前日については、バーコウ英下院議長が度重なる英国のEU離脱案動議への懸念を表明し、「メイ首相の離脱案がこれまでと同じ内容なら採決はできない」と3回目の採決を事実上禁止しました。この動きを受けて、全般ポンド売りが先行し、ポンドドルについては、一時1.3185ドル付近まで値を下げました。ただ、その後は、クワーテン英EU離脱担当副大臣が「議会は今週、離脱協定案を承認する可能性が残っている」と発言したことなどが意識され、1.3260ドル付近まで買い戻されるなど、前週に引き続き、ポンドについては乱高下する動きになっています。

本日の東京時間については、英大衆紙「サン」がメイ英首相が「9カ月から12カ月のブレグジット離脱延長を検討している」と報じたことで、ポンドが小幅高になっています。当局者は、離脱期限の長期延長を要請する必要が出てきたとの見方を示していることもあり、ここにきて長期離脱での決着の可能性が出てきています。

ただ、英保守党の離脱派議員であるリースモグ氏は一部メディアに対し、「悪い合意よりも合意なき離脱のほうが良いものの、悪い合意でもEUにとどまるよりはましだろう」と述べ、メイ英首相の離脱合意案を支持する可能性を示唆しました。一方、同じく離脱派で保守党議員のレッドウッド氏は、メイ首相の離脱合意案を非常に悪い合意と批判し、「議会の多くの議員が依然として反対している」と発言しており、まだまだ先行き不透明感は残っていると考えた方がよさそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

21-22日にかけてのEU首脳会談が意識されるものの、20日に行われるだろうと考えられていた3回目のメイ首相案の議会採決が行われなくなったとの報道もあり、あまり重要視されていなかったFOMCがここにきて注目度が高まりつつあります。政策金利については、市場コンセンサス通り据え置きになるでしょうが、焦点はFOMCメンバーの政策金利見通し(Dots)になりそうです。2019年度内に1回でも利上げがあるとの見通しであれば、ドルは上昇すると考えられますが、利上げ見通しがゼロ回であれば一時的にドル売りが強まる可能性がありそうです。ただ、どちらにしても、ドル円が111円台から大きく乖離するような動きにはならない公算です。

本日発表された豪・第4四半期住宅価格指数(前期比/前年比)については、市場予想-2.0%/-5.0%に対して-2.4%/-5.1%と小幅に悪化しました。しかし、事前に統計以来最低の落ち込みになるとの予想だったため、既に市場がこの内容を織り込んでいたため、豪ドル急落という動きには至りませんでした。また、その後に公表された3月5日に行われた豪準備銀行(RBA)の議事要旨は、声明文とほぼ同内容だったこともあり、影響は限定的となりました。

ポンドについては、3回目のメイ首相案の議会採決に向けて市場が内容を織り込む動きが主導していたため、このイベントが回避されたことで、上下に動きづらい地合いになっています。ただ、21-22日にかけてのEU首脳会談が目下の最重要イベントであるため、イベント前のヘッドラインや要人発言によって引き続きポンドは乱高下する動きになりそうです。

ポンドの流れがしっかりするまでは、一旦ドル円のレンジ取引

ドル円111.70-80円での売り戦略想定でしたが、僅かに届かずポジションメイクならずです。ただ、一旦ドル円がレンジ下限付近に近づいてきたため、今度は成行でのロング戦略です。111.25円での買い戦略、利食いについては、111.80円付近、損切りについては、110.90円下抜けを想定しています。

海外時間からの流れ

バーコウ英下院議長が3回目の議会採決を回避したことについては、完全に寝耳に水でした。英国議会、マーケットも、議会採決に向けての織り込む動きを見せていただけに、完全に先行きが見えなくなりました。これでソフトブレグジットになる可能性は極端に低下したため、短期離脱延期ではなく、長期離脱延期が視野に入ってきたのではないでしょうか。ただ、長期離脱延期は目先ポンド買いになる内容になりそうです。

今日の予定

本日は、英・2月失業率・独・3月ZEW景況感調査・米・1月耐久財受注(確報値)などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。