前日については、保守党スペルマン議員の修正案(延期離脱案)を賛成312票、反対308票の僅差で可決、また、英国議会は「合意なき離脱を回避」する事を賛成321、反対278で可決しました。これで、本日14日(15日早朝)に「離脱期限の延期」の採決を行うことになります。事前報道では、明日の期限延期までがコンセンサスになっているため、ネガティブサプライズがあるとポンドが急落する恐れがありますが、基本的には離脱期限延期になると考えられます。
前日の採決の結果を受け、離脱期限延長の動議に関しては、3/20までに合意に至れば、6月末までの短期的な延長を目指し、3/20までに合意に至らない場合は、より長期的な延長をEUに求める内容である事が報じられています。確かに、この報道通りであればポンド買いが強まる動きにはなりますが、離脱期限延長に関しては、英国はなぜ延長が必要かをEUに明確に示す必要があり、また、EU加盟27か国全ての同意が必要である事から、本日の採決が延期に決まったとしても先行き不透明感は拭えませんが、短期的にはポンドが引き続き上値を拡大する見通しです。
ハモンド・英財務相は、半年に一度の財務報告の中で、予算責任局による2019年の英国経済の成長率見通しを昨年10月時点の1.6%から1.2%に引き下げると述べ、2020年と2021年はそれぞれ1.4%、1.6%、これらも昨年10月時点の1.4%から下方修正すると公表しました。今は、「合意なき離脱」という最悪の事態回避によるポンド買いになっていますが、いざ冷静に英国経済に目を向けると本来であればポンド売り材料が多数存在しているため、ポンドの急騰相場は一時的なものになると考えれます。
今後の見通し
トランプ大統領が「米国連邦航空局(FAA)はボーイング737MAX8と737MAX9に対して運航停止を命令へ」と発言したことから、株価の下落を招き、昨日もドル円が一時111円の大台付近まで下落しました。また、米中貿易協議について「私は(合意を)急いでいない。適切な取引を望んでいる」と発言しており、トランプ大統領主導でリスク回避の動きが強まっています。米中貿易協議については、最終的には首脳会談で決着させたい意向ではあるものの、日程はまだ決まっていないと説明し、物別れとなった米朝首脳会談を踏まえ、中国側も首脳会談で決裂する事態を避けるため、事前交渉ですべての議題を解決することを求めていると報道されています。一時は3月末に開催されると伝えられている首脳会談で、米中が合意するとの楽観論が強まっていましたが、楽観論については、明確に後退していると考えられます。リスクオンの状況になっても、ドル円は上値が抑えられやすい状況にあると考えてよさそうです。
本日も、引き続き英国議会での採決がマーケットの中心になるでしょう。想定外に僅差になりましたが、「合意なき離脱回避」「離脱延期」は既にマーケットでは織り込まれていたものの、事前期待でのポンド買い、そして採決判明後の事実でのポンド買いと、最悪のケースにならなければ市場はポンド買いで反応しています。これまでの動きを鑑みると、本日も事前予想通り「離脱延期」になったとしても、ポンド買いが主導するのではないでしょうか。
ボラティリティを考えると、ポンド関連通貨の取引一択か
ポンドドル、1.3080ドルロングは1.3200ドルにて利食い、手仕舞となりましたが、1.3200ドルでの途転ショートは、1.3250ドルにて損切りになりました。合算するとプラスではあるものの、チャートが示す形状以上にポンド買いが強まっています。本日も引き続き、ポンドドルロング戦略ですが、途転売りの戦略はとらない予定です。1.3220-30での買い戦略ですが、欧州時間までにこの水準まで達しない場合は成行ロングとします。利食いは1.3380ドル、損切りは1.3180ドルを想定します。
海外時間からの流れ
事前予想通り、「合意なき離脱」は回避で可決され、本日の「離脱延期」も可決される見通しです。ただ、予想外に僅差であることから、EUへの説明が難しくなったことも事実です。3/21-22のEU首脳会談にてメイ英首相が、承諾を得るよう交渉する予定ですが、それまでは、最悪のケース回避を理由にポンドが買われやすい状況になりそうです。
今日の予定
本日は、独・2月消費者物価指数(確報値)、米・2月輸入物価指数、米・新規失業保険申請件数、加・1月新築住宅価格指数、米・1月新築住宅販売件数が予定されています。また、英議会にて「EU離脱延期」の可否を問う採決が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。