より豊かに暮らしたい、楽になりたい、不便を克服したい、そういった人間の「欲望」に答えるビジネスが右肩上がりに成長する様をファンドマネージャーとして幾度となく目の当たりにしてきた。私はそれを「右肩上がりのビジネストレンド」と呼んでいる。私の経験から、高い成長が期待されるビジネストレンドや銘柄を見つけるための視点を少しでもお伝えしていこう。

目次

  1. 元ファンドマネージャー「大島和隆」の投資哲学
  2. 技術のロードマップが大きく投資家を裏切ることはない
  3. 投資のネタ探しは、技術の主戦場や中心国を探すことから
  4. 今後の注目は自動車業界に押し寄せる「CASE」

元ファンドマネージャー「大島和隆」の投資哲学

私は1988年から2012年までファンドマネージャーとして24年余り、職業投資家としての経験を積んできた。ピーク時には4000億円を超える規模のファンドを運用し、私が運用する複数のファンドは“大島ファンド”という愛称で呼ばれることもあった。幸いなことに、投資信託の評価機関モーニングスター社が選考する「ファンドオブザイヤー」をいただいたこともあった。

その後は、投信会社の社長として2年半で黒字化を達成。金融業界での経験を活かして、外資系プライベートバンクのインベストメント・ソリューションチームのヘッドを5年間務めた。資産運用業界に30年以上身を置き、お世話になってきた中で大事にしてきたことは、「お客様のニーズを的確に捉えること」だ。

好成績を上げるために、何も難しいアプローチや特別な運用をしてきたわけではない。投資した銘柄の多くは、誰もが知っている銘柄だ。そして、今なお業界のリーダーとして輝いている企業が多い。

投資哲学は「知らないものや、自分自身が適正に評価できないものには手を出さない」ということ。そして、人間が持つさまざまな「欲望」に注目して、極めて身近なところからアイデアの種を拾ってきた。

ファンドマネージャー
大島和隆 (おおしま かずたか)
経験を伝えるための情報提供サイト「ファンドガレージ」主宰。ファンドマネージャーとして24年余りの間、パッシブ運用からアクティブ運用、日本株から外国株、トップダウンからボトムアップ・アプローチまで、お客様にとってベストな投資信託運用とは何かにこだわり続けた「顔が見えるファンドマネージャー」のパイオニア。近著に『97%の投資信託がダメなこれだけの理由』(ビジネス社)がある。

技術のロードマップが大きく投資家を裏切ることはない

Windows98が登場する前の1990年代半ばから、企業調査のため、2ヵ月に1度の頻度で全米各都市を飛び回っていた。今ほど「グローバライゼーション」という言い方は広がっていなかったが、日本企業を評価するにはどうしても米国企業を調査する必要があった。

パソコンもインターネットも米国発のものであり、その最先端を走る企業を見ずして、そこに半導体や電子部品を提供する日本企業に投資をするのは無謀である。不確かな情報が多いなか、技術のロードマップだけは大きく投資家を裏切ることはないからだ。

人間の嗜好は日替わりだが、技術発展の流れは一夜にして大きく変わることは滅多になく、基本的には連続しているから読みやすい。その主戦場を押さえ、そのトレンドの中心でメインプレーヤーとして走り続ける企業の技術とその開発動向を探ることが、正解への近道だと確信していた。

投資のネタ探しは、技術の主戦場や中心国を探すことから