前日については、EUサミットが開催されるにあたり、EU側が英国のEU離脱延期を承認してくれるのかどうかという点がポイントでしたが、メイ英首相が「6月30日より先の英EU離脱期限延期は想定せず」と発言したことにより、長期離脱の可能性が排除されたのではとの思惑からポンドが軟調に推移しました。また、ヴェルホフスタット欧州自由民主同盟代表が「5月23日を超えるEU離脱延期は不可能」との声明を出したことにより、マーケットが既に織り込んでいた6月30日までの短期延期の想定が崩れ、ポンド売りが強まり、ポンド円は144.10円付近、ポンドドルでも1.30ドル付近まで下値を拡大しました。
また、上記離脱延期には英議会が来週中に離脱協定案を承認するという条件付きということもあり、最悪「合意なき離脱」の可能性が出てきたことも、ポンド売りをサポートしました。また、本来であれば日本時間3時付近に声明が出てくる予定であったものの、声明自体が大幅に遅れており、マクロン・仏大統領が「英下院がもう一度離脱合意案を否決したら、英国は「合意なき離脱」に向かうとの認識」を示したことで、EUサミット前には「合意なき離脱」だけは回避されるだろうとの認識が崩れる結果になりました。
ただ、一部報道では、欧州連合(EU)筋から英国離脱は無条件の場合は4月12日までの延期、英議会での合意がある場合はEU議会選挙の前日5月22日までの延期を認める、ユンケル欧州委員会委員長が「英議会がEU離脱協定案を否決すれば、EU首脳は来週に緊急会合を開催する」、EU側が9カ月の離脱延期を検討する可能性、そして場合によっては無期限の可能性、などの報道が入り乱れています。何とか「合意なき離脱」だけは回避させようとする動きが確認できるため、引き続きポンドの動きは乱高下しそうですが、来週が山場となりそうなことから、値幅としては前日同様にポンド円で2円程度になるのではないでしょうか。
今後の見通し
FOMCについては、FEDメンバーの2019年の利上げ見通しが市場予想通りゼロ回になったことが響き、111円の大台を下抜けました。昨年12月時点のFOMC予測では、今年の利上げ回数は2回だったことを考えると、明らかにトーンダウンしていることが確認できます。最新のFOMC経済予測では、当局者17人中、11人が今年の利上げ回数をゼロと見込んでいることが示され、4人は1回の利上げを予想、2人は2回を想定しているという内容になりました。ある程度想定されていたことではあるものの、ドル以上に売られやすい通貨(欧州通貨、オセアニア通貨、エマージング通貨)が多いため、影響は限定的になっています。再度111円での動きが中心になる可能性も、十分考えられます。
EUが英国に4月12日までの延期を提案したことにより、最悪でも来週の「合意なき離脱」は回避できたと考えられます。ただ、依然として先行き不透明感は強いままであり、引き続きヘッドラインにて一喜一憂するマーケットになるのではないでしょうか。前日に、一時想定していなかった「合意なき離脱」が意識されたことにより、「合意なき離脱」が目先ないとの思惑は、前週同様にポンド買いをサポートしそうです。ポンド円については、146.40、147.20、148.00円が上値のポイントとして意識されそうです。
ポンドの流れがしっかりするまでは、一旦ドル円のレンジ取引
FOMCの結果を受けて、111.25円のドル円ロングは110.90円にて損切り、手仕舞です。ポンドが来週の「合意なき離脱」は回避できそうなムードになっているため、再びポンドは上値追いの動きになりそうです。145.30円でのポンド円ロング、144.80円下抜けで損切り、利食いについては、146.40、147.20、148.00円と段階的に様子見とします。
海外時間からの流れ
EUサミットでは、様々な憶測が流れましたが、来週の「合意なき離脱」は回避できる可能性が高まりました。ただ、状況によっては4/12までただ延期しただけということも考えられるので、来週行われるであろう英国議会での採決は非常に重要になりそうです、否決された場合は、EUが緊急会合を開くことを示唆しているので、どちらにしても、目先はポンドが買われやすい状況に再び回帰したと考えることができそうです。
今日の予定
本日は、独・3月製造業/サービス業PMI、ユーロ圏・3月製造業/サービス業PMI、加・2月消費者物価指数、米・2月中古住宅販売件数などの経済指標が予定されています。また、本日も引き続きEUサミットが開催されます。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。