人口は増加も、増加率は低下傾向
中国国家統計局が公表した統計によると、2018年末時点の中国の総人口は13億9538万人(男性7億1351万人、女性6億8187万人)で、前年に比べて530万人増えた。中華人民共和国が建国された1949年の総人口は5億4167万人だったので、約2.6倍になったことになる。この間の1960-61年には大躍進政策の失敗やその後の飢饉で2年連続減少したこともあったが、基本的には右肩上がりで増加している。ただし、1950年代は年率1.8%増、1960年代は同2.3%増、1970年代は同1.7%増、1980年代は同1.5%増、1990年代は同1.0%増、2000年代は同0.6%増、そして2011年以降は同0.5%増と、人口増加率は低下傾向を辿っている(図表-1)。
人口構成は「富士山型」から「つぼ型」へ変化
また、中国の人口構成は、改革開放直後(1982年)の「富士山型」から「つぼ型」へと徐々に変化してきている(図表-2、3)。改革開放後、中国経済が目覚しい発展を遂げる中で、中国社会は豊かになり、平均寿命は改革開放直後(1981年)の67.77歳から2015年には76.34歳へと10歳弱も伸びた。しかし、1979年に将来の食糧難に備えた安全保障の観点から「一人っ子政策」を導入し、出生率(年出生人数÷年平均人数)が改革開放直後(1981年)の2.091%から2018年には1.094%(2018年)へとほぼ半減したため、人口増加率は低下した。そして、中国の人口構成は「富士山型」から「つぼ型」へと変化していくこととなった。
なお、中国は2013年に開催された中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では、「一人っ子政策」の軌道修正を決定し、2016年には「二人っ子政策」に移行した。これを受けて出生率は2015年の1.207%をボトムに一旦は上昇に転じたものの、教育費が高いことなどを理由に二人目の子供の誕生を望まない家庭が多かったため、2018年には建国以来最低の水準を再び更新することとなった(図表-4)。
生産年齢人口は減少に転じ「人口オーナス」へ
また、「つぼ型」への人口構成の変化は、経済成長する上でマイナスの影響を及ぼす。「富士山型」の時期には、新たに経済活動に従事する若年層が年々増えるため、所得の伸びも高くなり経済成長を後押しすることとなった(人口ボーナス)。しかし、「つぼ型」になると、新たに経済活動に従事する若年層が年々減少するため、経済成長の足かせとなってくる(人口オーナス)。これまでの経済活動人口の推移を見ると、長らく右肩上がりで増加し、中国経済に「人口ボーナス」をもたらしてきた様子がうかがえる。しかし、財やサービスの生産をする上で中心的な役割を担う生産年齢人口(15~64歳)は、既に2013年の10億582万人をピークに減少に転じ、2017年には9億9829万人と10億人を割り込んだ。そして、経済活動人口も8億694万人(2016年)をピークに頭打ち感がでてきた(図表-5)。
従属人口比率は反転上昇へ
また、中国の従属人口比率(0-14才と65才以上の人口の合計÷生産年齢人口)の推移をみると、1970年代に8割弱の高水準にあった従属人口比率は、一人っ子政策の影響により、若年従属人口比率(0-14才の人口÷生産年齢人口)が低下したため、現在は4割前後に落ちてきた。若年従属人口比率は今後もじわじわ低下していくと見込まれるものの、今後は高齢従属人口比率(65才以上の人口÷生産年齢人口)の上昇がピッチを速めると見込まれることから、従属人口比率は2010年前後をボトムに再び上昇に転じていく見通しである。
そして、先進国になる前に高齢化が進む「未豊先老」の懸念が中国国内で高まっている。そこで、中国共産党は前述の3中全会で「漸進的な定年引き上げ政策を研究・策定する」との方針を示し、「人口オーナス」がもたらす中国経済への悪影響を少しでも緩和しようと動き出している。
日本にとってはビジネスチャンスも!
周知の通り日本は少子高齢化で世界の最先端を走るフロントランナーとなっており、そして日本経済はピンチだとの認識が支配的だ。しかし、その日本を追うように中国ではこれから少子高齢化が進むことになりそうである。そこには、高齢者ビジネスを輸出するという大きなチャンスの芽があるのではなかろうか。高齢者ビジネスの育成が世界に先駆けて進むという一種の先行者メリットを享受することによって、経済成長率の向上に結び付ける道があるからだ。特に、老人ホーム等の経営では、過度な財政負担とならず、介護関連企業は十分な収益を挙げ、高齢入居者は生きがいのある老後を過ごせるような施設経営のビジネスモデルを完成させることができれば、今後は日本で成功したビジネスモデルを中国で展開するチャンスに繋がると思う。世界に類を見ないピンチを迎えた日本経済だが、高齢者ビジネスを中国展開することでこのピンチをチャンスに変えたいものである。
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三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員
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