.50円付近から144.60円付近まで急落する動きを見せました。
結果は、EU離脱協定案を賛成242、反対391の反対多数で否決しました。ただ、1度目の採決時には票差230だったものが、今回は149と大敗ながら状況が改善したことにより、一時ポンド買いが優勢となりました。EU離脱協定案が否決されたことにより、本日は「合意なき離脱」をするのかどうかの採決になります。市場コンセンサスでは、本日の「合意なき離脱」は否決、明日予定の「離脱延期」が可決されるとの見方が一般的であり、全てを織り込んだ上でのポンド買いだったと考えられます。ただ、依然として先行き不透明感は拭えないため、次第とポンドの上値も抑えられています。
市場コンセンサスでは、「合意なき離脱」は回避、EU離脱は延期になっていますが、離脱の延期にはEU27か国の承認が必要になります。1か国でも延期拒否となれば、市場が既に織り込んでいる離脱延期は叶わず、「合意なき離脱」という結果になります。メイ英首相は、3月21-22日に開催されるEUサミットで正式要請することになると思いますが、まだまだ予断を許さない状況に変わりはなさそうです。また、EU離脱協定案否決により、英国が2回目の国民投票を経てEUに残留する可能性がでてきたことも、留意した方がいいかもしれません。
今後の見通し
本日(14日早朝)に行われる「合意なき離脱」の是非を問う採決、明日(15日早朝)に行われる「離脱延期」の採決の流れで進んでいきますが、基本的には市場コンセンサス通りの内容に落ち着くと考えられます。ただ、短期延長を申請する可能性が高そうですが、どのような期間の延長を申請するかが再度議会のトピックスになるかと考えられ、状況によってはポンド売りに傾くかもしれません。
また、これまでの流れを考えると、恐らくEUサイドも短期延長を承認するとは思いますが、離脱延長に関して制裁金に近い形での清算金の大幅上乗せを英国に要求するとの話も報道されており、清算金で混乱すれば、短期延長の申請すら実現しない可能性も残るため注意が必要になりそうです。
また、短期延長ありきで進んでいますが、長期延長でなければ2度目の国民投票、そしてEU残留という道が閉ざされます。離脱延長をしただけでは、何の問題の解決にもならないため、一時的にはポンド買いが主導しそうですが、再度英国が煮詰まってくると、ポンド売りへと転換する可能性は想定しておいた方がよさそうです。
ボラティリティを考えると、ポンド関連通貨の取引一択か
1.3140ドルのポンドドルロングは、1.3090ドルで損切り、手仕舞です。ポンド関連の通貨ペアで苦戦しているものの、ポンドのボラティリティを考えると、やはりポンド関連の通貨ペアでの取引に妙味がありそうです。基本的にはポンドロングですが、ポンドドルが1.3200ドルまで上昇するようであれば、途転売りを考えます。1.3080ドルでの買い戦略、利食いは1.3200ドル、損切り刃1.3020ドル下抜けです。
海外時間からの流れ
EU離脱協定案が否決されたため、今後は「合意なき離脱」「離脱延期」が焦点になります。「合意なき離脱」は誰しもが望んでいないため、焦点としては「離脱延期」ですが、今後はこの部分の思惑によりポンドの動きが強まりそうです。ただ、一部で噂されているようにメイ英首相が辞任というケースになるようなら、ポンドは一時的に大きく下落しそうです。
今日の予定
本日は、英・1月鉱工業生産/英・1月貿易収支/英・統計局1月度GDP月次推計発表、米・2月消費者物価指数が予定されています。また、英議会にて「合意なき離脱」の可否を問う採決が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。