前日については、既に「合意なきEU離脱」の不支持を決定していた英国議会が、「EU離脱延期」に関する採決を行い、賛成412、反対202の票をもってEU離脱の延期を決定しました。メイ英首相は、来週再び離脱協提案を議会採決にかける予定であり、20日までに離脱協定案で合意できた場合には短期の延期、合意できない場合には長期の延期をEUに要請することになります。いずれも来週のEU首脳会議で承認される必要があり、承認されなかった場合は、3/29をもって離脱せざるを得ないリスクは残りますが、トゥスクEU大統領は長期の延長を承認する意向であるため、3/29での合意なき離脱は回避されると思われます。

離脱延長をEUに申請する際には、英国はなぜ延長が必要かをEUに明確に示す事が必要になりますが、EU27か国全てを納得させる理由を提示できるとは考えづらいため、短期の延期ではなく長期の離脱になるのではないかと考えられます。また、EU側も当然短期ではなく長期の離脱を提示してくることが考えられます。3/20までに合意案の議会通過ができれば、英国政府は法制化に必要な短期的な延長だけをEUに対して申請することになりますが、現段階では長期離脱となる可能性も十分考えられます。

また、ハモンド英財務相が「EU側がブレグジット期限のより長い延長を認める可能性」と議会採決前に発言したことによりポンドは急騰した経緯がありますが、マーケットは依然として問題棚上げを期待している向きが強く、延期の期間が長ければ長いほど、ポンドは買われやすいと考えた方がよさそうです。ただ、これで一旦今週は材料出尽くしとなるため、ポジション調整の意味もあり、目先はポンドは売られやすい状況にあると思われます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

米中通商協議に関しては、ムニューシン米財務長官が「中国側とあらゆる項目について議論しており、近い将来、一部の争点で近く合意できる見通し」と述べ、トランプ大統領も「中国との通商協議が合意できるかはおそらく3-4週間以内に分かるだろう」と述べているものの、米中首脳会談では、少なくとも4月まで延期になる可能性が指摘されており、トランプ大統領が「中国との通商協議は順調」としながらも「合意できるかどうかは明言したくない」と述べていることもあり、従来の楽観論はほぼなくなったと考えられます。

本日の注目材料としては、日銀金融政策決定会合でのフォワードガイダンスの変更などのサプライズがあるかどうかという点にスポットが当たりそうです。基本的には、物価2%目標に向けたモメンタムは維持されているとして、現行の金融政策の継続が予想されています。景気見通しが「緩やかに拡大している」との判断が維持されるのか、それとも、内閣府のように、景気後退期に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に基調判断を引き下げるのか、という点が注目ポイントになります。内閣府と日銀が景気判断を下方へ引き下げた場合、3月の月例経済報告でも、景気の基調判断が「下方修正」される可能性が高まため、そうなると、黒田日銀総裁が以前話に出した「追加緩和の検討」が現実味を帯びてくる可能性があります。

ただ、日銀にとっては4月の会合がより重要(2021年度予測まで含む展望レポートを出すため)であり、景気の現状判断を引き下げるのであれば4月公表だと考えることもできるため、この点に注目が集まりそうです。また、黒田日銀総裁の定例会見でも追加緩和の可能性のヒントがあるかもしれないため、ここも注目度が高そうです。

一旦ポンドからは離れた方が吉か

1.3230ドルでのポンドドルのロング、1.3380ドルには到達せず、今だロングポジションを維持です。ポンド急騰の動きが一旦落ち着きを取り戻しそうなため、今回のポンドドルの取引以降は、一旦離れる方向です。本日は、日銀金融政策決定会合が予定されていることもあり、来週以降は円絡みの取引が活発化されそうです。1.3230ドルのポンドドルロング、利食いは1.3300ドルに引き下げ、損切りのレベルは1.3200ドル下抜けに変更です。

海外時間からの流れ

メイ英首相とユンケルEU委員長の共同記者会見にて「法的拘束力のある変更で合意」というサプライズがあったことで、今回の英国議会採決がさらに注目度を高めたわけですが、結果的には「合意なき離脱」はせず、「離脱延期」を支持という、市場コンセンサス通りであり、最も無難な結果になりました。ただ、依然として「合意なき離脱」を回避できることがポンド買いに繋がる状況に変わりはないため、問題の先延ばしは、長ければ長いほどポンドは買われそうです。

今日の予定

本日は、日銀金融政策決定会合/黒田・日銀総裁定例会見、トルコ・12月失業率 、ユーロ圏・2月消費者物価指数、米・3月NY連銀製造業景気指数、米・3月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。