前日については、21-22日に予定されているEU首脳会議を前に、ポンドは神経質な動きとなりました。バーコウ英下院議長が度重なる英国のEU離脱案動議への懸念を表明し、3回目の採決を事実上禁止したことにより、目先の不透明感が強まっていましたが、「EU首脳陣は首脳会議で英国に条件付きの離脱延期を提示する計画」と一部報道で伝わると、延期期待が高まりポンド買いが先行しました。一時ポンドドルでは1.3310ドル付近までポンド買いが強まったものの、素直にポンド買いを推し進める地合いでもないため、その後は1.3240ドル付近まで急落するなど、期待と不安が入り混じる動きとなりました。BBCによると、メイ英首相は29日に設定されているEU離脱期限を6月末まで延長し、離脱を最大2年間先送りする選択肢を求める書簡を本日中に送付するとのことです。

神経質なポンドの動きの側面で、ドルについては、「一部の米政府高官は中国側の抵抗で米中貿易交渉が後退しているとの懸念を表明」との報道により、ドル円は111.20円台まで下落する動きを見せたものの、新たなヘッドラインにて「来週の米中貿易協議の再開と4月末までの合意を目指す動き」と報じられたことにより、その後は底堅い動きとなりました。

本日は、FOMCの結果公表やパウエルFRB議長の定例会見が予定されており、注目されそうです。政策金利の変更はほぼ据え置きがコンセンサスになっており、焦点としては焦点はFOMCメンバーの政策金利見通し(Dots)になりそうです。2019年度中に1回でも利上げが示唆されるようであれば、ポジティブサプライズのドル買いになる公算です。年内終了と示唆されているバランスシート縮小(現在月500億ドル規模)の終了時期、金額の変更なども、状況によってはマーケットを動かす材料になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

21-22日にかけてのEU首脳会談が意識されるものの、余程のヘッドラインが出てこない限りは、EU首脳会談前ということもあり、ポンドの動きも限定的になりそうです。EU首脳会談にて、英国のEU離脱の延期が承認されるかもしれませんが、状況によっては、今週のEU首脳会談では、具体的な離脱期限を最終承認するのではなく、EUが英国に対して「英国議会の明確な提案を出すように」とボールを投げ返すような格好になる可能性もありそうです。そして、明確な提案が3度目のMeaningful Voteになる可能性も少なからずあると考えられます。

FOMCについては、市場コンセンサスが2019年度の利上げ回数をゼロ回で織り込んでいることもあり、例えゼロ回であってもマーケットへのインパクトは限定的になりそうです。また、パウエルFRB議長の会見においても、ハト派寄りの発言が出てくる可能性が高く、ただ、FRBの利上げ後退は株高を誘発することが想定されるため、材料的には強弱入り混じる結果になるかもしれませんが、翌21日が日本の祝日に当たるため、商いの薄い時間帯にFOMCのハト派寄りの内容がぶり返されるようだと、円高方向に傾く可能性は考慮しておいた方がいいかもしれません。

ポンドの流れがしっかりするまでは、一旦ドル円のレンジ取引

111.25円での買い戦略、利食いについては、111.80円付近、損切りについては、110.90円下抜けを想定しています。どちらにも達していないため、当該戦略は引き続き継続とします。本日のFOMC後には決着がつくと考えています。

海外時間からの流れ

3/21-22でのEU首脳会談で離脱延期の承認を得られるかどうか、否決されれば「合意なき離脱」の可能性があるというのが事前の見通しでしたが、ここにきてEUは条件付きのオファーを出し、メイ英首相にとっては3度目のMeaningful Voteを目指す道が開けたと報じられています。更に複雑化してきてはいますが、マーケットが考え得る最悪のケースは回避できる可能性が徐々に高まっています。

今日の予定

本日は、独・2月生産者物価指数、英・2月消費者物価指数、米・FOMC政策金利発表/パウエル・FRB議長定例会見などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。