前週末については、日銀政策決定会合が注目されましたが、世界経済に関する判断は下方修正され「輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられる」とされたものの、日本経済の判断に関しては「総じてみれば緩やかに成長している」との見方が維持されました。インフレ率の見通しに関しては、引き続き2%に向けてモメンタムが維持されているとされ、黒田日銀総裁は記者会見で世界経済が年後半に回復するとの見方を強調し、日本経済の堅調さが維持されるとの見方を示しました。足許の景気の減速はあくまでも一時的なものであり、年後半に回復に向かうとのシナリオに黒田総裁が自信を示し、追加緩和観測を打ち消しました。これにより、一部で追加緩和観測が期待されていましたが、ドル円は112円台に到達することなく、111円半ばでの推移になりました。
14日(15日早朝)に、英国議会にて「EUからの離脱延期」を可決しましたが、先週末はポジション調整の意味合いもあり欧州時間序盤はポンド売りが優勢となり、ポンドドルは1.3200ドル付近まで一時ポンド売りが強まりました。ただ、「メイ英政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)がこれまでの姿勢から一転し、メイ首相の離脱合意案の3度目の採決に賛成するのではないか」との一部報道が出たことにより、ポンドドルは1.3300ドル付近まで再度ポンド買いが強まる結果となりました。
メイ首相案の3度目の採決が可決となれば、6/30での離脱が現実味を帯びてくることにより、EU側が求めてくるであろう1年程度の長期延期については回避できる見通しです。どちらにしても、マーケットは現段階ではポンド買いで反応すると思われますが、EUが提案するであろう長期離脱となれば、再選挙を含め、先行きは完全に不透明になってしまうため、21-22日に予定されているEU首脳会談までにメイ首相の離脱合意案の3度目の採決が可決されれば、ソフトブレグジットとなり、素直なポンド買いになると考えられます。
今後の見通し
今週は、BOE、FOMCの政策金利発表が予定されていますが、やはり21-22日にかけてのEU首脳会談が意識されるものと思われます。これまでも、『合意なき離脱』が回避されたことでポンド買い、「離脱延期を承認した」ことでポンド買いになっており、目先の問題が最悪のケースにならなければ、ポンド買いに移行するケースが見られます。離脱延期期間が長引けば長引くほど英国の政治は混乱しますが、マーケットは逆にポンドを買う動きになっています。ポンド円では150円、ポンドドルでは1.35ドルという心理的節目が意識されそうです。
FOMCについては、利上げの先延ばしがほぼコンセンサスになっていますが、その後のパウエルFRB議長の記者会見においても、利上げを急がない姿勢が表明されるとみられており、ハト派寄りの発言内容になるとの見方が優勢です。現段階では、2019年の利上げ予想はゼロになることが想定されますが、政策金利見通しで年1回の利上げが示唆されれば、市場にとってややタカ派的なサプライズとなる可能性がありそうです。
米中通商協議に関しては、米中首脳会談の実施時期が遅れていることもあり、通商協議のヘッドラインに対しても反応薄になりつつあります。一部報道では、4月以降、もしくは6月にずれ込むのではないかとの見方もあり、一旦マーケットの材料からは外れそうです。先週引き続き、やはり今週もポンドがマーケットの主役になるのではないでしょうか。英国議会で色々な案の採決をしても、結果的にEUが承認しなければ、「合意なき離脱」の可能性は残ります。どの程度、メイ首相案に傾斜するのか、そして21-22日のEU首脳会談にて離脱延期が承認されるのかが今週のポイントになりそうです。
ポンドの流れがしっかりするまでは、一旦ドル円のレンジ取引
1.3230ドルでのポンドドルのロング、損切り間近の水準まで下押しする場面があったものの、結局は1.3300ドルに到達し、70ポイント程ですが、利食いでの手仕舞です。方向性がしっかりするまでは、一旦ポンドからは離れ、ドル円のレンジ取引に徹したいと思います。111.70-80円での売り戦略、利食いについては111.20円台、損きりについては、112.10円台で考えています。
海外時間からの流れ
ここにきて、北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)がこれまでの姿勢から一転し、メイ首相の離脱合意案の3度目の採決に賛成する可能性が出てきたことはポジティブサプライズとして考えられます。今週は、コックス英法務長官がバックストップ案についての新たな法的見解を示すのではないかと報じられており、今回の見解はウィーン条約の「条約法に関するウィーン条約」の見地から見た法的解釈となる線が濃厚です。状況によっては、大きくメイ首相案に賛同する議員がでてくるかもしれません。
今日の予定
本日は、ユーロ圏・1月貿易収支などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。